石鹸を作ろう!
次の日、絞ったトレント油で石鹸を作ることになった。
灰を前の晩に水につけておいたよ。
「この上澄を油に混ぜて、この型に入れるのだ」
ふうん、なんか夏休みの研究セットみたいだけど、型が平たくてデカい。
「師匠? 大きくないですか?」
使っている石鹸は、もっと小さい。
「固めてから切るんだよ。まぁ、小さい型をいっぱい作って貰っても良いのだけど……乾燥するのは、そちらの方が早いけど、面倒なんだ」
どうやら師匠は面倒なのは嫌いみたいだ。
石鹸を固めるのは時間が掛かるから、今日もオイル絞りかな?
「水車は私が回すから、ミクはしたい事をしたら良い」
えっ、そんな下働きをするのは弟子の仕事では?
なんて思ったけど、どうやらピザを焼いて欲しいと他の森の人に頼まれたみたいだ。
「ああ、ミク! ヘプトスがこれを持って来たわよ!」
私が木の家の裏で師匠と石鹸を作っている間に、ヘプトスが蒸篭を持って来てくれたみたい。
「ああ、これがあるならお昼は肉まんにしよう!」
サリーがお焼きとは違うの? って顔をしている。ちょっと違うよ!
「夕方にピザを焼くから、ヘプトスとガレウスに言っておかなきゃ」
それと、ピザ生地をいっぱい練っておこう。
「サリーもレモネードを作る?」
このところ、一緒の作業が少ない。
「ええ、今日は何も予定がないから、レモネードを作って売るわ!」
それに、チーズを買いに行ったり、手伝ってくれる。
「来週あたり、ハチミツを集めて、ハチミツ酒を作るとアリエル師匠が言われているの」
それ、楽しみだね! えっ、お酒は飲まないけど、少し分けて貰ってお酢を作りたいんだ。
今残っているワインビネガーは少しだけだから、お酒にハチミツと酢を混ぜて、お酢を作りたい。
料理スキルができると教えてくれたから、やってみる。気温が高い方がお酢は作りやすいみたいだからね。
肉まんは、パン生地で肉とキャベツと玉ねぎの細切れのタネを包んでいく。
「何か手伝おうか?」
サリーに手伝って貰って一緒に包む。
「お焼きに似ているけど?」
まぁ、材料は同じだと思う。
「蒸すから、もっと膨らむのよ」
20個ほど作った。木の家では一人2個ずつかな?
他のはヘプトスとガリウスとその師匠達に持って行こう。
と思ったけど、美味しすぎて3個ずつ食べちゃった。
「これ、美味しいわ! お焼きとも違うわね」
人間の町でも食べた事がないと、アリエル師匠が絶賛してくれた。
「これは人気が出そうだな」
うっ、ピザだけでも用意が大変なんだよ。
でも、肉まんの方が売りやすいかな? 蒸篭を積み上げても良い。
「冬になれば、より美味しく感じるかも?」
コンビニでも冬場に売っていたよね。買った事ないけどさ。あれこれ食事制限が厳しかったから。
ヘプトスとガリウスの所に4個ずつ持って行く。
「ヘプトス! 蒸篭で肉まんを作ったの。それと、今日はピザを焼くわ」
二人は肉まんを一瞬で食べちゃった。
「これ、美味しいな!」
好評で嬉しいけど、今日はピザだよ。
「今日は新作のピザにするの」
とうもろこしのピザ! 採れたてのコーン、甘くて美味しいんだ!
ガリウスも肉まんを喜んで食べたけど、師匠は甘いものを一瞬期待したみたい。
「もう少しでオーブンができるぞ!」
パウンドケーキの型は、もう作ってあるみたい。石窯で試してみようかな?
この日の午後は、脂身を買って来て、フスマや野菜クズや骨粉と混ぜて配合飼料を作る。
脂身を一旦溶かしてからの方が混ぜやすいかも?
師匠じゃないけど、石鹸の型を貸して貰って平たく伸ばして、冷やして固めてから、切っていく。
売る石鹸と違って、こちらは大きさは適当で良い。
「試してみよう!」
おやつにやったら、ギャーギャー喜んで食べていたので、冬はこれで越せるかも?
干し草も作りたいな。こちらは、ヴェルディさんに教えて貰いたい。
「ひまわりの搾かすも、フスマで作った飼料も食べましたけど、干し草も作っておきたいのです」
オリビィエ師匠がヴェルディに頼んでやると笑う。
夕方までにとうもろこしを芯から切り取ったり、玉ねぎを薄くスライスしたり、燻製肉も切っておく。
ついでにきゅうりの一本漬けも売ろう!
木の家の前に椅子やテーブルを並べているうちから、ゾロゾロと集まって来た。
「まだ旗を立ててないのに……」
まぁ、用意はできているから、焼くけどさ。
とうもろこしを入れると甘くて美味しい!
でも、ピーマンとかパプリカとかも欲しいな。
「このきゅうりも美味しいな!」
ガリウスがピザが焼けるまで、ポリポリ食べている。
「レモネードも美味しいわよ」
しまった! レモネードを飲みながら待ってもらえば良かったな。
「それは、ピザと一緒に貰うよ」
なんとかピザを焼き終えた時は、へとへとだった。




