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転生したら、子どもに厳しい世界でした。  作者: 梨香
第二章 アルカディア

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トレント!

 サリーに光の魔法を教えて貰うのも日課になった。

「オリビィエ師匠やアリエル師匠に習っても良いけど……そちらは、薬師を習いたいものね」

 そうなんだよ! 夏は、薬草も多いから森歩きもしないとね! ひまわりの種も2回目を撒いたよ。


 だから、朝の火食い鳥(カセウェアリー)の世話をした後、毎日、少しずつ練習している。

火食い鳥(カセウェアリー)を捕まえに行こう!」

 オリビィエ師匠が狩人に火食い鳥(カセウェアリー)の目撃情報を得たみたい。


「薬草も集めなきゃいけないしな!」

 うん、そちらが大事だと思う。

「今回はミクも捕獲してみよう」

 どうも師匠と意見が噛み合わない気もするけど、薬草を採取しながら森歩きをする。

 下級薬草は、何とか成長させられたけど、上級薬草と毒消し草は枯れちゃったんだよね。

「また、試してみるんだな?」

 上級薬草を根から採取していると、オリビィエ師匠に頑張れと激励された。

「下級薬草が栽培できたのだ。上級薬草もできるようになるかもしれない」

 そうだと良いな!


 この日は火食い鳥(カセウェアリー)を捕獲しに来たのだけど、その前に歩いているトレントにでくわした。

「木が歩いている!」

 聞いてはいたけど、大きな木が根っこを引っこ抜いては、前に進んでいる姿を見て、驚いた。

「シッ! あれは油が取れるトレントだ。討伐するぞ」

 ヒバの木と松の木に似ている気がするけど、前世の木は歩いたりしないからね。針葉樹っぽいのは分かったよ。

「ミク、あの根っこを薔薇の鞭(ローズウィスプ)で捕縛しろ!」

 

 薔薇の実を小袋から手のひらに持って、丁度、歩こうとしている根っこに絡みつける。

「上手いぞ! 引っ張るんだ」

 グッと引っ張るけど、相手の力の方が強い。

 こちらが引きずられてしまう。

「一旦、根っこから外して、もう一回巻きつけるんだ」

 そんな事を言いながら、オリビィエ師匠は、次々と根っこを斧でぶった斬っていく。


「そろそろ、足も止まったな。ミクも手斧で攻撃してみろ」

 えっ、直接攻撃ですか? 薔薇の鞭(ローズウィスプ)をしまって、腰の手斧を構える。

「根っこなら、どこでも良いさ」

 でも、枝も振り回して怒ってるんだけど?

「枝は避けろ!」

 簡単に言うけど、難しい。でも、何とかタイミングを計って、根っこに手斧で切り付ける。


「ふむ、良い攻撃だ。あとは任せるよ」

 ええええ! そんなぁ。

「早く倒さないと逃げられるぞ」

 何本か残った根っこで、後ろに下がっている。

「ええい!」

 一本ずつ、枝攻撃を掻い潜って攻していく。

 ぜぃぜぃ、目に見える根っこは無くなった。


「ミク、あの木の根元をよく見てご覧。少し出っ張りがあるだろう。あそこを攻撃したら、討伐できるのさ」

 はぁ、はぁ、なら最初からそこを攻撃したら良かったのでは?

「さぁ、やってみよう!」

 枝の攻撃も緩やかになっているから、木の根元に近づけた。

「えいぃ!」

 根本の出っ張りに渾身の力を込めて、手斧を振り下ろす。


「ミク、逃げろ!」 

 師匠に手を引っ張られて、倒れてくるトレントの下敷きを免れた。

「今度からは、素早く逃げるか、守護魔法を掛けた方が良いな」

 はぁぁ、疲れたよ。


「これをどうやって持って帰るのですか? 狩人達に手伝って貰うのですか?」

 倒れたトレントは、もう動かないから木と同じだ。つまり大きい。

「先ずは枝を切ろう!」


 枝を師匠と切り落としていく。

「この枝からも良い油が取れるのだ」

 切った枝は師匠のマジックバッグに入れていく。

「このくらいで良いだろ。ミク、少し離れておけ」

 師匠の後ろにかなり下がって見ている。


「ストーンバレット!」

 前にひまわりの花を刈ったように、回転する円盤がトレントを1メートルぐらいにカットしていく。

「さて、マジックバッグにしまおう。次までに、根っこを枯らす魔法を覚えておけば、簡単に討伐できるぞ」

 それって、簡単に覚えられそうにないんだけど?


