家畜の世話!
火食い鳥を鶏小屋に放す前に、餌と水をいっぱいやっておく。水は水入れに溢れるほど、餌箱にはにんじんの葉を山ほど入れたよ。
怒らせて、火を吐かれるのは嫌だからね。
「火食い鳥は何を食べるのですか?」
これ、大事だから師匠に聞く。
「草でも、野菜でも、ハーブでも、果物でも、残飯でも何でも食べるよ。あっ、虫も食べるぐらいだから、肉も食べるんじゃないか?」
それって、もう鶏じゃないじゃん!
「ミントも食べますか?」
食べるそうなので、ミントを鶏小屋の中に撒いて、成長させておく。
他のハーブも撒いておこう! オレガノ、タイム、フェンネル、バジル! ローズマリーやラベンダーは挿し木して増やしてから、やろう。
ハーブは基本的に雑草に近い。ミントなんて、蔓延ってしまう。
「あと、時々、骨の砕いたのをやると卵が割れ難くなると聞いたぞ!」
骨は、スープを取った後のでも良いのかな? カルシウムが必要なら、良いのかも?
前世の鶏は、玉ねぎやキャベツは食べさせたら駄目だった気がするけど? エバー村の山羊もそうだったよ。
「食べさせたら駄目な物は無いのですか?」
オリビィエ師匠に笑われたよ。
「彼奴らは魔物だよ。自分で食べてはいけない物は、食べないさ」
ふぅ、なら何でもやってみて、食べない物はやらなきゃ良いのだ。
「穀物も好きだが、それは勿体無いな。籾殻は食べるのかな?」
何だか怒って、火を吐きそう! 今年から、とうもろこしを多く植えよう。
「そろそろ、放すぞ」
鶏小屋に火食い鳥を5羽放す。
蔦も解くと、小屋の餌箱の中の人参の葉をグッグッと啄む。
「ほら、餌があれば火なんか吐かないさ。あとは、虫を捕まえて投げてやったら喜ぶぞ」
虫ねぇ……森の虫は大きくて苦手なんだけど……。そうだ、蜂も大きいね。
「蜂の死骸が山ほどあるけど? 食べるかしら?」
「食べるかな? 試してみよう!」
言った瞬間、師匠は森に行って、蜂の死骸をマジックバッグに入れて帰ってきた。
やはり、かなり私に合わせてゆっくりと移動していたみたい。
「これを投げてみろ!」
うげぇ! 蜂の死骸を指で摘んで、鶏小屋の中に投げる。
蜂は、ドッジボールぐらいの大きさだ。前世だったら、指で摘んで投げたりできなかったね。
「ガルルルル!」
パッと1羽の雌の火食い鳥がジャンプして、蜂を咥えた。
他の火食い鳥と啄んで、あっという間に蜂を食べた。
「どうやら、好物みたいだな」
でも、今日や明日は良いけど、蜂の死骸も腐るんじゃないの?
「ふふふ、良い物があるんだ! ついておいで」
オリビィエ師匠について、木の家のロフトに上がる。
「この箱を持って降りよう!」
前世のみかん箱みたいな大きさの箱を、師匠と鶏小屋の前まで運ぶ。
「ここに蜂の死骸を入れておけば、腐らないさ。これは、実験用に作ったんだ。時間停止の魔法がかかっているマジックボックスさ」
師匠! どれだけ凄いの!
「そんな貴重な物に蜂の死骸なんか入れて良いのですか?」
オリビィエ師匠は、笑っている。
「何かに使えるかな? と思って作ったのだが、肉を保存したまま忘れてしまうから、使わなくなったんだ。2年も経った肉は、やはり食べたくなかったからな」
それ! 冬も狩りに行かなくても新鮮な肉が食べられるって事じゃない! 冷凍庫でも、何年も置いていたら、冷凍焼けするのと同じかな?
