表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と結婚も、そんなに悪くない。  作者: じょじょた
一章 出会い
12/14

12 結婚式2

 

「アンナさん、控えめに言って超絶可愛いです」


 鼻にティッシュを突っ込んだ男はそう言った。


「いや、これはマジでやばいです」


 男は続ける。


「そんなことより、鼻血は止まったんですか??」


 私は呆れと心配が混ざった声で尋ねる。

 男はティッシュを抜き取り、血がもう出ていないことを確認するとゴミ箱へ捨てた。


「ええ、なんとか」


 鼻血の原因は至って明確。

 この男は私を見るや否や鼻血を吹き出し、その場に倒れたのだ。


 その姿を見ていた将軍と参謀の顔は、かなり引きつっていたけど。

 それもそうだ、自分の尊敬する上司が女の人を見て倒れたのだ、しかもニヤケ面で。

 それは顔も引きつるよ。


「アンナさん。本当にお似合いです」

「ありがとう。魔王さんもお似合いですよ」

「照れますね」


 魔王は白いシャツ、そして真っ黒なタキシードを完璧に着こなしていた。

 うん、渋さがダンディーに昇華してるよこれ。

 メルが見たら、騒ぎ立てるなこれは。なんて考えてしまう。

 その時、ふと疑問に思った。いや以前から気になってはいたのだが、聞くタイミングを逃していたことがあった。


(よし聞いちゃお、歳上だとは思うけど)


「魔王さんって今お幾つなんですか??」

「わたしですか?わたしは今年で164歳になります」

「……ん?」


 沈黙が場を包む。


「……もう一度お願いしてもいいですか??私、多分いま聞き間違えちゃって」

「ええ、もちろんです。今年で164歳になります」


(なぁぁぁぁぁぁあああんだって!!!)


 私は立ち上がり天を仰いだ。


「ア、アンナさん!?」

「と、ということは……144歳差……??」

「ええ。そうなりますね。やっぱり若いですよね……歴代魔王の中でも一番若いせいか、こう覇気がありませんよね……」

「いやぁ、そこじゃないんですけどね」

「ははは。直ぐに歴代魔王に負けない魔王になりますから」


 魔王は真っ直ぐに私を見る。

(ま、眩しい!!その男の子の目は眩しすぎるよ!!)


 魔王の後ろで参謀が口に手を当て笑っていた。

(くそお、)




 ――ワァァァァァアアアアアアアア



 突如、歓声が城内に響き渡る。

 発声元は魔王城前の大広間からによるものだ。


 その数、城外の者も含めれば約三十万の魔物。そして十人ほどの人間。

 それは皆、今日行われる予定の結婚式の参列者である。


「どうやら、カウントが始まったようですね」


 参謀が窓の外を見る。

 そこには100をひとつずつカウントする者たちがガラスの向こうに見えた。


「アンナさん、行きましょうか」


 魔王が、立ち上がる。

 私は魔王の後ろを歩く。

 部屋を出ると魔王と私は横に並ぶ。


 長い通路の先には、大広間を一望できるバルコニーへ続いている。


 響き渡る歓声の中、魔王は私の手を握る。

 その手は微かに震えていた。


「アンナさん、もしかするとここから先はアンナさんにとって心苦しい場になるかもしれません」


 魔王が言いたいことはすぐに理解する。

 今日来ている者のほとんどが、敬愛する魔王の結婚相手が人間ということを知らない。

 これに関しては事前に起きる騒動を少しでも減らすためのものだ。もちろん私も納得している。


 魔界の人たちが私を受け入れてくれるかは、全く分からない。

 なにせ今もなお、人間と魔物は争い続けている。人間に憎しみの心をもつ魔物がいても当然だ。



 それでも……

 私は……



「望むところです」


 私は笑顔で前を向く。

 魔王の微かな震えが止まり、その代わり先ほどよりも強く握る。


「それでこそ、我が妻です」


 もう分かっているとは思うが今この二人は………


 ――あえて言うのはよしておこう。



 外でのカウントもいよいよ終盤に差し掛かる。

 そのカウントに呼応するかのように、私たちは歩を進める。



 ――10……

 ――9……

 ――8……

 ――7……

 ――6……

 ――5……

 ――4……

 ――3……

 ――2……

 ――1……

 ――0……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