表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら、子どもに厳しい世界でした。  作者: 梨香
第二章 アルカディア
24/74

アルカディアの狩人

 ラング村からも神父さんの護衛が付いた。

 若くて狩人としては一人前ではない子みたい。

 ジミーと同じぐらいだけど、もう少し年上かな? 

 ここから、アルカディアは、もっと森の奥になるんだけど、大丈夫なの? なんて失礼だから聞かないけどさ!


「ミク、アルカディアってどんな感じなんだろうね」

 私とサリーは、神父さんの少し前の枝に座って話しては、また追い越した先で休んで、話していた。

「今、知っている事は、高い塔がある。アルカディアの中に大きな木が生えているって事だけ」


 サリーは、他のことを気にしていたのだ。

「そうじゃなくて、アルカディアに住んでいる森の人(エルフ)は全員が魔法を使えるそうよ! 狩人もね!」

 えっ、それは知らなかったよ!

「ふうん、じゃあサリーが風の魔法を使って矢を獲物に射るのに加えて、弓スキルも持っている感じなのかな? それって、弓スキルだけで良いんじゃない?」

 サリーは、ちょっと考えて口を開いた。

「弓スキルで火の魔法を使う感じなのかも?」

「それは、火矢で良いんじゃないの?」

 どうも、私達は狩人の村の生活しか知らないから、狩りに魔法を加えるのを想像できない。


「それは、アルカディアに行かないとわからないね。魔法と他のスキルを持っているのって、どんな感じなのかな?」

「でも、ミクって3個もスキルを持っているんだよね!」

 そういえば、そうだけど、薬師以外は補助というか、役には立つけど、それで生活する感じじゃないよね?

「じゃあ、アルカディアの森の人(エルフ)達も何個も持っていても、役に立つのは1個なのかな?」

 下で聞いていた神父さんがプッとふき出した。


「これこれ、そんな失礼な事を言ったら叱られるぞ」

 サリーと地面に飛び降りて、神父さんのロバの横を歩きながら話を聞く。

「ミクは3個もスキルをもらったのをエスティーリョの神に感謝しなくてはいけないよ」

 それは、そうかもしれないけど、できれば狩人のスキルが欲しかったな。

 それだったら、ずっと村に居られたし、10歳になってから、どうするか選べられたのだ。

 村で暮らすか、人間の町に行くかとかさ。

 2歳で修行に出るのって、やはり厳しいと思うもん!


 私の不満そうな顔を見て、神父さんが説教する。

森の人(エルフ)は何かのスキルを貰うのが普通だと思っているが、人間のほとんどはスキルは貰えないのだよ。100人に1人ぐらいしかスキル持ちはいない。努力して身につけるのだ」

 サリーも私も初耳で驚いた!

「ええ! じゃあ、どうやって暮らすの?」


 そこから、神父さんに普通の人々の暮らしを聞いた。

「ほとんどの人は農民として生まれ、農民として死ぬ。この前の戦争では、農地から引き離されて、兵士として亡くなったが……」

 一瞬、驚いたけど、前世の昔の人の生活はそんな感じだったのかも?


「でも、行商人もいるわ!」

 サリーの反論に、神父さんは笑う。私達が知っている人間は、エバー村の住民と行商人だけだからね。

「勿論、商人や、職人もいる。その中には、スキルを持っている人もいれば、持っていない人もいる。だが、人口のほぼ4分の3は農民だよ」

 ふうん、そうなんだね! 歴史の本で読んだ気がする。


「でも神父さん、人間の町には大勢の人が住んでいると聞いたわ」

 バンズ村に帰ってきた若者から、サリーの兄ちゃんのサムが聞いたみたい。

「町には多くの人が住んでいるが、ほとんどは農村に住んでいるんだよ。森の人(エルフ)の何万倍も人間はいるのだからね」


 バンズ村の人口は、100人に満たない。

 狩人の村が何個あるのかは知らないけど、この前、集まった村長さん達は8人だった。

 エバー村やニューエバー村は、バンズ村よりは大きいとしても、森に住んでいるのは1000人程度なの?

 

 私が考えているうちに、サリーが別の質問をする。

「人間の町で、森の人(エルフ)は何をして暮らしているの?」

 あっ、それは知りたい!

