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酪農家ヨシダ、牛と供にダンジョンに挑む!



「ヨシダ、イジメル、ユルセナイ!」



 猛獣ミノタウロスに変身したメス牛のハナ子は、ゲルグの手下達に向かって勢い良くダッシュすると、筋骨隆々の体から繰り出される強烈なパンチを、手下達に次々とぶちかましていった。



「ンっモオオオオオオーっ!!」



「ぐはああああーっ!」



「ンっモオオオオオオーっ!!」



「ぐはああああーっ!」



「ンっモオオオオオオーっ!!」



「ひいいいいいっ!!た、助けてくれーっ!!」



 ハナ子の丸太のような両腕から繰り出される殺人級のパンチは、鋼鉄すら破壊しそうな勢いだったから、ゲルグの手下達の体は大きく変形してボッコボッコになってた。



 あの可愛かったメス牛のハナ子が、今では凶暴な野獣のようになっちまった。驚いたオラはハナ子の姿を見てみたんだ。



 殴られたら即死しそうな両腕、手が付けられないような凶暴性に満ちたその瞳、オラはそんな野獣率200%のハナ子でも、ずっと見ていたら何だかとても可愛くなっちまったんだ。



 やっぱりハナ子はハナ子なんだ。



 やがてハナ子は元のサイズの可愛い牛に戻っていった。



「さて、こいつらはどうすっぺか。流石に、ここまで惨殺寸前までやられると気の毒だなー。」



 不憫に思ったオラは、森に戻って3日3晩、そいつらを看病してやったんだ。



 そいつらは、ハナ子のように大きくなるような事はなかったけど、ある程度元気になってそいつらは逃げるように森を出て行っちまった。



「・・・それにしても腹へったなー。そういや毎日木の実しか食ってねーし。働かねえと生活出来ねえから、とりあえず仕事を探さねーとだなあ。」



 街の人に聞くと、何やら「冒険者ギルド」って所で仕事をくれるらしい。オラはコマリとハナ子を養う為に冒険者ギルドへ向かったんだ。



「ちょっと、アレ見てよ!あの人牛なんか連れているよ!まさか冒険者!?」



「そんな訳ねえーだろ。おそらくゴブリンにでも家畜をやられて討伐の依頼に来たんだろ?」



 オラの姿を見ると、周りの人達がヒソヒソと噂話でもしているような気がしたけども、オラは気にせずに受付けのお姉さんに尋ねてみた。



「あの~、オラは吉田と申しますが、何か仕事はないでしょうか?」



「・・・あ、はあ、ヨシダさんですか? ちなみに職業クラスは何でしょうか? 剣士・・・ではないようですが?」



「オラは酪農家です。家畜を育てています。」



 オラの酪農家という言葉に、冒険者ギルドにいた大勢の人達がなぜか大爆笑した。



「おいおい、おっさん!ふざけてるのかよ!?酪農家に何が出来るっつーんだよ!?」



「お、おめー、酪農家をバカにすんのか!?オラは酪農に誇りを持ってやってるだ!!」



「だから、おっさんよー、家帰って家畜の世話でもしてろって、臭くてかなわねーよ!」



「お、おめ~、酪農をそこまで侮辱するか!! もうガマン出来ねえ!表に出るだっ!!」



 オラとふざけた若造がケンカになりそうな所を、ギルドのスタッフさんが慌てて止めに入った。オラもなかなか怒りが収まらなかったが、ぐっとこらえてガマンしたんだ。



 しばらくしてオラが落ち着きを取り戻すと、さっきのふざけた若造と一緒にいたお姉さんが1枚の依頼書をオラに見せてくれた。



「おじさん、さっきは私の仲間が失礼な事を言って本当にごめんなさいね。お詫びにいい情報を教えるからそれで許してもらえないかしら?」



 お姉さんが見せてくれたギルドの依頼書には「ダンジョンに巣食う凶悪な魔物討伐・達成報酬5000万ペソー」と書いてあった。



「魔物を討伐すれば5000万ペソーだって!?本当にそんな大金もらえんのかっ!?」



「ええ、もちろん貰えるわよ。討伐すればの話だけど。私達も討伐に行くからおじさんもどうかしら?」



「あんた、何て親切な人なんだ!こんないい情報を教えてくれるなんて!もちろんオラも挑戦してみるだよ!」



 オラはお姉さんに何度もお礼を言ってから、冒険者ギルドを後にした。



「おいおい、お前何考えてんだよ?あんな酪農オヤジにダンジョンなんて無理だろが?」



「ウフフフフっ! だから面白いんじゃない!みんなで大笑いしてやりましょうよ!」



「そういう事か、お前って本当に悪魔だよな~!」



 オラがギルドを出る時、さっきのふざけた若造と親切なお姉さんがヒソヒソと話してたけど、オラは気にせずさっそくダンジョンのある場所に向かったんだ。





★☆★




 ダンジョン。それは凶暴な魔物が巣食う地下の迷宮。



 ある者は自分の腕試しの為、またある者はダンジョンに眠る財宝の為、今日もあまたの歴戦の猛者がその魅力に惹き付けられ、そこに集っていた。



 ダンジョン入口の中央には、伝説の剣士としてその名を知らぬ者はいないと言われる、剣士ネルソン・オリバーと、彼を支える4人の仲間達がダンジョン攻略の作戦を立てている。



 さらに、ダンジョン入口の左手には、盗賊ギルド「シュバルツ」を束ねる支配者、ウィルバー・ガーランド。そしてそのギルドの総員2000人から選ばれた盗賊のエキスパート6人が、念入りに戦いの準備をしている。



 そして、ダンジョン入口の右手には・・・




 牛を連れた酪農家ヨシダの姿があった。




評価、ブクマ、宜しくお願い致します( ^ω^)

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