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秋は保存食作り!

 夏の交流会、どうやらバンズ村は好評だったみたい。

 こちらの若者も他の村に行ったけど、こちらに来る村の方が多かった。

「ミクのスープとお焼きのお陰だな!」

 褒めても、お焼きはもう作らないよ。短い夏が終わったから、冬に向けて保存食を作らなきゃいけないから。

 森歩きで、小枝を拾うより、きのこや木の実を見つける事に集中する。

 ミンとケンは小枝を拾っているけどね。

 家のパパは斧使いだから、薪は山ほど納屋と小屋の庇の下に積んである。

 それに夏の間、拾った小枝もいっぱいだからね。これは、焚き付けに使うんだよ。


 ジミーは冬までは、森歩きを一緒にすると言ったけど、ほぼ単独行動だ。

「木の実ときのこと、木のウロを見つけてね!」

 最後の木のウロには変な顔をしたけど、黙って頷くと木から木へと飛んで森の奥へ行く。

「ミクの料理スキルは便利だな」

 ヨハン爺さんもきのこを採っていたけど、決まった種類だけだ。

「きのこは、毒があるかもしれないから、知っているのだけ採っていたけど、色々と食べられるんだな」

 毒きのこは、ビリビリした感じだし、食べられるきのこは、よだれが出そうなほど美味しく感じる。

 

 きのこは、肉とソテーしても美味しいし、余ったのは干しておく。

 水で戻すだけで、良いお出汁がでるし、スープの具材にもなるんだよね。

「ウロあった」

 相変わらずジミーは口数が少ないけど、見つけるスキルはアップしている。

 かなり森の奥だけど、パパに伝えて貰って、持って帰って貰う。

 斧使いのスキルなら、上と下をズバッと切ってくれる筈!

「木のウロなんて、何に使うの?」

 サリーは、1番の友達だよ。

「お肉を美味しく保存するの。塩漬や干し肉だけでは、冬の食事が単調になるから」

 冬も狩りに行くから、生肉は手に入るけど、吹雪が続いたら困る時もある。

 非常食があれば、吹雪の時は安心して休めると思ったんだ。

 だって、今年の冬は赤ちゃんもいるし、私も去年の倍以上も食べるからね。


 パパが木のウロを切って持って帰ってくれた。

「ミク、何をするんだ?」

 本当は下に金属の皿が欲しいけど、この村には鍛冶屋がいない。

「硬い木の板が欲しいの」

 パパが、皿代わりの板を切ってくれている間、私は木をナイフで細かく削りながら少し考えていた。


 夏の交流会で、他の村の若者達が来た時、私は夕飯のスープを作っていたから、少し皆が話していたのを聞いたんだ。

 鍛冶屋がいるのは、ガンズ村で、私の村よりも倍も小屋が多い。何人かはそちらで暮らすのも良いと考えたみたい。ハンサムな青年や綺麗でしなやかな狩人に惚れたのかも?

