農地改革と金属
遅くなりました。すいません。
僕がここに来てから1ヶ月経った。
その間、僕はこの世界、そして自国の状態とかを調べ、必要なことをまとめようとした。
結局、大陸と周辺国のこととか、自国の技術レベル、あと特殊な技能について知ることができた。その情報を軽くまとめると…
日ノ本は周辺国とは諍いが絶えない。
大陸からは蛮族扱いが常。
鬼道という特殊な技能があり、火、水、風、光、土があるが、風は今の所使い道がさっぱり。
ってことだけ。いや正直、目下最も重要なのは食料。
「農業技術が低すぎるぅぅぅぅぅ!いや、予想はしてたけどもね!」
「せ、聖上…何を叫んで…」
ん、伊津根か…どうしたもこうしたもないんだよ…
「は、はあ…」
「農業技術が低い。低すぎる。そこで僕からいくつか指示出すからそれを実行してください」
「はっ」
伊津根は東に向かって膝をつき、頭を垂れる。
…なんでこう頭を垂れられるのか…僕は何もしていない。おそらく君主たる者だから仕方ないとも割り切ってはいるけど、それでもやっぱり慣れない。
「まずは肥料、人の糞尿を村ごとに一箇所に集約し堆肥をつくってください。次に鉄の改良。そんでもって…」
ダラダラと必要そうなことは粗方言った。
とは言え、知識がない人間に糞尿が肥料になって野菜よく育つよーなんて言っても理解できようもない。なので僕は適当に丸め込み、飲み込ませて伊津根の頭のハテナマークを消してやった。
「鉄は鬼道を利用する。まずは溶鉱炉だな。まずは図を…」
ここでふと、あることに気づく。紙と筆がない。1ヶ月もいながらこれに気づかないとは…
「の前に紙とか筆だな…あと文字もか…」
「紙や筆ならばきいたことがあります。筆は一応あります。聖上、こちらをお使いください。墨はこちらを」
そう言われて渡された筆と墨(というか炭を水に溶かしたらしいもの)を渡された。紙の代わりに木の板にフリーハンドで半地下竪穴炉の図を描く。
中に何をいれてどうするかなどを伝えると伊津根は、そのように、と答えて猛スピードで宮を出て行った。なんかあいつの目がキラキラしてたな…
「ともかく紙か…そーいやこの服、麻だよな…いけるかも?」
と言って、適当な数の麻クズを集め、釜で煮て、繊維取り出して軽くすいてみた。
「…物足りないけどとりあえずいいか。あとは鉄か…オモイカネさん」
「ん?なんじゃ?」
僕はオモイカネがどっかいるかな程度の感覚で名前を呼んだらまさか背後から出てきたので驚いた。ま、まぁいい。
「製鉄、というか金属全般の精錬を行いたいんですが、確か金属繋がりで金山彦って神様いましたよね?呼ぶことってできますか?」
「お前、金山彦を知っとるのか。最近はあんまり祀られんからしょんぼりしとるとは思うが…呼び出せんことは無いぞ。まっちょれ」
そう言ってオモイカネは虚空に向かって話し出す。
「そーそー、金さん。ほんじゃたのんます…すぐるぞ」
え、そんなすぐ来るモンなの…
「ま、元気はええことじゃ」
神様が言うか…
「うーいじーさんいるかー?」
⁈誰やねん!なにこの風土に合わん金髪の鬼…
「誰とは失礼な!俺こそが金属の神様!金山彦であーる!崇めやがれこの野郎!」
「フランクすぎんわ!見ろ、衛兵が気絶してるぞ!大丈夫か!」
んあーと金山彦はボリボリ頭をかいて面倒そうな顔をする。
「なぁじーさん…こんなんで大丈夫なのかよ?」
「まぁ、お主が思うよりは真面目じゃろ」
そう言ってオモイカネは僕の作った紙に目をやった。
思うよりって…思うよりって…
「ま、俺っちが来たからには金属はおまかせよ!」
あ、さいですか…
「なら、現状の溶鉱炉よりもさらに高性能な炉の作り方を教えてください」
「あーそんなことか…わかった。紙と筆は?」
「紙は一枚しかありませんがこれを。あと筆です」
はいはいどうもーっと金さんこと、金山彦はスラスラと図を描く。
「とりあえずこれ作ればなんとかなんだろ。あと…お前なに作る気?ここまで加工できりゃあ金属はいくらでも薄くできる。で、ズバリその先は?」
おや、勘が鋭い。まぁいいか。
「まだお話しできません。完全に固まってませんから」
あっそ。と金山彦はアッサリ退いた。
こいつはこいつで一応神様なんだなあとは思う。一応仕事はしてるし。
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