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「ひゃああああぁぁぁぁ!!!!!」


 私は絶叫しながら混乱していた。


 状況を簡単に説明しよう。

 私は今、落ちている。穴に落ちた訳ではなく、上空から地上に向かって落ちているのだ。


 どうしてこうなったの!?いや、それよりも……。


「絶対に死ぬうぅぅ!!考えるよりも死ぬよおぉぉ!!」


 仰向けになりながら地上に向かって落下して行く。

 下を見ようと何とか身体をよじり、地上に顔を向けると、今の状況を忘れるぐらいのとても綺麗な景色が広がっていた。

 大きい時計台に賑わう街、街に囲まれ歴史を感じさせながらそびえ立つ大きな城……そして大きな館。


 その館は私の真下にあり、その館の庭には何人かお茶をしていたようで、椅子から立ち上がり悲鳴をあげている者、急いだ様に何かを口ずさむ者、目を丸くする者などそれぞれだ。

 ただ……目を丸くする者の中に私に良く似たふんわりとした蜂蜜色の髪に強気な翠色の瞳をした可愛く女の子が桃色のドレスを着て佇んでいた。


 なんかあの女の子……いや、この人達どっかで見た事が……でも今は何も考えたくない。


 恐怖のあまり考えるのをやめた。

 私は意識が薄らいでいく中、何かが優しく包み込んできた様な気がした。













「ん……んー」


 とても良い香りが私の鼻をくすぐる。

 それにつられてゆっくりと目を覚ました。

 そこには知らない天井があり、起き上がって見回すと、豪華な家具にフカフカなベッドがあった。


「ここ……どこ?」


 ちょっと待って。状況がわからない。

 えーと……確か空から落下してたのは覚えてる。

 その前は……何処に居たんだっけ?何をしてたっけ?

 ……記憶がない。

 記憶はないけど名前とかは覚えてる。


 名前は中岡莉亜。歳は28歳で……。


 他にも思い出そうとしたが、頭が痛くなる一方だった。

 まるで何かを思い出すのを嫌がる様に。


 痛い……駄目だ。知識はあるのに記憶がない。

 何か関連するものはないの?

 服に何か入ってたり……。


 目を服に移すと可愛らしい服に着替えられて居た。


 可愛らしいものに着替えられてる。私、仕事用の服を着てた筈なんだけど?

 ネグリジェっていうのかな?28歳でこれはきつい。

 誰がこんなチョイスをしたのよ。他には?


「はっ!スマホ、スマホがあるじゃない!」


 スマホなら何か分かる筈と辺りを見回した。

 机の上にあったので、ベッドから出てスマホに手を伸ばした所である事に気づいた。


 あれ……手が縮んでる?


 そう、其処にはなんと5歳くらいの可愛い手があったのだ。


 急いで真っ暗になっているスマホ画面を見ると幼い頃の私が写って居た。

 ふわふわとした蜂蜜色の髪に強気な翠色の瞳……昔のまんまだ。


 幼くなってる……夢、とか?


 恐る恐る頰を引っ張ってみるも普通に痛かった。









 結果ーー




 脳内処理が出来なくなった私は窓から(幸い一階でした)逃げ出しました。


 いや、だって目が覚めたら豪華な部屋が待ち構えてるし、いきなり幼くなってるとかなくない?

 もしかして外に出たら、これは夢でしたって事があると思うじゃない。


 私は庭を裸足で走る。

 ただ、幼くなった所為か歩幅が小さくなり、体力がなくなったのですぐに疲れた。しかも、何故か妙に熱い。風は涼しいのに。


「あっっ!」


 足がもつれて、転びそうになる。

 目を瞑り、痛みを覚悟した時、誰かが私を受け止めた。


「あれ?フィアじゃないか。こんな所でどうしたんだい?しかも裸足で……」


 目を開け、顔を確認すると私と髪と瞳の色は同じだが、強気な瞳と反対で優しそうな瞳をした、今の私の歳より少し上の男の子が心配しながら怪訝な顔をしていた。


 フィアって誰?聞いた事がある様な……。


 私が考えていると彼は控えめに、伺いながら聞いてきた。


「もしかして……一昨日空から落ちてきた女の子だったり?」


 私はその言葉を聞いて男の子との密着状態から思いっきり退いた。


「当たった?」


 男の子は楽しそうに笑う。


 に、逃げよう……。


 そう思った時だった。


「お兄様!私に良く似た女の子を見なかった?」


 そう、私に良く似た女の子が走ってきたのだ。


 声まで似てるよ。


「ああ、丁度捕まえた所だよ」

「ありがとう!ご飯を持ってったら居なかったから探してたの」


 女の子は私に可愛らしい笑顔で近付いてくる。

 私が逃げようと後ろを振り返ると何かにぶつかった。


「何故逃げようとしている」


 ひっっっ!!


 威厳のある佇まいに真っ白い髪。翠の瞳に強い意志を感じる。


 私は其処に座り込んで悟った。


 逃げられない。


 目には沢山の涙が溜まり、泣く寸前だった。


「あらあら、アレク?泣かせちゃ駄目じゃない」


 女の子を追ってきた様で侍女らしき人達と一緒に茶色い瞳にふんわりとした蜂蜜色の髪をまとめた女の人が来た。


「怖がらせてごめんなさいね。大丈夫?熱もあったから辛いでしょう?」


 ああ、だから熱かったのか。


 私はそう思いながら限界がきたのか倒れる様にして眠った。

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