「狩人のスキルを持つ森の人(エルフ)は、兵士か冒険者が多いな」

 冒険者! ファンタジーな世界だね。


「でも、人間が住む町には魔物は出ないのでしょう?」

 神父さんは、笑った。

「この森ほど大きな魔物は滅多に出ないが、小物はちょくちょく出る。それに、他にも森はあるから、そこの魔物が作物や家畜を襲ったら、大損害だからな」

 確かにね! 

「それに護衛も必要だから……」

 行商人さん達も、残党兵が盗賊になって困ると言っていた。治安は悪そう!

「神父さんは、人間の村も回るのでしょう? 護衛はいらないの?」

 クスクスと神父さんは笑う。

「神父を襲っても、お金は持っていないからね。まぁ、それでも村人が次の村まで、付いて来てくれたりもするけど、襲われた事は無いよ。森の魔物は、それを知らないから、ああやって護って貰っているが……ああ、アルカディアの狩人が迎えに来てくれたようだ」


 話に夢中になっていたけど、森の奥から狩人が、木と木を移動して、こちらにやってくる。

 ラング村の若者は「では、ここで!」と村に帰っていく。

「ありがとう!」と叫ぶと、ヒラヒラと手を振って消えた。


「神父さん!」

 スッと地面に音もしないで降りたアルカディアの狩人は、神父さんと知り合いみたい。

「リュミエール、迎えに来てくれたのかい?」

 グリーンの髪の毛と濃い緑の目、って事は、子どもなんだね。

 着ている服はチュニックとズボンだけど、生地は上等そう!

「ええ、そろそろ来られる時期だから。この子達は?」

 神父さんが紹介してくれる。

「この子達は、アルカディアで修行するサリーとミクだよ。アリエルとオリビィエに弟子入りするのだ」


 えっ、リュミエールの顔が歪んだ?

「プッ、本当に弟子を取ったのですね! 神父さんは、あの2人に何か魔法でも掛けたのですか?」

 笑いを堪えようとしたみたいだけど、我慢できずに噴き出した。

 嫌な予感しかしないよ。

「これ、リュミエール、幼い子が不安になるだろう」

 神父さんは、叱るけど、リュミエールは肩を竦めている。

「おチビちゃん達、師匠に我慢できなかったら、私の所に来るんだよ。村まで送ってあげるからね」

 リュミエールが親切なのか、意地悪なのか、今は判断できない。保留にしておく。


 サリーも不安そうな顔をしている。

「兎に角、アルカディアまで案内しますよ。2人は木と木の移動はできるのかな?」

 神父さんと話す為に、ロバの横を歩いていたからね。

「ええ」と答えると、にっこりと笑う。


「なら、ついておいで! 神父さんには守護魔法を掛けておきます」

 えっ、神父さんをほって行くの?

 守護魔法って、何? 薄らと神父さんの周りが光っているけど、それかな?


「サリー、ミク、リュミエールと行きなさい」

 私とサリーが戸惑っていると、神父さんが許可を出す。

「じゃあ、お先に!」

 2人でリュミエールの後を追う。

「うん、ちゃんと移動できるね! 何歳なの?」

 それは、こちらも聞きたいよ!

「2歳です」

 サリーが答えると、リュミエールは驚いたみたい。

「修行に出るには早過ぎない? 村まで送ってあげようか?」

 いや、まだアルカディアに着いてもいないから!


「リュミエールは幾つなの?」

 見た目より幼い気がする。守護魔法とかは使えるようだけど!

「私は5歳だから、おチビちゃん達よりお兄さんだよ」

 やはり子どもだ! サムより幼い気がしたんだ。

「おチビちゃんじゃないわ。サリーとミクよ」

「わかっているよ! でも、私より小さい子は初めてだから、少しはお兄ちゃんの気分にならしてくれても良いだろう?」

 初めて会ったアルカディアの狩人は、お兄ちゃん振りたいリュミエールだった。

 この出会いが良かったのか? 悪かったのか? サリーと私は、後々までも悩むことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 5歳でなかなか図太い少年。さすが成長の早いエルフ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