盗賊団の逆襲と謎の老人
「今度こそ終わりだ!ここで全員死ぬがいいっ!!」
魔術師カーティスの作り出した大きな炎の球体は、どんどん大きくなり炎も激しく燃え盛っている。そして下僕の魔獣キングミノタウロスは盗賊団に次々と襲いかかった。
――――がしかし、
どういう訳か、猛獣達の動きが急激に遅くなり、盗賊達は楽々その攻撃をかわして反撃に出ていた。そして驚くべき事に、盗賊リンダはカーティスと同じような炎の球体を上空に作り出している。
「ど、どういう事だ!?いったいどうなっている!?」
「あんたね、魔獣と魔術師を相手に、私達が何の用意もしていないと思っているわけ?魔術師のくせにあまり頭は良くないのかしら!?」
「き、貴様~っ!!矢に猛毒を盛り、その魔法はスクロールを使ったのかっ!!」
「そういう事ね!魔法のアイテムって本当に便利ねえ。ま、毒の方はどんな猛獣でも即死するような代物なんだけど、そいつら化物中の化物みたいね。」
やがて、カーティスとリンダの作り出した大きな炎の球体は上空で激しぶつかり合ったが、お互いを打ち消すように激しく爆発して両者の攻撃は互角に終わった。
「・・・くそっ!その様子だといくつもスクロールを持っているようだな!」
「ちょっと値が張ったけどいい買い物だったわ。それとダンジョンで手に入れた魔法効果を全て打ち消すっていう上物もあるわよ!魔法が使えない魔術師なんて、子供や老人みたいなものよね。ウフフフっ。」
「·····フンっ!まあいい、この場は引いてやる。しかしお前らがどうあがいても無駄だ!国内の牛は全て私達の支配下にある。もうヨシダが魔神になる事もあるまい!これから国家転覆のクーデターの幕開けだ!!」
カーティスはそう言い残すと「転移」の魔法を使い、その場から姿を消してしまった。
猛毒に体が侵されつつも、暴れる事を止めないキングミノタウロスの群れがその場に残されたが、ヨシダと盗賊達の奮闘でどうにか打ち倒す事が出来た。
しばらくすると、ようやく猛毒が全身を犯し、キングミノタウロスの群れは次々に死に絶えていった。そしていつの間にか猛獣達は元の牛の姿へと戻っていったのだった。
「おっさん、毒を使って悪かったな。こいつらは元々牛だもんな。可哀想な事をしちまった・・・。」
「いや、仕方ねえ事だった。トムさん達は悪くねえ。毒を使わなければオラ達は全員殺されてたから。·····うう、で、でも·····オラはあの魔法使いの奴が許せねーだ!牛を戦争の道具にするなんてっ!!」
ヨシダは死に絶えている牛達を撫でながら、悲しそうに泣き続けた。
「おじさん、みんなの怪我の治療もしないといけないから、とりあえず私達のアジトに行こう。今後の事も話し合う必要もあるしね。」
「·····ああ、分かっただ。何から何まで世話になっちまって申し訳ねえだ。2人とも本当にありがとう。」
リンダの申し出に乗って、ヨシダは盗賊達のアジトに連れていってもらう事になった。
◇◆◆◇
――――その頃、剣士ネルソンは見知らぬ部屋のベッドの上で目を覚ましていた。
「·····こ、ここはいったいどこだ!?」
「おやおや、目が覚めおったか。酷い怪我じゃからの、しばらく安静にしとるといい。」
ネルソンの寝ているベッドのすぐそばには、見知らぬ老人が年季の入った木製の椅子に腰掛けていた。
「あ、あなたが私を助けてくださったのか!?·····私の他に犬も1匹いたはずだが?」
「ああ、あの犬なら私の飼っているブタと遊んどるよ。何も心配いらんわ。まあゲルグと猛獣化した牛にやられたお前さんを、ずっと心配しとったけどな。」
「·····あ、あなたはいったい!?」
ネルソンが尋ねると、老人は微笑を浮かべこう言った。
「わしか?わしはな、ヨシュア・ヨシダールという者じゃ。お前さんを痛めつけた、あのゲルグの父親じゃよ。」
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