 そして、驚く事に、人間も住む村もあるそうだ。それは、森の端にあるエバー村で、少し畑も作っているし、家畜も飼っているそうだ。

 ここは、冒険者をして帰ってくる森の人(エルフ)と連れ合いの人間とが住む村から発展してきたみたい。

 村民は、鍛冶屋がいるガンズ村の倍もいる。エバー村の若者に、私が薬師の修行を終えたら、歓迎するから住まないかと勧誘されたよ。


 バンズ村と同じぐらい小さな村も何個もあるみたいだし、それらは森の中に点在していて、だいたい良い狩場が近くにあるそうだ。

 この村の側にも川も流れているし、小川や沼地があるから、魔物が寄ってくる。良い狩場みたい。


「ミク、これで良いのか? このウロの中に何か入れるのだろう? 扉は、これでピッタリだけど、食べ物を保存するのか?」

「違うの、ここに釘を何本か打って!」

 ウロの中に釘を打って貰ったら、生の鹿肉や猪の肉に塩をまぶしていたのを引っ掛ける。

 そして硬い木の板を水で湿らせて、その上に細かく削ったチップをこんもりと置いて火をつける。

 ピシャン! と木の扉を閉めて、煙が外に抜けてないか調べる。


「これで、お肉の燻製ができるのよ」

 パパは、何か美味しい物ができるのだろうと笑っている。

 ママは、かなりお腹が大きくなってきたけど、まだ狩りに毎日行っている。

「ミクも木から木へ移動できるようになったの?」

 ううん、難しい質問だね。

「近くの木にならね!」と簡単に答えておく。

「来年は、夏に塩を一緒に取りに行くつもりだから、木と木を飛べないと日が暮れてしまうわよ」

 これは、1歳以上の子がしなくてはいけない行事みたい。

「マックやヨナは行ったのか?」 

 パパの質問にママが呆れている。

「一緒に行ったでしょう!」

「来年は、大勢いるな!」

 サリー、ジミー、私、ミン、ケン、マナが1歳になっている。


 2時間燻して、塞いでいた木の板をどけると、中にはチップの良い香りが満ちていた。釘に刺した肉を取り出す。

「なんだか茶色になっているわね」 

 ママは少し心配そうだ。

「切って、食べてみましょう」

 今夜はかぼちゃのポタージュだよ。本当はミルクで伸ばしたかったけど、骨の出汁で伸ばしている。

 スモークした鹿肉を薄くナイフで切って、菜っぱの酢漬けと皿に並べる。

「かぼちゃのスープは甘くて美味しいな」

 これは、若者小屋でも人気なんだよ。

 さて、スモーク鹿肉はどうかな? ナイフに刺して食べる。

「うん? 変わった風味だけど、美味しい!」

 パパは気に入ったみたい。ママは、黙って全て食べた。

「燻製したら、肉が長持ちするの」

 パパとママはにっこりと笑って「なら、いっぱい狩って来ないとな!」と同時に言った。


 森歩きで、さくらんぼ、レモン、りんご、なし、柿、胡桃、をジミーが見つけてくれたので、果実や木の実を採った。

 りんご、レモン、なし、柿、胡桃の苗木を森歩きの小道の側に植えたよ。

 毎日、歩くたびに「大きくなぁれ!」と唱えているけど、実がなるのはまだ先だね。


 村の石垣の外に植えた無患子は、どっさりと実をつけたから、村の人も少しなら取って良い事にした。特に若者小屋の人達は、清潔にした方が良いからね。

 ミントは本当に増えやすいから、1週間に1回は森歩き組で刈って、各家のハーブティーにしている。乾かし方も教えたので、冬も飲めるけど、他のハーブも良いかもね。カモミールとか無いかな?

 狩人達が夏に何度かジャイアントビーを見つけて、討伐し、巣を手に入れたから、参加した家には蜂蜜が配られた。

 これにレモンの皮を漬けているから、冬はお湯で割って飲もう。

 りんごの皮も乾燥させてあるから、それもハーブティーに良いよね。


 納屋の中に棚を作って貰った。下の木の箱には芋とかぼちゃがびっしり! キャベツは半分は刻んで塩と樽に入れている。かぶもね! 

 玉ねぎは茎を編んで天井から何本もぶら下がっている。とうもろこしは、生でゆがいて食べても美味しいし、スープにしても美味しい。思ったより残らなかったけど、乾燥させているよ。

 トマト、ガラス瓶があるなら、トマトソースにして保存したかったけど、生でサラダにしたり、スープに入れたら大好評だった。

 切って乾燥させたのは、木の箱に入れて冬の間、大事に使うつもり。

 秋に植えた野菜の最後の一株は、残して花を咲かせて種を取ったけど、来年も使えるかはわからない。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公がガラス瓶、ガラス瓶、とうるさいですが、別に素焼きの壺で良いのでは?
[良い点] 木のうろをはじめ読んでイメージしたのが、鳥が巣にする大きさだったので、ん?ん?ん?とはてなマークだったのですが、熊が冬眠するレベルの大木のうろだったんですね。 これで燻製作ったら、冬支度捗…
[一言] 畑を拡張して果樹園を作るのも新しい収入&食が豊かに成りそうだね。
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