06 メルの恋愛相談室
(さすがに早まった)
私は一人、毛布にくるまる。
あの後、魔王は子供みたいに大号泣しながら帰っていった。
一人になった私は冷静になって考えた。
そして自室に戻り今に至る。
(う〜。なんであんなこと、言ったんだろ私)
――ピンポーン
再び、チャイムがなる。
(ま、魔王さん、なにか忘れ物かな)
「は、は〜い」
「やっほー、遊びに来たよ」
玄関を開けるとそこには「親友」という言葉がピッタリな女の子、メルが手を振って立っていた。
「元気してた!?サナさんのお葬式ごめんね、急いで来たんだけど間に合わなくて」
「メルゥウウウウウウウ」
「わわわ。どうしたの」
私はメルの華奢な身体に抱きつく。
メルは、超がつくほど可愛い。
母の遺影に手を合わせている姿でさえ絵になる。
(やっぱ可愛いなぁ)
メルは母に挨拶を終えると、こちらに振り返る。
「で、どうしたの??」
「う、うん。あのね……」
私はついさっきまで起きていた事、母の最期の言葉、そして結婚のこと……。
全て話した。
メルは話の途中から目を瞑って聞いていた。
「で、終わりなんだけど。メ、メル??」
「……」
メルは今も目を瞑ったままだ。
そして勢いよく目を開く。
「それ、マジ??」
「う、うん。一応、やっぱやめた方がいいよね」
「いいなああああああ!!魔王でしょ。アンナ、玉の輿じゃん!しかも一途で渋目のおじさんと来た。いい。うん、凄くいい」
「ちょ、ちょっと待って!!そうかもしれないけど、やっぱり急ぎすぎっていうか……」
「なんで?アンナはこの人かもって思ったんでしょ。それだけで充分じゃん」
「で、でも……」
「あのねアンナ、頭でどうこう考えすぎ!!別にダメだったらダメでまた次探せばいいじゃん」
「そ、そんな簡単じゃないよ!!」
私は思わず声を荒げてしまった。
「じゃあなに、今からごめんなさいって謝るの??」
「それは……」
「気まずい??それとも申し訳ない??もしかして魔王だからとか??」
「そんなことない!!」
「じゃあ、つまりアンナは魔王さんを少なからずいいと思ってるわけだ」
「……でも私、魔王さんのこと何も知らないのよ」
「いいじゃん、今は知らなくても、こっから知れるんだし。私ね、アンナには幸せになってほしいんだ、だからその為に変な言い訳をして逃さないでほしいかな」
「……幸せ」
「うん、幸せ。アンナは魔王さんとなら幸せになれそ??」
私は魔王さんの顔を思い出していた。そして、
「……たぶん」
「以上、メルの恋愛相談室でした!!」
メルは私を見てニコニコ笑っていた。
(はぁ。ほんと敵わないなぁ)
――ピコン
私とメルはパソコンを覗き込む。
宛先:アンナ 様
差出人:魔王
件名:今日はありがとうございました。
本文:アンナさん、今日は本当にありがとうございました。
凄く楽しくて、幸せな1日でした。
それと今後のことを魔王城でお話ししたいと思っています。
ですのでアンナさんのご都合が良い時に、連絡ください、迎えに行きます。
待っています。
今日は本当にありがとうございました。
魔王
「へぇ、良さそうな人じゃん」
「う、うん……」
「貸して!!」
メルは私からパソコンを取り上げると返信を打ち出す。
「ちょっ!!ちょっとメル!!!」
「いいのいいの、アンナからの連絡なんて待っていたら、いつになっちゃうか分からないでしょ」
宛先:魔王 様
差出人:アンナ
件名:Re;今日はありがとうございました。
本文:どうもアンナです!!
私もすっごく楽しかったでーす!!!
そうですね、でしたら明日の朝一でお願いしまーす!!
待ってまーす!!
アンナ
――カチッ
「よし!!」
「ちょっと、なんて送ったの見せてメル!!!」
私は、メールを読み終わると頭から血が抜けていくのが分かった。
「メ〜〜ル!!!」
「いいじゃん、いいじゃんこれくらい!!」
――ピコン
「はやっ」
メルがその速さに驚く。
宛先:アンナ 様
差出人:魔王
件名:Re;了解です
本文:了解しました。
明日の朝一でお迎えにあがります。
それと、アンナさんそんな一面もあるのですね。
す、すっごく良いと思います。で、では。
魔法
(ふふふ。魔王さん、自分の名前間違えてるし)
「あ〜あ。アンナが女の顔してるよ。いいなぁ、私も結婚したいなぁ。アンナ、魔王の幹部を紹介しなさいよ!!」
メルが何か言ったが、私はなにも聞こえない振りをした。