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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 二冊目
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四十一日目 金のなる木の魔物

 で、頃合いになったのでギルドへ行くことにした。


「な、なぁ、Fランク」

「ん?」

「お前、なんていうんだ?」

「名前? ブランかセドリックでいいよ」


 一応ブランが名前だけど。


「じゃあくっつけてブラックな!」

「お、おう」


 まぁ、確かにくっつけたらブラックだけども。


「俺はゼクス! いつか冒険者になるんだ。だからその時にブラックをパーティに入れてやってもいいぞ!」


 …………? ゼクス、ってどっかで………? まぁ、いいや。


「考えとこう。じゃあな」

「ブラック」

「ん?」

「………また、来るか?」

「おう」


 片手をあげて孤児院を出ると、外には既にレイジュ達が居た。


「ギルマス。暫くはジュースも禁止ですからね」

「え」

「これだけの重労働僕らにやらせたんだから当然です」

「なんだと………」


 別にやらなくてもいいって言ったやん。


 トレントを倒すだけ倒して全部放置していたと伝えたら律儀に討伐証明部位を集めてきてくれたらしい。いや、ポイント手に入ったから要らなくね?


 ソウルってそういうとこあるよなぁ。


「ほら、行きますよ」


 レイジュの荷台には大量の若枝の入ったかごがいくつも置かれていた。


 なんでもトレントの討伐証明部位はこれらしい。


 で、これをもっていったら。


「あら! あらあらあら⁉ これ全部トレントじゃない! しかもポイズン種まで大量に混ざってるじゃないの!」

「ポイズン種?」

「毒を吐くトレントよ。エルダートレントみたいに触れても問題はないんだけどね」

「ああ、だからめっちゃ毒液飛んできてたんだ」


 なんかおかしいと思った。この世界特有のトレントも居たらしい。


「それにしてもこの数どうやって倒したの?」

「あー………まだ表にあるんですけど………」

「え?」


 三十個くらいある籠のうちの1つを持ってきただけなんだよね……


 で、おネェに残りを見せると。


「あなた、本当に人間………?」

「人間じゃなかったら一体俺はなんなんですか………」


 妖怪とか幽霊とかですか。


「それにこれ………エルダートレントもあるじゃない」

「あははは………」


 ええやんけ。自分にかかる火の粉を防いだだけやもん。


「ちょっと待ってて………これだけの数調べるのは魔法じゃないと無理よ」

「ですよね」


 で、数十分後。


「普通のトレント種が6201、ポイズン種が3037、エルダートレントが2。合計で9240体ね」

「あー、結構な数潰しちゃったからな………」

「え、どういうこと?」

「いや、最後にやった魔法でトレントをプチプチッとやっちゃったんで。全体の総数は最低でも20000はいっていたと思います」


 そんなことより早く帰りたい。お腹すいた。


「で、報酬ください。ちゃんと掃除しました」

「え、ええ」


 証明書をつきだして、おネェから銀貨を二枚もらった。


 テッテレーン! ブランはお小遣いを貰った! みたいな。


「よくよく考えてみたら人生初仕事だった」


 一日走り回って二千円。バイトかよっ! しかもかなりブラックだよ!


 でもお仕事っていいね。お金もらえるならいくらでも掃除するぜ。ま、浄化して終わりだけどな!


「新人君、その、時間あるかしら?」

帰りたいです(大丈夫ですよ)

「そう。じゃあ今すぐギルドマスターの執務室へいってくれるかしら?」

お腹すいたんですけど(わかりました)


 ううう。ご飯食べたいよ。昼飯なんて無かったもん。


 折角タダなのに。


「じゃあ僕ら帰っていいですか?」

「おいおいおいおい」

「ええ。あくまでも用があるのはこの子だけだから」

「いいんですか⁉」

「じゃあ、ブランさん。お先に」

「ひっでぇ!」


 俺一人置いていかれた。腹の虫が悲しく主張してきた。


 …………さっさと用事終わらせて夕飯食べに行こう。


 すぐに中へ入って二階へ。おネェもついてきた。


「アレックスです。それと、例の新人も」

「どうぞ」


 例の新人ってなんぞや。俺割りと有名人だったりするのか。


 おネェに促されるまま中に入ると、眼鏡をかけた猫がいた。しかも多分おネェよりデカイ。それが二足歩行して優雅に茶を飲んでいる。


 シュールだ………


「君が昨日来たばかりの新人だね? 私はレノン・スタッチ。君の名を教えてもらえるかな?」

「ブランです」

「ほう、名字はあったりするのかい?」

「えっと、全部だとブラン・セドリック・エステレラです」

「驚いた。星の名持ちか!」


 星の名? なにそれ?


「星の名って………?」

「親御さんから聞かなかったかい?」

「聞いていないと思います」

「まぁ、少し複雑だからね。すわってくれ」


 やけにフッカフカのソファに座るとレノンさんも目の前に座った。うん。デカイ。二メートルあるんじゃないかな。


「極稀に星という意味の名字をもつ者がいるんだ」

「エステレラは確かに星ですけど………」

「そう。その名をもつ人々は今までかなりの業績を成し遂げているものばかり。だからそれを妬んだ者達で星の名狩りといってその名をもつ人を徹底的に排除した時期まであったんだ」


 いや、物騒過ぎるだろ。


「今は………?」

「今はないよ。安心して」


 良かった。排除とかマジでごめんだし。


「それで星の名って結局どんなものなんですか?」

「さぁ?」

「え?」

「誰も知らないんだ。ただ偶々星の名をもつ者が有名になりやすかっただけなのかもしれないね」


 物凄い濡れ衣だな。


 星の名をもつってだけでそれは、ちょっと可哀相。他人事じゃないけど。


「で、エステレラとはどんな一族なんだい?」

「えっと………」


 ただのパーティの名前です。


 しかも超適当に決めました。今では反省してます。


「ぶ、武家です………」


 ……うん。間違ってないと思う。


「成る程! それで生き延びれたわけか!」


 ごめんなさい。嘘はついてないけどほぼ隠してます。


「君の家はどの辺り?」

「……遠いとしか覚えていません。今、帰る途中なんです」

「星名族の秘境か」

「え」


 一言もそんなこと言ってないんだけど。


「それなら君が異様な強さを持っていても頷ける」

「自分そんなに強くないですけど……」

「謙遜は過ぎれば嫌みさ。さて、君をここに呼んだ理由を話そうか」


 そういってレノンさんは数枚の書類を見せてきた。


「君、読み書きはできるんだったね?」

「読めはしますけど、書けないです」

「自分の名前は?」

「あ、それぐらいなら」


 書類に目を通してみると………なんだろうこの数字。


 桁が大きすぎて目がチカチカする。


「これって?」

「トレント討伐の報酬さ」

「トレント討伐………え? でも自分依頼受けてないですよ」

「討伐証明さえあれば依頼分はなくともある程度のお金は入るんだよ」

「得心しました」


 なるほどなるほど。で、えっと?


「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん、いっせんまん………え?」

「えっと、なんと計算しているのかわかりかねるけど………64ウルクと293イルク、それと169アルク。これが君が討伐したトレントの報酬だ」


 日本円にして64293169円。6千4百万円以上の大金だった。

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