第5話 勝利条件
「見事な剣技だ。まるで、踊っているように美しい剣技だった」
「ありがとう。やや格闘技を使ったけどな」
あの試合の後、俺は客席にいたファーリスを見つけ、こんな感じで先ほどの戦いの話をしていた。
「いやいや、むしろ、格闘技を組み込んだ剣術に関心している。私は能力に頼るあまりか、格闘技についてはほとんど鍛えてなかったからな」
「褒めてもなんも出てこないぞ」
「能力を使わずに能力者を降すなんて、私には出来っこないよ、ハヤト」
「次はどうだかな....」
このままではキリがないので、話を無理矢理変える
「次の相手はハヤトがやった後の試合を見ると、能力に頼っていた感じだが?」
「いや、体を液体にさせる能力なんて規格外だ。応用が効きすぎて、対応が出来ない」
「確かに液体で腕を伸ばすことで長いリーチ、体を液体にすることで頭の位置を曖昧にし、木刀でのK.Oを無効。さらに、液体になれば物理攻撃は無効だから、ステージの外に出すことも難しい」
「今のところいい案がない」
「こういうものを使うのは?これは固水石と言って、液体に触れるとたちまち超低温の冷気を発生させるもの。温度の高いものに触れると、冷気は消える。意外と使えるんじゃないかな」
「一応貰っとく」
俺は固水石をポッケに入れた。でかいの2個、細かいのが沢山あった。
「...おっと、こんな時間か。私は騎士団の仕事があるから、失礼するよ」
「わかった」
ラメル騎士団も大変なんだな....
『さあ第2回戦、初戦を飾るのは、能力を使わず、剣術一筋、シジマ・ハヤト!と自由自在な液体人間セイルン・ソクリカ!!』
セイルン・ソクリカって女の子なんだ...。今初めて気づいた。フードかぶってるせいでわからん。髪は白く、目は青い。
いやいや、問題はセイルンの能力だ。物理攻撃は効かない。なら剣術や挌闘技は使っても意味がない。
ひとまず、作戦通りやるしかない...!
『それでは、スタートッ!!』
スタートと同時に2人が一斉に動いた。セイルンは木刀を振り下ろす。それを俺は木刀で防いだ。すると、セイルンはたちまち消えた。
いや...液体化した。
すぐさま俺はセイルンから距離をとる
それも読まれていたのか、セイルンは俺の背後にまわる。俺は急いでセイルンの方をむいたが、腹を殴ってきた。
「ーーグハァッ!」
俺はだいたい3mほど吹き飛ばされた
こんな小さな女の子がこれほどのパワーを...?!
「ねえお兄ちゃん。能力使わないと、死んじゃうよ☆」
狂気の笑みを浮かべながら、セイルンは言った。
「はは。残念のながら俺は、妹より姉が欲しいんだよな。確かにあのバカ兄貴に比べれば、妹のがいいけど」
「それが遺言?本当にそれでいいの?」
「残念だがまだ俺は死なねえ。腹をくくるのはお前のほうだ!」
そう言い終えると、俺は固水石をセイルンに投げた。
「そんなもの、当たると思う?」
セイルンは涼しい顔で避けた。
「いや、狙いはそこじゃない、下をみろ!」
その瞬間、セイルンの体は固まっていった
「どう...いう...事?」
セイルンの顔は一瞬で焦った表情になった。
「簡単さ。細かくなっている固水石をズボンのポッケに入れ、ばら撒きながら、戦っていた。投げた固水石はただのおとりさ。まあ、君の液体がポッケに入ったり、液体に反応した石に触れたら、俺は自爆してしてたけどな」
そして、俺はポッケに入ってるあるもの、スマホを取り出した。
「そのためのスマホだ」
異世界転移の際、ポッケに実は入ってたもの。その他にはモバイルバッテリー5個とコンセントを入れていた。ひきこもりのスキル、『やばかったら、充電器とスマホをとっさにポッケに入れる』というスキルが働いた。
「何...それ?」
セイルンの問いかけに対し俺は、
「長時間使うと熱を発するもの。だから、これをこうして...」
俺はセイルンにスマホを当てた。すると、セイルンを纏っていた氷は消えた。
「どう...して?」
「俺はこの王戦で人は殺さない。というか、王戦だけじゃなく、ラメル王国の住人も、この世界の人間を殺さずに戦う」
「でもさ、木刀で殴るくらいはしないの?これだとまだ、戦い終わってないよ」
「あ...」
完全に盲点を突かれた。そういえば、勝利条件は『相手を戦闘不能にする』、『相手をステージの外に出す』、『木刀を頭に当てる』だったな...
「はぁー。呆れた。もういいよ、お兄ちゃんの勝ちで。この借りをいつか返さなきゃいけないしね」
セイルンはステージの外に向かって歩いた。足がステージの外に出た瞬間、
『え、えーセイルン・ソクリカ場外。シジマ・ハヤト3回戦進出..』
明らかに元気のない実況。どんだけ戦い見たかったんだ...。
俺は3回戦に進出、次の相手との戦いに作戦を練ることにした。
こんにちは。皇夜空でーす!
今回はヤンデレ妹キャラのセイルンとの戦いです。もしよかったら、評価のほうもお願いします。
次回予告 ムハカマ