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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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八十五日目 ネベル王国

 レイジュをモフりつつ街道を進む。勿論後ろにはメイド達がズラリ。


 相変わらずカオスな大名行列みたいなことになっている。


「ふぁあ」

『寝不足?』

「いや、ちゃんと寝たと思うんだけど」


 単純に移動だけをするってのに飽きてきたのかな。その時、俺の耳に水の音が聞こえてきた。


「この辺って川あったっけ?」

「なかったと思うが?」

「水の音がする。それも結構な水量だな」

「行ってみるか?」

「いや、別にわざわざ進路変えてまで見に行く必要はないよ」


 ちょっと気になるってだけで。


 でも確かにおかしいこの辺は寧ろ乾燥している地域のはずだから小川とかは少ないはずだし最近雨も降っていない。


 誰かが魔法で出しているにしては凄い水量だ。


 ただ単純に魔力だけだったらソウル並みはあるぞ。


「ゴーグルの反応もないし……なんなんだ」


 一回に気になるとずっときになる質なんだよな俺。


「どうせそろそろ休憩だからいいんじゃないですか?」

「まぁ、それもそうか」


 そろそろ一回馬を休ませないとな。


「休憩ー」


 御者台から叫ぶと馬の足音が止まった。皆が馬の世話等をしている時に俺は水の音のする方へ進む。


 ……特に目だったものはないな?


【っ、上よ!】

「⁉」


 咄嗟にリリスを構えると馬のような魔物が覆い被さるように降ってきた。水の音はこいつからする。


「ケルピーだ」


 離れて確認するとA級魔物のケルピーだった。ケルピーは水を纏った馬のような魔物で頭が非常に良く力が強い。


 また縄張り意識も高いから入り込むと相当危険だ。


 水魔法が得意で、簡単な傷なら直ぐに自己再生してしまうしぶとさを持ち、体力もあるので中々押しきるのは難しい。


「それが普通の冒険者なら、だけど」


 リリスを構えるとケルピーも唸るように前足で地面をえぐる。


「こいよ。俺が相手だ」

「ブルルルルル!」


 鼻先を一瞬リリスで小突いてから右に踏み込む。背が低いから死角になったところから狙える。


 その状態から思いっきりリリスを振り抜く。


「ギャン⁉」


 首の付け根に風穴を開けて死んだ。ゆっくりと倒れ込んでからドクドクと血が遅れて流れ出す。


 とりあえず収納しとくか。


 ………? 視線を感じる。


「主ー‼ 出発しますよー」

「わかった‼」


 なんだこの違和感……?


 不思議な感覚を覚えながら皆のところへ戻った。


「ケルピーでしたか」

「うん。一発で仕留めたけど」

「流石だな……」


 カラカラと車輪の音が響く馬車内に寝転がりながら溜め息をつく。


「なんでかな、こう、なんかモヤモヤする」

「トイレですか」

「いやそういうんじゃなくて」


 大事なことを忘れているような?


