第3話 王戦
俺はあの後、騎士に連れられ、城の個室に案内された。
そこのフッカフカの椅子に座ってエルメリカを待っていると、ファーリスが入って来た。
すかさず俺は
「エルメリカは結局どこに?」
俺の問いかけにファーリスは
「残念ながら、君と女王様の接触には許可が出なかったようだ」
残念だが、ある意味ラッキーかもしれん。俺は女子どころか人とコミュニケーションをとること自体が難しいので、ファーリスで慣れておこう。
気持ちを切り替え俺は
「なるほど。確かに、身元不明な不法侵入者とか怪しさしかねえしな。でも、ファーリスはなんで、俺と会話できるんだ?」
と言った。
それに対し、ファーリスは
「私の場合は『もし君が他の国のスパイだったとしても、対処できるから。』とのことらしい」
と言った。
なるほど。つまり俺が疑われてたら一頭身キャラになっていたのか。
怖...!
「そんな顔をしなくてもいいよ、ハヤト。私は君を疑うつもりはないさ」
「なんで俺をそこまで信用できるの?」
その俺の質問に対しファーリスは
「対等に話せる、扱ってくれる人を探していたからさ」
「どうゆうこと?」
「私はラメル騎士団団長という地位にいるためか、貴族には相手にされず、市民や部下は頭を下げられてしまう。君のように、タメ口で話してくれる友人を探していた」
友人...か。
かつては俺にもあったものだ。今はない。
「ところで、何かこのラメル王国について質問はあるかい?」
「この国のこと全て」
と俺は即答した。ファーリスは間を空け、話した
「まず、この国には、凡人しかいない。私も王もこの国にいる人皆だ」
「流石にわかる。種族ごとに国をつくってるんだろ?」
「ああ。その中でも最弱国家と呼ばれる国がここラメル王国だ」
驚くこともなかった。ここには何の個性もない、能力だけがある種族だ。能力は他の種族全てに与えられている。故にアドバンテージが存在しない種族なのだ。逆に最弱じゃないほうが不思議だ。
ファーリスは続けて語る
「ラメル王国の成り立ちはわかるかい?」
「いいや、全く。まさか、もとから地下にあったとか?」
「流石にそれはないよ。もとは地上にあったんだ。ただ、この国の領土がこの国だけになったとき、現在の王であり、女王様の父、アルファダ・アルムルクが座標移動の能力により、地上にあった国を地下に移動させたのだ」
開いた口が塞がらないとはこのことか。能力ってエグいなーと改めて思った。
思い出したことを質問した。
「ちなみにあの落とし穴はどういうつくりなの?」
「あれは、普通の落とし穴とおなじで、網をかけて、砂で埋めて隠して、40kg以上ある生物が上を通るというしくみ。あとは、落ちるのを見張る騎士が私達に報告したから、君を騎士が囲ってたわけさ」
意外にも原始的な方法で驚いた。
「じゃ、じゃあ入り口はないのか?」
「入り口はこの国の最北端と最南端にある。簡単に言えば、この城の後ろと君が落ちたところの後ろだね。どちらの入り口にも罠があるし、騎士が監視をしている」
まさに北と韓国の国境線並の防衛力である。
「つまり、俺みたいなケースは珍しいのか...」
「そうだね。実際外からこの国に入った人を見たのは初めてだ」
「それも含めて感謝っす!ファーリス団長!」
と俺は半泣きになりながら、ファーリスに頭を下げ、言った。
「おいおい、頭なんて下げる必要はないさ」
対応もイケメンなようだ。
「そうだ、君は王戦に参加する気はないかい?」
「おう..せん?」
「ラメル王国の次期王を決める戦いさ。現在の王、アルファダ・アルムルクはひと月前に病で倒れ、いつ亡くなられるかもわからない状況だからね。その王戦が明日のラメルコロシアムにて行われる」
「なるほど。どういう大会だ?」
「能力使用okで木刀を用いて戦うというものさ。この国で一番強いものを王にすることで、統制力を強くするという意図があるそうだ。参加費は無料だけど、能力を使う戦いだから、死ぬ可能性もある...」
死ぬか...
その言葉に恐怖を感じた。が、そんなのこの世界に来てから覚悟していた。
「いいぜ。乗った」
目標は高く
『優勝して、いっちょ最弱国家の王様になる』
こんにちは!皇夜空です。
戦闘は次回になりそうです。2話の後書きを見た方すみませんでした!
次回は明日投稿する予定です。
次回予告 能力者