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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 二冊目
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四十四日目 シャオ

 月光の鞘は龍鱗製にした。龍鱗っていうのは文字通り龍の鱗が使われている。これどこで見つけたって?


 かなり上空飛んでた龍に魔法で近づいてこっそりいただきました。多分気づかれてない。


 鱗剥がしたら気付くんじゃないかと一瞬思ったけどあの龍達からしてみればあれ髪の毛みたいなもんで毎日生えかわるからバレなかった。お陰様で結構な量を調達できた。


 柄の方も作成中。これは半分はショップで購入した。


 鍔の形とかちょっと拘ってみた。無駄に綺麗になっている。


「出来た!」


 染色してないからほぼほぼ真っ白な刀の出来上がり。


 鍔が金色なくらいで後は全部白い。もらってきた龍鱗も白龍のやつだったし。


【綺麗じゃない】

「だろ? なかなか上手く出来たと思うぜ」


 自画自賛だけど。こいつは今まで作った中でもトップレベルの物が出来たと思う。


 中々に上機嫌な俺は一階に降りる。ちょうど昼時だったし。因みにソウル達は備品の調達にいっている。


 ソウルは基本魔法で戦うんだけど飛び道具も使うから買い出しは必須なんだよね。金もあるし。


 ついでに言えばライトも飛び道具を扱うから二人でいってしまっている。それに、ピネは『刀作ってるの見ても面白くないもの』って。それについていった。


 おい。お前ら誰と契約してるんだよ。


「あ、ブラン。お昼?」

「ああ。頼める?」

「お任せあれ。ちょっと待っててね」


 俺の二つ年下の女の子、ここを仕切ってるおばさんの娘で名前はシャオ。その子がくるくると店を走り回る。


 俺のこと男の、しかも年下だと勘違いした子だ。まぁ、いいけどさ……紛らわしいのわかってるし。しかもやめる気はないし。


「はーい、蹄鉄スペシャルでーす」

「え、そんな名前だった?」

「今つけたの。どう?」

「んー、なんか定食って感じの名前じゃないかな」

「あはは、確かにー」


 そう言って俺の前に座る。二つお盆を持ってるかと思ったら自分の分だったのか。


「お客さんいるけど休んで大丈夫?」

「呼ばれてないから大丈夫だって。ねぇ、今日はソウルさんいないの? ライトさんも」

「ああ、あの二人は同じような武器を使うからな。一緒にそれの調達だよ」

「へー。あれ? そんなのあったっけ?」

「いや、さっき完成したんだ。一応サブの武器かな」


 早速月光を見つけたシャオが質問してきたのでそう答える。すると珍しい形をしているからか目をキラキラと光らせ始めた。


 この子意外と武器好きなんだよね。扱えないから眺めるだけらしいけど。


「見る?」

「いいの?」

「刃物だしよく切れるから気を付けてね」


 開けたときに刃がシャオに向かないようにひっくり返して渡す。


「見た目より軽いんだね」

「それはギリギリまで刃を薄くしてあるんだ。重さは寧ろ邪魔になる形状してるから普通の両手剣よりは大分軽いと思うよ。片手でも使えるし、切るのに力はあまり要らないんだ」

「どういうこと?」

「んー、とりあえず切れ味は凄いよ」


 それにしても美味いな。これ。豚? 少なくとも芋虫ではない、と願いたい。


「これ、なんの肉?」

「オークだよ」

「ああ、うん………そんな気はしてた……」


 ここ、魔物の肉ばっかりだよな。いいけどさ。しかも美味いのが腹立つ。


 どうでもいい話をしながら昼食を食べ終え、サービスでもらったゼリーを食べる。俺のがリンゴみたいなやつでシャオのがブドウみたいなやつ。


 ちょっとイチゴっぽい香りがするんだよね、このリンゴもどき。美味しいけど。


「あ、リンゴのゼリーだ。一口頂戴♪」

「はいはい」


 そんなどうでも良い話をしながらどうでも良いこと考えていたら、なにかが張り付くような緊張感が伝わってきた。


「……シャオ。なにか来る」

「え?」


 これは………殺気だ。ほんの僅かなものだけど、俺にはわかる。日本で家族の気配を感じ取って逃げ回ってたからそういうのには人一倍敏感なんだ。


 何が起こるかわからないからいつでも抜けるように刀の柄に手を置いておく。


 怪しまれるのも困るからわざとゼリーをただ食べてるように装う。すると、入り口からカランコロン、とベルの音がした。


「いらっしゃい………⁉」


 首元にナイフが突き付けられているかのような緊張感に怖気がする。これが、本当の殺気…………。


 狙われないようにしなければいけないと思っていたがシャオが危険に晒されるのは不味い。俺も同等の気配を放つ。


 普段は隠しているけど、俺はスイッチさえ入れば直ぐに切り替えができる。こんな恐ろしいものずっと出してられないしね。


「ほう………?」


 入り口から、感心したようなそれでいて嬉しそうな声が一瞬漏れた。うわぁ、冷や汗ヤバイ。


「ぶ、ブラン?」

「あ、ご、ごめん」


 殺気慣れしていない人にはキツいに決まってるよな。チラと目を向けると紅い目が頷いた。あっちも事を荒立てる気はないようだ。


 どちらからともなく気配を抑える。


「すまない。宿泊を頼みたいのだが」

「い、今すぐに! ブラン、その」

「ああ、俺は外に出てくるよ。昼も食べ終わったし。じゃ」


 シャオは聞きたそうな顔をしていたけど、俺はそのまま席を立って外に出る。すれ違ったとき、ポケットに一瞬違和感を感じた。


 ポケットのなかには紙が入っていて、走り書きで【龍の刻 中央広場】とだけ書かれていた。


 来いってことですよね………殺されないよね、俺?


 因みに。龍の刻っていうのは大体夜の7時頃を指す。午前零時から水、火、地、風、闇、光、時、空間、氷、炎、雷、幻でお昼まで。そこから先は虎、狗、鹿、猿、馬、鳥、龍、虫、魚、蛇、豹、狼だ。


 中々に覚えるの苦労したよ。


 午前は基本ルーンの種類、午後は獣人の種類だ。まぁ、これ以外にも一杯いるらしいけど。


 外に出たら出たで暇だな。散歩するか。


【訓練とかしないの】

「めんどいし………」

【はぁ……】


 あからさまなため息やめろ。


 道具屋に行ってみた。


 なんかファンタジーなものが一杯並んでる。


 ポーション各種は勿論、魔石を嵌めて使う水筒とか使用者のMPを吸って火をつけるライターとかいろいろあった。面白いな、これ。


 俺はいつも魔法で済ませちゃうからこういうのは作ったことなかったかな。必要ないけど今度つくってみよう。材料余ったら。


 矢筒を購入するためにレジへ。矢って手で投げても使えるし、意外と万能なんだよね。


 店主の顔をみて、絶句した。


「ん? どうかしたか」

「アレックスさんのご兄弟ですか」

「ああ、お客さんギルドの弟にあったことがあるのか」

「あ、お兄さんですか」

「双子の兄でロレクスだ」


 なんか危ない名前来たね⁉ 弟さんと名前くっつけたら腕時計のブランド名だよ‼


 本物ほぼみたことないけど。


 っていうかこの人、本当にアレックスさんにそっくりなんだけど。瓜二つだ。多分混ざられたら判らん。


 声と口調で別人だってわかったけど、町中であったら声かけれないな。

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