「いえ、蜂の死骸なんかより、もっと有意義な使い方があります」
鼻息荒く、主張したけど、首を傾げている。
「例えば、焼きたてのパンをここに入れておけば、次の日も焼き立てのままなんですよね?」
オリビィエ師匠は、ピンとこないみたい。
「ミクは毎朝焼いているだろう? もしかして、負担なら、焼かなくても良いんだぞ」
あっ、通じていない。
「パンを焼くのは好きだから良いのです。これを使えば、筋肉のシチューをいつでも食べられるのですよね?」
オリビィエ師匠は、筋肉のシチューがとても気に入ったのだ。
「そうか、いつでも美味しい物が食べられるのだな」
そうだよ! なのに今は蜂が入っている。これこそ宝の持ち腐れだよ。
「どうせ、長い間、ロフトにしまっておいたのだ。食料を保存するのに使うなら、いったん洗う必要があるのさ」
それにしても死骸を入れなくてもさぁ。
「そうだ! 蜂の死骸が無くなったら、マジックボックスの手入れの仕方を教えてやろう」
それは嬉しいけど、作り方が知りたいよ。
私が鶏小屋で火食い鳥の世話をしている奥で、サリーはミツバチの世話の仕方を習っていた。
鶏小屋と養蜂箱の間に柵が立てられていた。
アリエル師匠とサリーはその柵の外にいるのだけど、大丈夫かな?
「蜂は女王蜂を新しい巣に入れたら良いだけなのよ。他の蜂は、女王蜂のいるところについて行くからね」
アリエル師匠が空気のボールの中から女王蜂を空気の指で捕まえて、養蜂箱に入れた。
「空気のボールを解除したら、蜂は落ち着くまでは、放置しておきましょう。サリーは柵の中に入りなさい」
サリーが柵の中にはいると、アリエル師匠がソッと蜂の巣を地面に置いた。
「危ない!」
思わず叫んだ! 蜂がアリエル師匠に向かって飛んで来たからだ。
「アリエルなら大丈夫だよ」
蜂は、アリエル師匠の1メートル以内には入り込めない。
「あれは守護魔法ですよね? サリー大丈夫かな?」
オリビィエ師匠は、大丈夫だろうと笑っている。
「ミクも守護魔法を早く覚えなきゃな!」
あの火食い鳥の卵を毎日集めるのだ。守護魔法を覚えた方が良い。
「火を吐かなくても、キック力が凄いからな。当分は私も一緒に世話をしてやるが、守護魔法を練習して、できるようになったら自分でするんだよ。卵は人気があったから、高く売れるよ」
アルカディアでも料理は、芋を茹でる、肉を焼くだけの森の人が多いみたい。
卵も茹でるだけで、食べられるから人気があるのだろう。
サリーは守護魔法の掛かった柵の扱い方をアリエル師匠に習っている。
「今日は、外の守護魔法はあのままで良いわ。前の巣に集めていたハチミツを運ぶのに忙しいでしょうから」
朝早くから、守護魔法が掛かっている柵を開けて蜂達が蜜を集めに行くようにしないといけないのだ。
「その前にサリー自身が守護魔法を掛けれる様にならないと蜂に刺されてしまうわね」
アリエル師匠はかなり厳しいよ。
サリーも頑張って練習しているのだ! 私も頑張ろう!
次の日から、朝の用事が1つ増えた。
初めだから、アリエル師匠も起きてきて、サリーがちゃんと守護魔法を自分に掛けられるか見ている。
「外の守護魔法が掛かった柵を横にどけるのよ。夕方、暗くなったら、柵を戻しなさい」
ハラハラしながら見ていたけど、サリーはちゃんとできたみたい。
「さて、ミクには私が守護魔法を掛けてあげよう。鶏小屋の掃除と餌やりと水やりだよ。卵を産んでいたら、この籠に入れなさい」
うん、まだ私は守護魔法が掛けられないのだ。
オリビィエ師匠に掛けて貰って鶏小屋の中に入る。
水と餌をやったら、5羽とも突進してきた。
「ほら、この隙に卵を集めなきゃ!」
私は、前世では病院かベッドで過ごしていたのだ。学校の飼育委員もやったことがない。
「はい!」
あるかな? 昨日、移して神経質になっているから、産まなかったんじゃない? なんて考えていたけど、鶏小屋の部屋の中の敷き藁の上にグリーンのダチョウの卵ぐらいの大きさのが4個ならんでいた。
「あった!」
注意しながら、籠に入れ、一旦、鶏小屋の外に置いてから、掃除をする。
「糞は乾かせば、肥料になりそう!」
塵取りにいっぱいの糞、それと何本かの真っ青な羽! これはペンにしよう!
掃除を終えて、外に出たらホッとした。
「ミク、頑張って守護魔法を覚えよう!」
だよね! サリーに遅れを取っているけど、頑張って追いつくぞ!




