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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界?探索記録 四冊目
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三百四十三日目 いざ出発

 ミズキさんに最低限の知識だけ叩き込んで、いよいよ行くことになってしまった。


 正直、本当に最低限しか教えてないし……確実に理解できてなさそうな反応だったから極力喋らない方向でいくと伝えてある。そもそも、俺自身あんまりわかってない所が多いしな。


 吉田さんとは駅前の広場で待ち合わせだ。集合時間の五分前にミズキさんと到着すると、すでに待ち合わせ場所には大荷物を持った吉田さんがいる。


「さて、揃いましたし行きましょうか」


 俺とミズキさんはかなりの軽装だ。荷物はほぼ俺の収納に入れてるからね。


 手ぶらは流石にちょっと怪しいから小さめのカバンは持ってきているけど。


 これから登山するのか、と思うくらいの重装備の吉田さんを見て、ミズキさんがボソッと話しかけてきた。


「荷物、しまってあげないの?」

「嫌」


 だって俺の体内だよ? 爆発物とか入ってたら最悪……まぁ、死にはしないと思うけど、普通に痛いからやだ。


 信頼できない相手の荷物持ちたくない。


「ミズキさん、いいんですよ。いつもこんな感じなんで。それよりも、はい」


 渡されたのは新幹線の乗車券だ。ただ、普通とはちょっと違う色をしている。


「これ、座席の番号書いてないんだけど……?」

「ああ、貸切だから」

「貸しッ……!?」


 なんか驚愕しているミズキさんを連れて駅の中へ入り、新幹線へ乗り込んだ。


 もちろん中には誰もいない。いつものことだ。


「え、えええ……新幹線って、貸切できるの……?」

「この辺りは吉田さんがやってるから詳しい事は知らないけど。俺たちみたいな『普通じゃない客』を乗せる専用の車両なんだよ。昔色々あって専用車が作られたらしい」

「そこで普通の車とかじゃない所がなんか凄いね……」

「この車両は犯罪者の移送にも使われるから、車だと追いつかれる可能性がある分リスクが高いんだろう」


 俺もそうだが、ナチュラルに身体能力がおかしい種族なら車より早く走れるのもそれほど珍しくない。


 俺なら多分新幹線でも並走できるけど、それができるのは俺を除けばほぼいないだろうし。


 ただ、その速度で走れるとは言ってないから俺みたいに身体能力隠してる人がどこかに沢山いる可能性はあるけど。


 乗り込んで少ししてから車両が動き始めた。


 二時間くらい暇だな。……ゲームでもしようかな。


 椅子に座ってぼーっとしていたら吉田さんが話しかけてきた。


「それで、落ち着いたところで一つお聞きしたいんですが」

「なんですか」


 吉田さんは一枚の紙をテーブルに置いた。


 約100万円の請求書。すごく見覚えがある。だって俺が請求したやつだもん。


「ああ、ミズキさんの装備代。支払いお願いします」

「いやいや、何故こんなに高額なんですか? 100万ですよ」

「吉田さんが経費で払うって言ったんじゃないですか。うちの店でのフル装備ならこれくらいかかります」


 むしろ結構安くしたくらいだ。


 普通に買ったら120万くらいになってるだろうさ。


「確かに準備にかかるお金は払うとは言いましたけど、こんな額になるとは……上司にどうやって言い訳すればいいのか」

「一般人巻き込んだそちらの責任でしょう。もうこれ以上安くしないんでそのつもりで」


 ミズキさんの装備は全て俺の店で取り扱っているもの、その中でも効果が高いものを重点的に用意した。


 精神操作系の魔法などの干渉を跳ね返す特殊な金属で作ったネックレス、回数の制限はあれど使用者を衝撃から守ることのできるお守り、ほんの少しだけだが任意で刃の長さを調節できる折りたたみナイフ、風の魔法を付与することで移動速度を上げられるブーツ。


 これくらいしてもまだまだ足りない気がするが、とりあえずこれでいいだろうと判断した。


 これだけの効果があれば100万超えてても適正価格だ。


「普通の人間を要求してきたのは相手なんですから、最悪こっちの代金も請求しては? 応じるかどうかは知りませんけど」


 できないだろうとは想像つくけど。そもそも今回の依頼がめちゃくちゃなのに吉田さんが断れていない時点で警察の立場が明らかに低いのは予想できるし。


 それよりも、ミズキさんの知識の確認をしなきゃいけないか。


「ミズキさん、これから会う人たちのこと、ちゃんと覚えてる?」

「あ、うん。青笠……からすの人と、緑帯っていうたぬきの人でしょ?」

「合ってるといえば合ってるけど……多分烏と狸って言ったら怒られるから『烏天狗』と『化け狸』って言ってね。ちなみにどちらも古くからの力のある派閥だよ」


 烏天狗と烏だと結構違うから怒られる可能性がある。それこそ人と猿を間違えるようなものだ。


 青笠や緑帯みたいに『色の名前』と『体に身に付けるもの』がくっついた派閥名は『色付き』と呼ばれ、基本的には昔から続く名家であることが殆どだ。没落してしまった色付きもいるらしいから絶対とはいえないが。


 この辺りの知識は裏の日本で暮らす上で必須と言っていい。どこに喧嘩売ったらやばいかを把握しておく必要があるからね。


 まぁ、喧嘩売らないことが一番なんだけど。

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