第160話 居住型宇宙船ユグドラシル
人のいない町の中を通って、坂道を下って行くと大きな細長い庭園が見えてくる。トニーがブルーノたちに言う。
「どうですかユグドラシルは大きいでしょう。」「どれですか、大きな庭園は見えてきましたが・・・」
「あれはユグドラシルの上部甲板です。」「庭園ではないのですか。」
「そうともいえます。上部甲板には木々が植えられ川が流れています。」「宇宙船ですよね。」
「居住している人々には必要なものです。」「すごいな。」
近づくにつれて、庭園は船の一部であることが判る。ユグドラシルの上部には庭園の他、艦橋があり、後部には搭載機の発着用の甲板がある。
ブルーノたちは遠くから見ていたのでユグドラシルの大きさを実感できていなかったが、小さく見えた艦橋もセレーネの艦橋の10倍あるとわかる。
ユグドラシルは浮島と何本かの通路でつながっている。ブルーノたちが歩いてきた道もユグドラシルの中に通じている。
トニーはユグドラシルについて説明する。
「ユグドラシルは3層からなっています。1層目が人の住む街になっています。2層目が物資の倉庫と流通の拠点。3層目が格納庫と工場です。」「すごいですね。これは都市と変わらない。」
「甲板は見ての通り庭園と艦橋、後部甲板になっています。司令部は艦橋にあります。」「私たちは艦橋に行くのですか。」
「そうです。案内します。」
トニーはユグドラシルの中へ入ると町の中を歩く。アウレールはこれから司令部に行くのに街の中を通ることに不思議な感じを受ける。
「トニーさん、街の人々は軍が一緒で不安では無いのですか。」「大丈夫だよ。浮島が戦場になったのは1回しかないんだ。位相空間に守られているからね。」
「それでも戦いがあったのですね。」「この街の住人は少なからず軍に関係しているんだ。」
「そうですか。」「私はどこにいても変わらないと思うよ。」
トニーは、ブルーノたちを艦橋へ続くエレベーターに案内する。