第7話 炎の騎士VS自宅警備員
「なんで...お前がこの王戦に...」
俺は戦う気を無くしかけていた。
絶望的だ。敵は最強の騎士団の団長。勝てるハズがない。それに、マントでファーリスは視界が制限されていた状態でもあの実力だ。
「君に王となる力と信念があるかを確かめにきたが...。君は既に抜け殻のように戦う気を無くしている」
続けてファーリスは恐ろしい言葉を放った。
「私はもとより、本気で君を倒す予定でいた。木刀ではなく、私の炎で炙る予定でな...」
すると、ファーリスはとんでもない量の炎を放った。
終わった...。
俺には覚悟も力もない。
もう...俺は...ここで...死ぬ。
『この国...世界を変えてください...!』
「?!」
俺はその瞬間、体が勝手に動いた。
幸いにもファーリスは俺のさっきいた場所にのみ炎を放ったので、避けるのは簡単だった。
そうだ...あの約束!今はファーリスにも遅れをとるわけにはいかない!
「...それでこそ君だ、ハヤト。ハヤトがその気なら、私も全力で迎え撃とう..!」
ファーリスはあらゆる角度から炎を放った。
「熱ッ!」
なんと木刀に火が移った。俺は木刀を投げる。
俺にも多少カスったが、今はそんな痛みも感じなかった。エルメリカが抱えている痛みはこんなものじゃない..!
「そんなもんかよぉ!」
勝ち目もほとんどないのに、ファーリスを煽る。
「いや、チェックメイトだ。同時に私の勝ちだ」
すると、俺の頭上からとんでもない大きさの炎が押し寄せてきた。
頭上だけじゃない。前にも、後ろにも、右にも、左にも。
「フンッ!『お前の炎なんか、効くかぁぁ!』」
無理だろう。普通に当たったら死ぬ。
ここで死ぬのか。
エルメリカとの約束は守れなかったな...。
炎は俺の体に触れ...あれ?熱も感じないし、何より...、炎が俺を避けている?!
俺は現状を飲み込めなかったが、全力でさっきファーリスがいた方向に走る。
そして、俺は拳を握り、ファーリスの腹めがけて殴った。
「ーーーッ」
ファーリスはまさかの事態に反応出来ていない様子だった。
「な...。今の出力の炎を防ぐ術などなかったハズ...。まさか、ハヤトに能力が...?!」
「そんなこと、今はどうでもいい...。今は王がどちらか決めるのが、大事だろ!」
俺はファーリスに拳を握り、殴る。
それをファーリスは木刀で防ぎ、頭に当てようとする。
「甘い!」
それを見切り、俺はファーリスの膝裏を殴る。
ファーリスはバランスを崩し、木刀を落とした。
「うおおおお!」
ファーリスの頭に木刀を当てようとする。しかし、ファーリスは片手でそれを防ぐ。
ファーリスはまた炎を出した。
「効くかぁぁぁ!」
炎は俺を避け、俺は燃えた木刀を捨て、ファーリスへを背負い投げする。
「はは。きみには驚かされてばかりだな」
すると、ファーリスの頭は僅かにステージ外に出ていた。
『なんと!ラメル騎士団団長ファーリス・ラファヴァンが場外ッ!次期王はシジマ・ハヤト!』
会場の歓声はさらに増した。
「すげえよあいつ!騎士団長に勝ちやがった!」や「お金でも積んだのかな?」などの声もした。
ファーリスは立ち上がり、言った。
「完敗だよ、ハヤト。まさか、能力がこのタイミングで発動するなんてね」
「いやいや、どういう能力かもまだわかってないし....」
「推測だけど、君は当たったら死ぬ攻撃を『効かない』といっていたよね。もしかしたら、嘘が本当になる能力なんじゃないかな?」
「んな無茶苦茶な....」
俺は苦笑しながら言った。
地味だが、応用力のきく能力である。
能力名は 虚偽の者とでも名付けよう。
そんなどうでもいい事を考えながら、俺はコロシアムから出て行くのだった。
Hello.I’m Sumeragi Yozora!
今回はファーリスVSハヤトになりました。
このシリーズの中でも熱い戦闘になったらいいなと思います!
次回からは舞台はラメル王国から徐々に世界へと移ります。ここから物語が始まると言っても過言ではありません。
次回予告 宣戦布告