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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界?探索記録 四冊目
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三百七十日目 ソウルへの報告会

あまりにも遅くなって申し訳ないです……。

 俺の家まで探られると最悪正体がバレて不味い。駆け出し君にはちょっと悪いが本気で撒かせてもらった。


 隠密系の魔法や能力をフル活用して、ソウルでさえ気付くのが結構難しいくらいまで隠れると流石について来られなくなったようで諦めてくれた。金貨も3枚あげたし、それで満足して欲しい。


 そうしてわざと遠回りしながら拠点に戻って、家の前まで来て脱力した。


「あ……ここ売りに出したんだった……」


 拠点移したの、忘れてた……。








「遅かったですね」

「うん……色々あったのもそうなんだけど……家間違えた……」


 家に着いた頃にはなんかめっちゃ疲れてた。何だろう、体力的には問題ないから精神的に。


「拠点ここに変えるって急に言い出したのブランさんじゃないですか」


 そう言われると何も言えない。


 イベルには「拠点変えるなんて簡単だ」って見栄張ったけど、実際は結構大変だ。


 単純に荷物を移動させるだけじゃなく、各所への通達、危険物持ち出しや移動に関する書類の作成などなど……。


 一部の拠点には外に持ち出せないような器具も置いてあったりする。俺の通信機用の電波装置とかね。これが外部に漏れたら通信の傍受をし放題だから、絶対に動かせない代物だ。


 俺とソウル以外が移動させる場合は、複数人の連名で申請してもらう必要がある。


 今回の拠点移動ではそこまでの重要なものはなかったけど、それでも中規模以上の拠点だったから色々と荷物が多くて大変だった。荷物は俺の収納で運べばいいんだけど、詰めるのも時間かかるしね。


 そのあれこれ面倒なことをソウル達に押し付けて行ってしまったものだから、ちょっとソウルの機嫌が悪い。


 これは若干説教モードに入ってる。


「えっと、あの……色々ごめん」

「別に怒ってないです。それよりイベルの事について早く状況を共有してください」


 ちょっと怒ってるじゃん……。


 ソウルの機嫌を伺いつつ、現状を説明した。


 勿論、尾行されてることも伝えておく。駆け出し君も含めちゃんと撒いたけど、俺を尾行するってことはイベルの家を突き止めようとしているのだろうし。


「情報が漏れた……としたらどこでしょうね? やはりイベルのご友人からでしょうか」


 まぁ、そこが一番可能性が高いかなぁ……。口止めもしてるようでしてないし。


 言わないでくれると助かる、程度のお願いしかしてないし。イベルが俺のことを言ってもいいと判断した子達だから、その辺りはイベル本人に管理してもらおうと思って何も言ってない。


 けど、あの子達が闇雲にイベルの家庭環境を周りに話すようなタイプか? とも思うんだよなぁ。


 イベルの仲がいい友達の殆どは平民だ。


 一部例外はいるらしいけど、基本的に平民のグループにいるらしい。正確に言うと貴族の子供達の輪の中に入ることが殆どないんだそうだ。これはシシリーから聞いた。


 それもそうだと思う。貴族の子供達が、貴族以外と交友関係を広げようとしないのは珍しいことじゃない。


 彼らにとっては学校と言っても社交の場だ。貴族として生きていく上で必要な交友関係を広げる場所なのだから、彼らにとって平民と関係を持つのは時間の無駄と考える人も少なくないだろう。


 一応イベルは平民として入学してるし、歓迎されない場所にいるのも居心地は良くないだろうから、それはそれで構わない。イベルが貴族を継ぎたいって言い出せば別だけど、今のところ俺が死んだら位は返上する予定だ。好きにして貰えばいい。


 だから平民のグループにいることに違和感は全くないんだけど、平民の子供達ってあんまり家の話をしたがらない事が多い。貴族の方が人数が多い学園だから、何か引け目を感じるらしく、家族がどんな仕事をしているかとかを言わない子も多いんだとか。これもシシリー談だ。


 だから言わないことが不自然にはなりづらいし、なんとなく周りも聞かないようにする空気があるらしい。


 俺と会ったことのあるイベルの友人達は、イベルが俺のことを極力隠そうとしているのを知っている。まぁ俺成金貴族だしな。そのことで色々と貴族連中から言われることもあるし、周りに言いたくないってのもわかる。


 それをわかってくれている子達、ってのは俺も理解してるつもりなんだけど……。


「でもあの子達が俺のことを周りに言うともあんまり思えないし、言ったところで他国にまで情報が広まるって考えづらくないか?」


 俺の情報が漏れたことで学園内でイベルが有名になってしまう、という状態になるのなら分かる。それによって他国から干渉を受けることになるかもしれない、というのも分かる。


 けど、今回不思議なのは『学園内には俺の噂が広がってない』ことだ。


 学園長と知り合いだってことは既に知れ渡っていることだから、最悪俺が出入りしている瞬間を見られたところで『ただの仕事だろうな』で終わるんだけど、そう言うことでもない。


 他国の要人が突然やってきて、最初からイベルを狙い撃ちしてきている。しかも俺の見立てではガッツリ悪意を感じた。悪意じゃないにしても、何かしら下心満載なのは間違いない。


 つまり、誰かが直接イベルの情報を他国に流してる可能性が高い。


 流してる本人は自覚がない可能性もあるけど、そうでもないと留学制度を利用して色仕掛けとか、こんな大胆なことできないとは思う。


「教師の可能性もありますね」

「かもな……」


 俺はいいんだが、イベルのメンタルが心配だ。干渉しすぎるのは良くないってわかってるんだけど、今回は俺が放置しすぎたのが悪かったのは間違いないだろう。

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