 まぁでも思い出せないくらいだからそこまで重要ではないんだろうけど………


 孤児院の子供たちからもらったビー玉のような玩具を少し改造する。


「それなんです?」

「特に意味はないおもちゃ」


 ビー玉の部分を外して型を入れ換えて軽く溶接、金具を取り付けて………


「なんか凄い面倒くさいことやってますね」

「さっきのあれだと強度が薄いからな」


 魔法をかけて固くする。


「ストラップ出来た♪」


 中々の出来映えだ。青いビー玉のようなものを中心に星の絵が散らばるようなデザインの金色の輪っかをはめた。


 ストラップは鞄につけておこう。


 ネベル国に着いたらとりあえず爺さん(ネベル王)に会いに行って……その間にこっちの拠点に皆は行ってもらって、飯の準備も頼んどくか。


「じゃあ皆は直接拠点に行ってくれ。俺は中に入って直ぐにじっちゃんのとこ行ってくるから」

「承知しました。橋の近くで下ろせばいいですか」

「ああ。頼むよ」


 御者のライトにそう告げてネベル国の首都へ。この町は周辺を塀で囲まれていたいままでの町とは違い、壁がなく割りとどこからでも入れる。


 原則街道から入らなきゃいけないけど。


 普通は魔物の侵入を考えて壁がなければいけないんだがこの街の防衛システムがそれをしなくてもいいようになっている。


 何故ならこの町は湖の上に建っているからだ。


 湖のちょうどど真ん中に町があるのに波とかの影響は大丈夫か、っていうのは心配要らない。


 町自体がかなり水位より高い場所に作られているから津波でもそれほど被害は受けない。


 湖の水を中心の噴水のところで汲み上げて全ての地区に水を届ける。どの地区にも水路があって歩いていくこともできるが小舟を使えばショートカットできる。


 馬車は町の中心部には入れない構造になっていて、そこから先は船に荷物を置くことになる。俺たちの拠点は馬車の使える敷地だからいいけど。


 上水と下水がちゃんと整備されていて、町中の水路の水と蛇口から出てくる水は別物だ。


 異物が混入したりしないようにちゃんとした衛生環境のもと家庭に届けられている。


 この街の素晴らしい衛生環境は国王のじっちゃんが潔癖症なのが原因だ。まぁ、そこまで酷いって訳じゃないんだが。


 俺が上下水道の整備を手伝ったっていうのもあるけどね。


 町のなかに行くための橋の前で荷物検査やらのチェックが入る。


「身分証明出来るものは」

「これでいいですか?」

「は、白黒殿でしたか。お仕事ですか?」

「はい」


 一ヶ月か二ヶ月くらいはここに世話になるだろう。


 持ち物検査を終え、町の中心にある城へ向かう。この城の中心に件の水を運ぶ噴水があるんだ。


 跳ね橋の前でライトに降ろしてもらってピネと二人で(リリスいれるなら三人だけど)王城に向かって歩く。


 じっちゃん元気かな。戦争以来画面越しでしか会ってないな。


【よくそんな渾名が許されるわよね……】


 それ、俺も思う。


「止まれ。貴様何者だ。面会の予定は取り付けてあるか?」

「いえ、面会の予定はしていないです」

「ではそこに名前を書いて待て。一ヶ月程後に面会するかどうか国王様がお決めになる」


 長っ⁉


 一ヶ月経ってたらもうこの国出てるよ俺。


「いや、自分先にあっておかないと仕事にならないんですよ」


 なんの情報が欲しいとか先に聞いとかないと仕入れるものも仕入れられない。


「平民風情が。国王様にお目通しが叶うチャンスがあるだけ幸運だと思え」

「そういわれても……」


 どうしよう。あ、俺の名前を出せば。


「白黒って知ってます?」

「ハッコク? なんだそれは。食べ物か?」


 え? マジでこの人俺のこと知らないの?


 そういやこの人見たことないな。


「えっと、騎士様はここに配属されてどれくらいでしょうか?」

「つい最近だ。デントルの田舎から出てきたものではあるがこれでも貴族だぞ」

「あー、そういうことね……」


 デントルって俺も取引してない小国だ。


 知らなくても無理はないかも。


「おい、新入り‼」

「はっ‼」

「お前白黒殿に失礼なことしてないか⁉」

「……は?」


 あ、この人俺のせいで怒られそう。可哀想だからフォローしとくか。


「いえ、大丈夫ですよ。自分の知名度もまだまだってことですね。ハハハ」

「申し訳ない白黒殿。新人教育ができておらず」

「全然気にすることはありませんし、彼を叱らないでやってくださいね。自分がひょろっちいだけですので」

「そんな、白黒殿がひょろっちいならば我々の存在など紙も同然です」


 何故か自分を自分で貶しつつ社交辞令のような挨拶をかわす。


「今すぐ面会を取り付けてきますので。おい、新入り。この方を案内してさしあげろ」


 別にそこまで怒ってやらなくてもいいのに……。

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