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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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五十七日目 ゼイン

「じゅ、十分なんて誤差の範囲だって!」

「三時間以内に、と言ったじゃないですか」

「help!」

「何で突然流暢に英語なんですか」


 もしやられたら暴食の反動で動けないから殴られ放題だ。


 いや、自業自得なんだけどさ………


 喉? ああうん。ソウルに助けてもらいました、はい。


 血で喉が乾くのって本当に厄介だ。


「まぁでも今回はちゃんと働いていたのでよしとしましょう」

「マジで⁉」

「……お仕置きがほしいですか?」

「勘弁してくだせぇ……何卒、何卒御慈悲を……」

「なんのネタですか、それ」


 呆れられましたよ。はい。


「それより、怪我はないですか」

「あっても直ぐ治るって」


 暴食を使っている時は自然回復の能力も三倍になるからガンガン治る。本当にデメリットが大きい分結構便利だよなぁ。


 便利なやつだよなってよく言われてたしなぁ………。


 ん? 誰にだっけ………。最近物忘れが激しすぎて恐い。


「とりあえず、ウィルドーズ王に報告しに行きますよ」

「えー……」

「誰のせいでこうなってるか思い出してくださいよ?」

「さーせんっしたー!」


 この人には口喧嘩では一生勝てない気がする。









「おお、来たか。報告は上がっておるが、白い服を着た異様な男とはやはりお主だったか」

「白い服を着た異様な男って………」


 ちょっと突っ込みたいところが多すぎるかな?


「それで、今回はなんだったんだ?」

「オークの大量発生だった。あれでもオークって結構魔物では強い方だから周辺の動物や魔物が棲みかを追われて、しかもオーク達も子種を探して出てきたもんだから村が壊滅的な被害に遭ったって感じだな」


 地図を取り出して広げ、山とウィルドーズを一直線で結ぶ。


「オーク達は真っ直ぐここに向かって進行してきた。通りにあったステア村と見てないけど多分コクストレイ村は完全にやられてると思う」

「そういうことか………ステアは見てきたのだろう?」

「遺体は数人回収した。後で引き渡す。が、地面になにかを引き摺った痕や子供と思われる人間の指を見付けた。………女性の方は、ほぼ確実に手遅れだろう」


 ゼイン・アルト・ウィルドーズ(この国の王)は額に手を当てて、


「そうか……」


 小さく呟いた。


「お主はオークと遭遇したのか?」

「ああ。思いっきり嫌らしい目で見られたよ。まぁ、あの三人で吹き飛ばしてたけど」

「………だろうな」


 オークの方が同情の目を向けられるのも無理はないよな。


「オークの集落の場所は?」

「まだハッキリとは把握していない。多分この森なんだろうけど」

「この街に真っ直ぐ来ているのだから当然か……」

「俺は内通者がいるかも、とは思うけどね」

「……なに?」


 お、このクッキー美味しい。もうちょっと甘い方が好みだけど。


 ゼインはこっちをじっと見てくる。俺は無言で手を出す。


「はぁ………30でどうだ」

「上乗せは?」

「構わん」

「毎度」


 金貨30枚とメモ帳に書き、前のページを捲る。


「最近妙な動きが見えてなぁ。どうも俺の確認したところじゃ他種族が絡んでる。そこに情報を横流ししてるのがあの豚男爵だ」

「お主、その言い方は止せと」

「通じるなら良いじゃん? ま、そういうことだ」

「その話を信じるとしても証拠はないだろう」

「あるんだな、これが」


 俺が直接確認した案件だ。証拠を撮っておかない筈がない。


「なに?」

「あるんだよ。それ見せても良いけどもっと内容踏み込むからプラス50は欲しいかな。ちょっと危険な橋を渡ったからね」

「はぁ………いいだろう」


 よし、これで金貨80枚。


「これが証拠の写真だ。ちゃんと偽造していないか確認してもらえばわかるだろうけど」

「……確かに、イベリコブ男爵だ」

「周辺の地図と騎士団の遠征予定表を横流ししてたな。だから今回俺が村に直接行くしかなかったんだけど」


 紅茶、もっと砂糖入れようかな………


 自分で持ってきた角砂糖を紅茶にドボン。


「お主、いつも入れすぎだろう。追加しないようにと砂糖は下がらせてあるのというのに」

「え? 急に砂糖坪なくなったと思ったらそういうことだったのか」


 なるほどなるほど。俺の健康のためだったんだな。


「でも俺は砂糖をいれる」

「わかったから続けろ」

「はいよ」


 俺は証拠写真を数枚追加して、


「これ、なーんだ?」


 ゼインの眼前につき出す。


「まさか……獣人か」

「ちょっと惜しい。多分違う」

「確証はないんだな?」

「ないけど、この人は獣人と魔族のハーフじゃないかな。訛りがそんな感じだったし何より臭いがね」


 これでも一年情報屋やってるんだ。言葉の訛りでどの辺の出身か大抵わかる。


「それと、もうひとつ」


 また手を出す。


「いくらだ」

「1ウルク」

「はぁ………いいだろう」


 言質取った。


「毎度。で、この魔族さん。恐らく四騎士の一人の東を守る神火のウィリーじゃないかな。魔物を誘導する何かしらのスキルを持ってる。俺も知らないから多分種族スキルかなにかじゃないかな?」

「四騎士か………」

「そ。で、真っ直ぐにオークの軍団をこっちに攻めさせた」

「根拠は」

「オークが真っ直ぐ進んできたこと。普通に考えて一番人が集まっているここを狙うのは当然だとしてもそれよりも近い、もっと襲いやすい村ならあと少なくとも5つはある」


 その村が襲われていないことは確認済みだ。


 オークはあまり頭がよくないから人がいるところを順番に襲うはず。そう考えるとわざわざ周辺からジワジワと行動範囲を広げるわけではなく首都である壁に囲まれた町を選択するはずがない。


 頭が良いやつがいたらまた話は別なのかもしれないけど俺のドローンには反応はなかった。


「戦争が、始まるかもしれない」

「…………」


 力のある町を襲ったのが良い証拠だ。これで失敗したとあっちに連絡が入っても無駄だろう。多分戦争を吹っ掛けられる。


「ブラック」

「ん?」

「あちらの情報はあるか」

「あるっちゃあるけど戦争とはほぼ関係なさそうなものしかないな」

「そうか………」


 ゼインは胸ポケットから煙草を取り出してくわえる。


「奥さんに叱られるぞ? 禁煙中じゃなかったっけ」

「こんなときに吸わないでいられるか」

「ごもっともで」


 勝手に怒られてりゃ良いけどさ。


 敵国が侵攻してくるなんて頭が痛い話だろうな。特に国王からすれば。


「………ブラック」

「戦争ならお断りだぞ」

「わかっている。どうしたら良いか助言してくれないか」

「金はもらうぞ」

「10ウルク出そう」

「乗った」


 また、面倒なことが始まりそうだ。

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