プロローグ
見切り発車です。頑張って完結させます。
見事な金の髪をローブに隠した美青年は背後を見て舌打ちをした。
「しつこいな」
美青年をしつこく追う華奢な体は風の抵抗など受けていないかのようにするすると走る。その手には短剣が握られ美青年の命を絶てるタイミングを虎視眈々と狙っている。
超大国の城下、迷路のように入り組んだ道を駆け抜ける二つの影。
青年はハッとして足を止めた。
行き止まりである。
「もう逃げられないか」
無念そうに月を見上げ背後に迫った影を横目で見やった。
「さあ、やれ。俺は別に生きていたってなんの役にも立たない皇子だ。ここで死んだ方が国のためでもある」
何の躊躇いもなく振り上げられた短剣の動きが止まった。心臓に突き刺さっていたであろう短剣はそのまま下げられて鞘にしまわれた。
青年を追いかけていた人はそのまま踵を返して夜の闇に紛れようとした。
青年はポカンと口を開けて思わずその人に問うてしまった。
「殺さないのか」
影は一瞬動きを止めてこちらを見ずに言った。
「生きようとしない体たらくを殺す趣味はない。勝手に死ぬのを待つのみ」
くぐもった声は女のものであると思われた。
「良かったな、助かって。代わりに私は給料なしだ。ちぇ」
欠伸をした影はひらひらと手を振り、「また会えれば」と言って今度こそ消えた。
青年はその影の女の雰囲気に惚れ、是非に探し出してまず知り合いになりたいと思った。
容姿以外平均をいっていた青年はそれから狂ったように何事にも真剣に取り組み、『我が国の誇り』とまでいわれるようになるのだがそれはまだまだ先の話。
これが、皇子と暗殺少女の出会いだった。




