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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界?探索記録 四冊目
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三百六十三日目 なんか勘違いされてません?

 学園長であるレーグに、通信機を使ってすぐに連絡を取り、俺が生徒として潜入できないかを聞いた。ついでに制服を借りられないかも聞いた。


 数秒の間の後、通信機の向こう側から大爆笑が届く。……うん。笑われるとは思った。


『き、君、自分が幾つだと思ってるのっ……っあっははは! そ、想像したら余計におもしろっ……ひ、お、お腹がぁ……っ!』

「笑いすぎて腹が痛くなってるとこ悪いけど、返事を聞かせてもらっていいか」

『ご、ごめんっ……! 落ち着くまで、ちょっと待って……っはぁ、はぁ』


 たっぷり数分ツボっていたレーグが復活し、ようやく話が進んだ。


『いやぁ、面白いこと言うじゃないか。子供の考えることは僕らの想像を超えてくることが多々あるよね。ああ、許可は出すよ。許可証も発行するし、見本用のでよければ制服も貸してあげる』

「それは助かる。流石に不法侵入するわけにはいかないけど、外で相手と会わせるのも不安でさ」


 相手のお嬢さんを呼び出して、イベルに危害が与えられないかが一番怖いところだからな。


 学校なら他人の目もあるし、留学生という手前、派手な行動を起こすことは難しいだろう。


 だから手紙という手段でしか接触してこないし、イベル本人ではなく学校側に掛け合って事を大きくしようとしている感じがある。生徒同士で揉めると一瞬で学校内に広まるからな。親だけの話に留めておくのはそんなに難しくないかもしれないが。


「それで、近々そちらに伺ってもいいか? イベルの謹慎が明けたらすぐに行きたいんだが」

『ああ、明日なら大丈夫。謹慎ももう気にしなくていいよ』

「そんな気軽な感じでいいのか……?」

『これが君以外の人だったら、素性調査とか色々やるけどね。君の場合はイベル君が入学するより前から取引してるし、問題ないでしょ。変なことしないでね』


 変なことって何。まぁ、信頼してくれてるってことだろうし、ありがたく行かせてもらおう。








 次の日、教員用の入り口からこっそりと校内へ侵入。もちろん守衛さんに許可もらってるから不法侵入ではないよ。


 ただ、これを他の生徒に見られると俺が部外者なのがバレるからあくまでもこっそり動いている。


 イベルとユリウス君は後で合流する予定だ。俺は先に学園長のレーグから制服を借りる必要があるからね。


 この学園内は侵入者対策のために、魔法を下手に使うと警報が鳴る。国の要人の子供も通うところなので、そのあたりのセキュリティは結構しっかりしてるんだ。俺も一部手伝ってるところはあるけど。


 学園長室のドアをノックする。が、返事がない。


 あれ? 時間……合ってるよな? 約束してたはずなんだけど。


 単純に聞こえてないだけ? ……いや、そもそも中に気配がないな。緊急の用事でも入ったのか?


 ただ、そうなると困るな。だって俺今完全によそ者だし。このままここで突っ立ってても目立つし、どこか移動して待つにしても場所がない。


 制服借りたらすぐに着替えて、イベルが来るまで学園長室で待機しておこうと思ってたのに。


 魔法も使えないから通信機も使えない。まずい、こうなるとは思ってなかった。


「おい、そこの君。ここで何してる?」

「あっ」


 やっべぇ……この学園の教師だ。ガタイのいい男性教諭……確か、剣術の先生だ。軽めに子供っぽくなるよう変装しているとはいえ、学生服も着てない人が教職員のフロアに居るのめちゃくちゃ怪しいのは当然だ。最悪ちらっと見られても子供ですと言い張れそうな格好してきてはいるけど……


 まずい。今回の件、公になると色々危険な可能性があるからレーグには他の教職員に内緒にしてもらっている。レーグの名前を出しても不法侵入者扱いされるかもしれない。


「えっと……その、学園長と、約束がありまして……」

「学園長? なんで……ああ、そうか! じゃあ君が例の実験室の」


 え。実験室? 何それ? なんか勘違いされてる?


「実験室の新人なら丁度いい、手伝って欲しい」

「えっ?」


 くいっと腕を引っ張られて仕方ないけど着いていく事にした。拒否することは簡単だけど、不法侵入者認定されても困るから大人しく従っておこう。


 若干雑な案内でたどり着いた場所は、練習用の武器や防具をしまう倉庫だ。


「ここの片付けを頼みたいんだ。いいよな?」

「そ、そんな急に」

「おっと、授業が始まるから、あと頼んだ」


 ……いやだとも言い切れずに倉庫に押し込められてしまった。


 それで、なんで俺にまともな確認もせずに倉庫に入れたかというと、すごい……部屋が汚いからだ。


 面倒なことを新人に任せたくて無理にでもやらせたいんだろう。勘違いされたとはいえ、本来の新人さんがちょっとかわいそうだ。


 掃除と片付けをすること約10分。仕事がある程度終わったところにレーグが来た。


「いや、本当にごめん、急に用事が入ったものだから……なんか手違いで君に仕事を」


 謝罪をするレーグの表情は暗い。多分この顔は俺へのものではないだろう。


「そこに関しては別に大丈夫だよ。こちらこそ、急な申し出を受けてくれて助かった。それで、早速だが制服を借りても?」

「ああ、はい。これ」


 受け取った包みを開く。……ん?


「これ、女子用だけど」

「え? 君女の子だよね? じゃあ女の子でよくない?」


 ……よくは、ない気がする。相手の反感買わないか心配なんだが。

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