魔術師カーティスと盗賊団
酪農家ヨシダと盗賊団のトムは、辺り一面キングミノタウロスの大群に囲まれてしまった。
猛獣達は少しずつ歩を進め、ジワジワとヨシダとトムを追い込んでいく。
「クソが!1匹でも厄介なキングミノタウロスが30匹はいるぞっ!誰がコイツらを操ってやがるんだっ!?」
「・・・ト、トムさんだけでも逃げてくれ!1人なら何とか逃げるられるはずだべっ! 」
「バカヤローっ!!命の恩人を見捨てるほど、俺は腐っちゃいねーんだよっ!!絶対どうにかしてやるから俺達を信じろっ!!」
「・・・うう、ありがとう!本当にありがとうトムさんっ!分かった、オラはトムさん達を信じるだ!!」
そして、ヨシダ達を射程圏内に捕えたキングミノタウロスの集団は、獲物を殺戮しようと戦闘斧を次々と大きく振り上げた。
――――とその時だった。
ヨシダ達がいる王都の街の空から無数の矢が、キングミノタウロスに襲いかかった。
上空からの落下速度も加わって、放たれた矢が次々と猛獣の体に突き刺さっていく。
鋼のような強靭さを誇るキングミノタウロスであったが、致命傷にはならずとも十分な足止めになった為、ヨシダとトムはその隙に猛獣達と十分な距離を取る事が出来た。
「遅かったじゃねーか!リンダ!!」
トムの言葉に反応したヨシダが後方を見てみると、数十人の盗賊団を率いている盗賊リンダの姿があった。
そして、辺りの建物の2階、3階、そして屋根の上には、さらに数十名の盗賊団たちが各自、弓矢を構えていた。リンダの合図でいつでも矢を放てる状態である。
「ここは私達が完全に包囲した!もう大丈夫だよ、酪農のおじさん!!」
「・・・あ、あんたは親切なお姉さんっ!」
「リンダよ!今度は私達がおじさんを助ける番ね!・・・さあ、隠れてないで出て来なさい、カーティスっ!」
リンダの言葉に反応した人影が、物陰がゆっくりと姿を現れた。
「・・・あ、あんたは、さっき裁判でウソを付いたお兄さんでねーか!?」
猛獣キングミノタウロスの群れの後方から現れたのは、魔術師カーティスであった。
「まさか、盗賊団のお2人が生きていたとはね!てっきり私が召喚したサイクロプスに、殺されたとばかり思っていましたよ。」
「やっぱり、お前の仕業か!よくも仲間たちを殺してくれたわね!カタキはきっちり取らせてもらうよっ!」
リンダは手に持ったショートソードを力強く握り、その刃先をカーティスの方に向けて力強く叫んだ。
「い、いったいどういう事だべ!?何で魔術師のお兄さんはそんな事するだ!?」
「おじさん、このカーティスっていう男は、あのダンジョンで剣士ネルソン・オリバーとその仲間を殺そうとしていたのよ!そしてそれを誰にも見られないように、サイクロプスで私達も殺そうとしたんだ!!」
ヨシダが状況をよく理解出来ないうちに、カーティスが喋りだした。
「私達がずっと計画して来た魔獣による世界統一を、ネルソンは反対し私達と敵対するに決まっているからな!ダンジョンでは邪魔が入ったが、今頃ゲルグの魔獣達がネルソンを殺しているだろうな!ククククっ!フハハハハーっ!!」
「そ、そんなバカな!ネルソンさんがっ!?」
「さあ、お遊びはここまでにしよう!魔獣どもよ、こいつらを皆殺しにせよっ!!」
カーティスは攻撃力と防御力アップの支援系魔法を魔獣達にかけると、今度は上空に大きな炎の球体を作り出したのだった。