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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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七十三日目 道がなければ作ってしまえ?

「あのさ……念のために確認しときたいんだけど」

「?」

「俺のことずっと男だと思ってた?」

「???」


 あ、混乱してるな。


「おとこじゃなかったらなんなの……?」

「……俺は女だ。最初からな」

「えええええええええ⁉」


 男じゃなかったらなんなのって質問おかしいだろ。あれか、オネェです、みたいな反応期待してんのか。


「それも言ってなかったのか?」

「いや、普通言わないだろ」

「お主は紛らわしいからな」

「紛らわしいって……まぁ、自覚はしてるし止める気もないけど」


 ゼインが俺のことをじっと見て顎に手を当てている。


「なに」

「いや、顔も整っているし体つきも悪くない。髪も見た目によらずきちんと手入れされている」

「見た目によらずとか言うな」

「それなりの格好をして化粧をすれば化けるのではないか?」

「イヤイヤイヤイヤ、無理。マジでそれは無理。ありえない」


 俺は絶対にやだ。


「何故だ?」

「嫌なもんは嫌なの。はい、この話終わり。で、なんのはなしだっけ?」

「……戦果にみあう報酬の話だ」

「ああ、そうだった。で、確か……」

「爵位と勲章と総司令官だ」

「要らん。寧ろ邪魔」


 ゴトリ、と机の上に銀色の水筒がおかれる。さっきのだ。


「………」


 ゼインはそれを右へ左へと揺らす。それを自然と目で追ってしまう自分が憎い。


「俺で遊ぶな‼」

「まぁまぁ、落ち着け。ほしくないのか?」

「ゥグッ………」


 欲しい、と反射的に言いかけた。危ない危ない。


「何を言われようと全部返品する」

「いいのか? これも返品して」

「………いい!」

「いいんだな? しまうぞ? しまっちゃうぞ?」


 完全に楽しんでやがる。


 こいつどこかSっ気があるんだよな……


 人を弄って遊ぶの大好きだし。


「それ、なんなの?」

「「………」」


 唐突に横から投じられる疑問の声。


 なんなのって……俺の主食ですけど。


 ………あ。俺、自分の種族のこと話してないかも。うん。話してないわ。


「まさかこれも?」

「言ってない」

「お主隠しごと多すぎるだろう」

「だって聞かれないもーん」


 開き直るしかないだろう。


「全く……イベル。こいつはな、吸血鬼だ」

「きゅうけつき……⁉」

「ああ。だが死人が生まれ変わるヴァンパイアとは違い、希少種族である鬼族の一人。人間の数十倍の魔力と身体能力を持っているが、その代償として他人の血を飲まなければ餓死してしまう特性がある」


 なんか突然詳しいなお前? 多分調べたんだろう。


「それと、長命で30歳ほどで成人し、そこから300~400年程の寿命のなかで老いることはない。その若さを保つ特性のせいで他の老いに恐れる長命種に研究材料として狙われることも少なくはない。間違ってるか?」

「……あってるよ」

「じゃあブランもねらわれて?」

「色んな所から恨み買いすぎて何で襲われるのか正直俺もわかってないけどね。残念ながらこの世に残っている吸血鬼は俺とエルヴィンだけだ」


 後は多分死んだ。情報が一切上がってこないんだから。


 どこかの人の来ない場所でひっそりと暮らしていきたいと思っても、血がなければ餓死してしまう為にそれも難しい。


 だからどんなに巧妙に隠していても吸血鬼は町中で暮らすしかない。それを俺が見つけられないはずもない。


「まぁ、鬼族自体が色々あるからな……。俺みたいに長命なのもいればたった十年で寿命を終える種族もいる。そんな変わったやつらのなかで血を吸うってのはあんまり珍しいことじゃないんじゃないかな」


 俺はまだいい。なったのはたった一年ちょっとだ。


 一番辛いのはエルヴィン。生まれてから直ぐに追われる運命にあり、10歳で誘拐されて20年間奴隷だった。一体どれ程辛い時間を過ごしてきたのか……


「俺は人間から直接吸血鬼になったからまだ大分受け止めれてはいるけど、エルヴィンはキツかっただろうな……長命な分余計に」

「長命ならレクスほど年が離れていても問題ないだろう」

「突然その話しまた持ち込むの止めてくれない⁉」


 お前もそれでいいのかよ⁉


「そもそもレクスは王位継承権一位だろ。それなりの血筋の人じゃないと誰も納得しないに決まってるだろう」

「ああ、それは問題ない。レクスがお主に熱烈なアピールをしていることは町中に知れ渡っているからな」


 それもそうだったー!


 いや、でも普通に考えて無理だろ。


 権力の問題もあるし、俺には婚約者がいる。そのへんどうするつもりだよ?


「なに、権力の方はいまから爵位を授ける上、ソウル殿とエルヴィン殿も結婚すればいい」

「は? いや、一妻多夫って認められてんの?」

「いいや? 前例はない」

「え、じゃあなに言ってんの」

「前例がなければ作ってしまえばいいだけのこと」


 なにその破天荒作戦⁉


 道がなければ作ってしまえ的な⁉


「無いだろそれは」

「無いか? なに、そういう法を作ってしまえばいい。今のうちに作っておくとしよう」

「作らなくていいから!」


 無駄すぎるよその法律!


 弁護士が勉強するとき『うわぁ……』ってなるやん‼


「ブラン……もてもて?」

「どこで覚えてきたんだそんな言葉」

「そうだぞ? こやつは中々人気が高くてな―――」

「変なこと吹き込むなや」


 頭をつかんで止めさせた。


 悪ふざけがすぎたみたいな顔してるし、よしとしてやろう。


「で? それだけじゃないだろ。お前が直接来るってことは仕事の用件もある筈だ」

「今は休業中だろう? ちゃんと情報は集めているのか?」

「世界中から集めてるよ」


 今日もちゃんと頭に叩き込んできたしな。


「そうか………ならば問おう。バーパルからの塩が値上がりしている。そのわけは?」

「それなら金貨20。上乗せ有りでな」

「わかった」


 金貨20と言った瞬間にイベルが目を丸くしてこっちを見てきた。


「たかい」

「そうだろ? もっと安くしろと言ってくれ」

「うっせ。嫌なら売らんぞ」


 まぁいい。確かそれは調べたから。


「えっと……表向きは海の治安が悪くなったからだと言っていたな。海賊が増えたと」

「嘘なのか?」

「全部嘘って訳でもない。だが、対処できるくらいのものだ。戦闘力もそれほどないから節制を解除してない俺でも全滅させれるくらいだ」


 騎士団が派遣されれば倒せるレベルだな。そこら辺の衛兵じゃキツいだろうけど。


「では、本当のところは?」

「潮の流れの変化、それと………」


 手を出す。


「はぁ、いくらだ」

「50」

「いいだろう」

「毎度」


 やっぱり王族相手だと交渉が楽でいいわ。


「何故かって言うとだな。海にでた船が何隻か謎の消失を遂げるっていう話らしいんだ」


 勿論ちゃんと調べあげている。噂程度で金はもらわんさ。


「で、調べてみたところ。なーんとクラーケンが海底に住み着き始めたみたいであの辺一帯がそいつの縄張りになっちまってな。手当たり次第襲われてるみたいだ」

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