表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/27

ヨシダ死刑執行



 その日、王宮内にある公開処刑所には、入りきれない程の民衆が押し寄せていた。


「これより、酪農家ヨシダの公開裁判を行う!裁判内容はヨシダの魔人疑惑、及び、冒険者の殺害についてである!」



 大勢の群衆が見守る中、容疑を掛けられた酪農家ヨシダが手錠を付けられたまま、会場に姿を現した。



「魔神めーっ!人類を滅ぼして世界征服でもするつもりかああーっ!!」


「人間のふりをした悪魔めっ!!お前は死刑だっ!!」



 群衆からヨシダに様々な罵声が浴びせられる。



「いったいどうして、オラはこんな事になってしまったんだっ!?オラは犯罪者でも悪魔でもねえのにっ!」



 ヨシダは大勢の群衆に睨まれ、沢山の石を投げられながら再び罵声を浴びせられた。



「証人、魔術師カーティス。この男が魔神となり、古代竜や冒険者達を皆殺しにした、それで間違いないか?」



「はい、間違いございません。一緒にダンジョンに入った盗賊団と古代竜は、その男に殺されたのです。そして私達、ネルソンのパーティーもその男に殺されかけました。」



 魔術師カーティスの発言が終ると、再び群衆から凄まじい怒号と大量の石がヨシダに投げられた。



「悪魔めええっ!!王国の英雄、剣士ネルソンも殺そうとするとは!今すぐ死刑にしろおおーっ!!」



「そうだ、そうだっ!!魔神を今すぐ殺せえええーっ!!」



 群衆の投げた石がヨシダの全身に当たり、数箇所から血が流れる。



「オ、オラは盗賊の人達を殺してねえだっ!ネルソンさん達を殺そうともしてねえ、オラはみんなを助けたんだっ!!どうしてそこの魔法使いのお兄さんはウソを付くだっ!?」



「被告は黙りなさい!王国の英雄、ネルソン・オリバーの盟友の証言がウソだと申すのかっ!?もう良い、判決は決まりだ。重罪人ヨシダは死刑とするっ!!」



「そうだ!そうだ!魔神は死ねえええっ!!」


「地獄に落ちろ!!この悪魔がーっ!!」


「・・・う、嘘だ!オラが死刑だなんて!!」



 がっくりと膝を落としたヨシダに、左右から2人の兵士が近づいて彼の両腕を押さえ込み、死刑台へと連行する。

 

 

 会場からの罵声はさらにヒートアップし、群衆はヨシダの処刑を今か今かと待ちわびている。



 すると突然、彼の腕を掴んでいた兵士がヨシダを捕縛しているロープをナイフで切り落としてしまった。



「・・・貴様、何をやっておるのだ!!なぜロープを切る!?」



 そばに控えていた小隊長らしき人物が、慌ててヨシダの方へ駆け寄って来る。



「動くんじゃねえっ!!近づいたらお偉いさん達の命はねえぞっ!!周りを良く見てみな!」



「な、何だとっ!?」



 小隊長が後ろを振り向くと、裁判長を始めとする王国の役人や大臣、兵士長らしき人物も、兵士に化けた男たちに刃物を突きつけられていた。



「ふう、何とか間に合ったなぁ。借りは返すぜ、酪農のおっさん。」



 ヨシダのロープを切った兵士が、兜を脱ぎ捨ててヨシダに笑いかけた。



「あ、あんたは、盗賊のお兄さんかっ!!」



「ああ、トムって言うんだよ。ダンジョンでは世話になったな。」



「オ、オラを助けに来てくれたのかっ!?・・・うう、ありがとう、ありがとう!!」



 ヨシダは嬉しさのあまり泣き出してしまった。



「おいおい、まだ助かった訳じゃねーぜ。何せ、王国にケンカ売っちまったんだからよ!!さあ、ここから大脱走劇の始まりだぜっ!!」



「き、貴様ら~!!盗賊風情が調子に乗るなよ!!すぐに千を超える王国兵士団がこの会場を取り囲むぞ!貴様らに逃げ道などないわああああーっ!!」



「一応言っとくが、盗賊団のメンバーを殺したのはサイクロプスだぜ。酪農のおっさんは俺とリンダを助けてくれたんだ。悪い事は何もしてねーぞ。」



「だ、誰が盗賊などの嘘を信じるかっ!お前も必ず死刑にしてやるからなっ!」



 小隊長がそう言い終えた直後、すぐさまトムのケリが小隊長の腹に命中し、膝から地面に崩れ落ちると動かなくなった。



「よし!撤収だ!野郎ども、引き上げるぞっ!!」



 トムの合図に合わせて大量の煙幕が会場内にたかれ、群衆もパニックを起こして大混乱になった。


 

 その隙にトムが指揮を取った盗賊団は全員がバラバラに散って、一気に処刑場の塀を駆け登るとあっという間に処刑場を後にし、快足を飛ばして王宮の外まで全員が脱出に成功した。



 ヨシダはトムと供に、王宮外の王都の街まで逃げる事が出来た。



「ハァ、ハァ、・・・さすが盗賊さん達だべ!こんなに早く逃げられるとは!」



「・・・いや、どうやらまだ安心出来ないみたいだぜ、おっさん。」



「・・・・!?」



 ヨシダが辺りを見渡すと、30匹は超えるであろう猛獣キングミノタウロスの大群に取り囲まれていたのだった。




いつも読んで下さりありがとうございます( ^ω^)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