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ヨシダの決断


 凄まじい雄叫びと供に暴れ狂う破壊神。


 その場に集った戦士達だったが、為す術なく破壊神から逃げ惑うしかなかった。


剣士ネルソンや盗賊団も、破壊神の攻撃から自分達の身を守る事で精一杯な状態であった。


そんな中、ヨシダは覚悟を決める。


「よし、もう一度オラとキャサリンで魔神になるしかないだ!いくぞキャサリン!」


「ブヒブヒっ!」


 ヨシダとキャサリンはお互いの手の平を合わせ、もう一度魔神に変身しようとするが、その時ヨシダの愛犬コマリもそこに飛び込んで来たのだった。


「ワオンっ!!」

「コ、コマリっ!?」


 コマリは前足を差し出し、ヨシダと2匹の手が重なり合った。


 辺りは凄まじい光に包まれる。


 そして光が収まる頃に、そこに集まった戦士達は驚くべき光景を見たのであった。


 誰もが新たな魔神の誕生かと思ったが、何とそこには蒼白い光に包まれた1人の酪農家の姿があったのだった。


 外見はヨシダの姿だが、身体全体の色素が抜けたようにヨシダの身体は真っ白で、その身体全体から蒼白い光が眩いばかりに放たれている。


「酪農戦士ヨシダ、ここに参上!!」


 酪農戦士となったヨシダは、破壊神めがけて猛烈な勢いでダッシュした後、破壊神が射程圏内に入るやいなや、両足で地面を力強く蹴り空高くジャンプした。


 そしてヨシダは凄まじい速さで頭から破壊神の腹部へと突っ込んだのだった。


「ぐぎゃああああああああああああーっ!!」


 破壊神が絶叫すると同時にヨシダの身体は破壊神の腹部を貫いて、そこに大きな穴を開けてしまった。


「ヨ、ヨシダ、貴様あああ~っ! 牛のハナ子と国王がどうなってもいいのかっ!!」


ヨシダの圧倒的な攻撃力に驚愕したカーティスが、ヨシダを牽制する。


「ハナ子や王様だけ死なせねえ。悪い魔法使いも倒したら、オラも一緒に死ぬだっ!!オラも一緒ならハナ子も寂しくねえだよっ!!」


「な、なんだと!?くそ、そうはさせるかああああーっ!!ヨシダを殺れえええっ!破壊神よっ!!」


 破壊神は最後の力を振り絞り、右拳を凄まじい速さでヨシダ目掛けて突き出した。


 それと同時にヨシダも空高く跳躍して、右拳でそれを迎え打つ。


「酪農パーーーーーンチっっ!!」


両者の拳は激しくぶつかり合った。


数秒の沈黙の後、酪農パンチを食らった破壊神の右拳は粉々に粉砕され、右腕にも大きな亀裂が入り、やがて右腕は真っ二つに割かれてしまったのだった。


「······バ、バ、バカなあああああーっ!太古の禁呪を施した破壊神だぞっ!?酪農家などに負ける訳がないだろうがああああーっ!!」


「人や動物をただの道具だと思っているお前は、絶対オラには勝てねえだよ!」


「だ、だまれえええっ!!お前に何が分かる!?こ、こうなったら王都、いやこの大陸ごと大破壊してやるっ!!」


 カーティスが禁呪の詠唱を始めると、破壊神の身体はどんどん空高く舞い上がり、それと同時に手足や頭が身体に吸い込まれ、1つの丸い球体になってしまったのだった。


「フハハハハハハーっ!この破壊神は爆炎と供に砕け散り、大陸全土に呪いの雨を降らせるのだっ!生物は全て死に絶え、新しい世界の歴史が始まる!そして我こそが新時代の王となるのだっ!」


 丸い球体となった破壊神の身体は、どんどん上空へと舞い上がって行き、その大きさも増していった。


 盗賊団がその丸い球体に一斉射撃をするが、矢は全て跳ね返されやがて虚しくも地面に落ちて来てしまったのだった。


「くそっ!まずいぜリンダ、何か他に手はねえのかよ!?」

「あれを止めるなんて大賢者でも無理よ!一体どうすれば!?」


 剣士ネルソンもどうする事も出来ずに、己の無力さを嘆いて拳を地面に叩き付ける。


 すると、ヨシダが破壊神の真下まで駆けて来ると、振り返ってその口を開いたのだった。


「みんな、今までありがとうな!オラ、みんなの事絶対忘れねえからなっ!」


「ヨ、ヨシダ殿!?」

「なんだよおっさん!?」

「おじさん、何言ってるの!?」


 ヨシダは駆け付けてくれた多くの盗賊団メンバーにも手を振ると、ネルソンとトム、リンダにもう一度手を振って上空を見上げた。


「みんな元気でなっ!風邪引くでねーぞっ!!」


 そう言い残したヨシダは両足で大地を蹴り上げて、大空高くジャンプすると一気に球体となった破壊神の元まで辿り着いたのだった。


「ヨ、ヨシダ殿おおおおーっ!」

「おっさん、何考えてんだ!やめろーっ!」

「おじさん、無茶はやめてえええーっ!!」


ヨシダはニコッと微笑むと、球体となった破壊神を担ぎ上げ、さらに上空を目指して加速していった。


ヨシダが大きな雲を突き抜けると、下に見える王都の街がとても小さく見えた。


「ふう、このまま大気圏ってやつに入れば、オラ達はみんな跡形もなく燃え尽きるはずだ。コマリ、キャサリン、付き合って貰って本当に申し訳ねーだ。」


3者は1つの身体に融合されてはいるが、心はずっと繋がったままだ。


「ん、コマリ、オラと一緒ならそれでもいいって言うのか?ありがとな、お前は最高の愛犬だべ!······そうか、キャサリンはゲルグやじーちゃんを守れるなら本望か、お前も最高の愛ブタだな!」


ヨシダ達はさらに上空へと加速していく。


「オラ、前の世界では家族や友達に迷惑かけてばかりで、何の役にも立てなかったけど、この世界でようやくみんなの役に立てたみてーだ。みんなに会えなくなるのは悲しいけど、今はとっても満足してるだよ!みんな本当にありがとなっ!!」



やがてヨシダと破壊神は爆炎に包まれ、その姿を消したのだった。





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