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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界?探索記録 四冊目
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三百七十二日目 妖精さん?

 とりあえずイベルの元へアニマルゴーレムを送り、周囲の警戒にあたらせることにした。


 一応俺も近くで待機する予定だけど、あんまり目立った行動をとれば潜入に気付かれそうだからずっと一緒にいられないし。


 一応学園長の了承を得て潜入しているから、大ごとにはならないだろうけど。単純に俺の身分がバレるのは非常に良くない。


 相手がこっちの情報をどれだけ持っているかも分からないし。


「暫くイベルの方にかかりっきりになるから日本の方は任せた」

「……かしこまりました。お気をつけて」


 ライトとメイド達、ミズキさんに日本の店を任せてしまうことになるけど、全員優秀だし大丈夫だろう。






ーーーーー《ミズキサイド》






 針の筵、とまではいかないけれど。


 明らかに避けられている。と思う。メイドさん達に。


「暫く裏の店閉めるから表の方よろしく」


 そんな感じの軽いノリでブランは何処かへ行っちゃった。


 バイト中の私たちがどれくらいの距離感で接しているか、多分殆ど分かってない。伝えたけど、伝わってない。


「あ、あの……今日、暇ですねー……裏の人も、こないし」


 隣に立っているメイドさん(格好は普通の制服だけど)に話しかけるけど、


「……そうですね」


 さっきから話しかけてもこの反応しか返ってこない……。


 今店番をしているのは私と、シェロさんっていう方。この人、他の人に比べてもなんか警戒心剥き出しな気がするのは、気のせいかな……。


 すごい綺麗な方なんだけど、少しだけ怖く見える。


 今日は雨が降っている平日ということもあって、お客さんが殆ど来ない。このお店は見つけるのがそもそも少し難しい立地にあるのと、売上の幾らかは『人間以外のお客さん』相手からのものだから、裏のお店を閉めちゃうと結構売上減っちゃうんだよね。


 それでもネット販売してるから利益はちゃんとでてるってブランは言ってたけど。


「あ、あの、ちょっと気になってたこと、聞いてもいいですか?」

「……どうぞ」

「ブランってなんでメイドさん沢山雇ってるか、知ってますか?」


 なんか、すごく気にはなってたけど、ブラン本人にはなんとなく聞けなかった。


 もし変な答え返ってきたら、なんて返せばいいかわかんないもん。


「さぁ。私は存じ上げません。直接お聞きになられればよろしいのではないでしょうか」


 スパッと切られた。やっぱり嫌われてるよね?


「そ、それじゃあ、なんでブランのところで働こうと思ったんですか?」

「……私含め、ここで働く者は貴女様を除き殆どがマスターに救われた者達です。その御恩をお返しするまでは、ご奉仕すると決めております。この回答でよろしいでしょうか」

「え、あ、はい……」


 会話が……続かない……。


 窓の外ではパラパラ降っていた雨がいよいよ本降りになってきた。


 これ、今日は本格的にお客さん来ないかも。


 ぼんやり窓を見ていると、何かが窓の近くを横切った。


 咄嗟に目で追うと、十数センチくらいの大きさの、三つ編みの女の子。


 しかも、浮いてる。……浮いてる!?


「えっ? 妖精?」


 某海外のアニメスタジオ出身の、空飛ぶ粉を振りまく妖精さん、そのイメージまんまの女の子が飛んでる!?


 しかも、普通に店内飛んでる! 最初からいたってこと!?


 急に声をかけられたからか、妖精さんが不思議そうな表情でその場に留まって目をぱちぱちさせている。


『あー……普段見られないから油断してたわ……そういえば見える(・・・)からブランに手伝い頼まれたのよね、ミズキさん、だっけ』


 喋った。普通に話しかけてきた。


「え、あの、はい……妖精さんは、ブランのお知り合いで……?」


 普通に私のこと知ってるんだ、ということはとりあえず置いておいて。ブランの知り合いだったみたい。それならこのお店の中飛んでるのも納得……なのかな。


『知り合いというか……手を貸してあげてるの。利害関係の一致による契約相手、というものかしら』

「へ、へぇ」

『自己紹介が遅れたわね。私はピネ。風の中位精霊よ。妖精じゃないから、そこ間違えないでね』


 見た目の可愛らしさに比べて落ち着いた女性の雰囲気がある。


「は、初めまして。ミズキです」

「ミズキ様、妖精と精霊は種族が全く異なります。例えるなら悪魔と天使くらいの違いがあるので、混同なされないようお気をつけください」

「え、あ、そうなんですねごめんなさい……」


 シェロさんの言葉で条件反射的に謝ってしまった。この人ずっっとちょっっと怖いよ……。


『シェロ、この世界では妖精と精霊が身近でもないのだから、責めないで。それに、そんな強い口調で言わない方がいいわ。少なくともブランはあまり好ましいと思わないでしょうね』

「! はい、その通りでございますね、ピネ様。申し訳ありません、ミズキ様」


 あ、ピネさんの方が立場上なんだ、この感じ……


「い、いえ、こちらこそ間違えちゃって」

『さっきも言ったけどいいのよ。見慣れてないものを間違えるなという方が酷だわ。ブランが妖精と精霊間違えるのなら怒るけれど、あなたなら良いわよ』


 なんだろう、この優しさ……


 シェロさんの塩対応ですり減ってた心がちょっと回復した気がする。

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