第56話 揃いのペンダント
ブルーノとクルトは、ポートダグラスのニュース放送からエリア17の情報を見ている。ニュースではこれまで荒らし回っていた海賊バラクーダの根城を軍が攻撃し壊滅させたと放送されている。
さらに司令官が声明を出している。
「長らく私たちを苦しめたバラクーダは、我が軍の努力で殲滅しました。私たちのポートダグラスに平和が戻ってきました。」
ブルーノがクルトに言う。
「俺たちの活躍は無かったことになっているな。」「仕方ありません。雇われの傭兵団ですから。」
「ニュースでは、エリア17の状況は分からないな。」「不都合なことは放送しないでしょう。」
ブルーノは、エリア17の住民のことが気にかかってきている。
アウレールとクリスタは、何軒か店を回った後、装飾品店に入る。店員は子供の来店にあからさまに嫌な顔をして言う。
「ここは僕たちが買える値段の商品はおいていませんよ。行くならおもちゃ屋へ行くんだな。」「お客に対して失礼よ。」
「何を言っている。さあ、出ていってくれ。」「これくらいあれば買えるでしょ。」
クリスタは懐の財布から札束を見せて言う。今朝、バラクーダ討伐の報酬のため臨時給料が払われたので大金を持っている。
店員は態度を変えて言う。
「失礼しました。お客様。ご自由にご覧ください。」「ペンダントを見せてもらうわ。」
彼らはペンダントを見る。クリスタはオパールのペンダントを気に入る。
「アウレール、このペンダントお揃いで買わない。」「クリスタが気に入ったならいいよ。」
彼女は微笑んで店員に言う。
「このペンダント、お揃いで欲しいのだけれどももう1つあるかしら。」「在庫を調べます。」
「お願いします。」
男は、店の外から2人の様子をうかがっている。店員が在庫を調べ同じペンダントを取り出す。クリスタが嬉しそうに言う。
「では、これをお揃いでください。」「かしこまりました。」
彼らはお揃いのペンダントをつけて店を出る。すると男が2人に話しかけてくる。
「君たち、ちょっといいかな。」「はい、何ですか。」
「君たちは、この街は初めてみたいだね。」「はい。」
「この街は、子供だけで出歩いてはいけないことになっているんだ。」
男は手帳のようなものをちらっと見せて言う。
「今からついて来てもらうよ。」「警察かしら?」
「ブルーノに迎えに来てもらおう。」
男は歩き出し、アウレールとクリスタは後をついて行く。