 もう少し森の奥まで移動する。まだ私はアルカディアの近くの森しかわからないから、師匠の後ろから付いていくよ。

「ああ、あそこだ!」

 目的の火食い鳥(カセウェアリー)は、狩人が言った場所に6羽いた。

「雄はいらないけど、どうする?」

 それって、食べるって事かな?

「このまま放置しては駄目ですか?」

 腕を組んで考えている。

「雌を捕獲するのを邪魔しそうだな。まぁ、秋までは飼っても良いかも?」

 ふぅ、数が増えるけど、一度卵を温めさせたいと考えていたから、雄が二羽になるのは良いのかも?


「はい! 私は雄を捕まえます」

 身体の大きな雌5羽は師匠に任せるよ。

薔薇の鞭(ローズウィスプ)!」

 雄を鞭でぐるぐる巻きにする。

 後は、鋭い爪を切らないといけないけど、火を吹いたよ!

「ミク、もう一度ぐるぐる巻にしろ!」

 はぁ、はぁ、まだ小さな雄1羽でも汗だくだ。

 何とか、鋭い爪をナイフで切り落とす。


「よく頑張ったな! さぁ、帰ろう!」

 私の新品のマジックバッグに火食い鳥(カセウェアリー)6羽が入っている。

 早く帰らなきゃ! 糞をされたら嫌だもの。


 鶏小屋の前まで来て、ふと心配になった。

「師匠、今いる火食い鳥(カセウェアリー)と喧嘩にならないかな?」

 どうだろう?

「まぁ、中に放つ前にたっぷりと餌と水を置いておくことだな」

 忠告に従い、いつもの3倍の餌と新鮮な水を入れておく。

「さて、中に入れてから鞭を解こう」

 マジックバッグから火食い鳥(カセウェアリー)を出すと、今までいた火食い鳥(カセウェアリー)が何事だ? と少し振り向いたが、餌を食べる方が重要みたい。


「鞭よ! 解け!」

 6羽の火食い鳥(カセウェアリー)は、一瞬、火を吐きそうだったけど、前からの5羽が啄んでいる餌箱に突進した。

「ガァー! ガァー!」

「ギャー! ギャー!」

 何だか、煩さが倍増したけど、卵が増えるのを期待するよ。


「さて、ひまわりの種も乾いただろうし、そろそろ油を絞ろう」

 ふぅ、それもあったね!

「このトレントも油を絞るのですよね?」

 当たり前だと笑われた。

「ミクは、料理に油を使いたいかい? なら、トレントの油だけで石鹸を作っても良いんだよ」

 悩むなぁ! フライドポテトとかは、ラードというか魔物の脂でも作れる。椿油は匂いが良いから、髪や身体に塗りたい。

 

「トレントの油は食用に向かないのですか?」

「いや、食べられないことはないとは思うが、匂いがスースーした感じだ」

 確かに枝を切っている時も、ヒバのような松のような香りがしていた。嫌いな匂いじゃないけど、食用に向くかはわからない。


「なら、ひまわり油は少し残して欲しいです。トレントの油は、ちょっと試してみます」

 師匠は、笑って頷く。

「トレントの油は、頭痛の軟膏にも良いのだ。食べるには、ちょっとキツいとは思うが、ミクなら何か思いつくかもな?」

 ああ、そんな香りだよね。

「頭痛の軟膏ですか?」

 頭痛薬ならわかるけど?

「まぁ、目を使いすぎて疲れた時とかは気持ちがリラックスして良いのさ。他にも精製すれば、傷の軟膏にもなる」

 ふうん、色々とあるんだね。覚えることがいっぱいだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] トレント香油!すごい発想です。 トレンチオールで作るマジックバーム、ですね。 わかりますw
[一言] 更新お疲れ様です。 ミクちゃん、トレント初討伐! そして新たなカセウェアリーの群もゲット! カセウェアリーに関しては要観察? 同じ鶏小屋で二群・・・(((^^;) 卵は料理だけじゃなくてス…
[一言] 経皮吸収の鎮痛剤なら、腰痛とか関節痛などの湿布剤や軟膏にピッタリ? …鳥小屋は拡張しなくていいのだろうか?
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