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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界?探索記録 四冊目
339/374

三百三十九日目 『ミズキ』はここに来る直前に聴いていた曲名らしい

 バイトすることになった遠山さんと連絡先を交換、その場で契約書を交わした。


「こんな適当な感じでいいの……?」

「本人が良ければいいんじゃないですかね」


 そもそもここ、ちょっと色々いじってて普通の空間にないから、ある意味では架空の店舗だし。


 あ、一応税金は払ってるよ! その辺はちゃんとやるよ俺だって。


 ただ、ネット販売のみの業者っぽく振る舞ってるだけで。


「えっと、他のバイトの人とかは」

「いませんよ。従業員はそこそこいますけど……ほぼ日本人ではないですし、一般人でもないです」


 どうせ隠してもそのうちバレるし、異世界のことも嘘はつかない。信じるかどうかは別として。


 遠山さんがわかりやすく引いた。まぁこの店はバイトとか雇うつもりなかったしね。最近ちょっと日本人欲しいなって思ってたから丁度いいって誘っちゃっただけだし。


「あ、そういえばさっきの……オーナーの人? に確認とか取らなくていいんですか?」

「あー……まぁ、いいでしょう。事後報告で」


 別に勝手に人を雇ったところでエルヴィンは怒らないだろう。ソウルにはちょっと言われそうな気がしないでもないけど。


 相手の素性とかも何も調べずに長期の仕事の取引なんて、普段の俺ならやらないから余計に言われそう。


「それより別にタメ口でいいですよ。なんなら遠山さんって先輩ですよね?」


 さっき生年月日見たら一個上だった。


「ま、まぁそうですけど……でも雇い主にタメ口って」


 なんか微妙な距離感あるんだよなぁ。最初だからかと思ったけど、唯一のバイトがこの距離感だとこれから先やりづらそうな気がするし、大学で会った時に俺に敬語で話しかけられたら先輩が後輩に? って周りがなりそうだし……


「別にいいですよ、そんなの。こっちだってさっきから結構崩してるんで。そんなに気になるのなら、ここでは互いにタメにします?」

「え? ……じゃ、じゃあ、それで」


 なんかよくわからんが、気を使わないでよくなったのなら俺としても楽でいい。


 そもそも俺自身、敬語得意じゃないし。


「じゃあこれからよろしく」

「よろしく、えっと……名前」


 あ、そういえば言ってなかった。


「その名前なんだけど、適当に自分の名前考えてもらえると嬉しいかな。ここだとちょっとヤバめの仕事の人が来ることもあって、本名知られると危険だから全員呼ぶ時は仮名を使うんだ。……俺はブランね」

「なんか中二病っぽい……」

「……この店自体中二病チックだとは思わないか?」

「思う」


 わかってるよ! そもそも俺とかエルヴィン、ライトなんか種族からして中二病なんだから!


 生きてるだけで可哀想な頭の人扱いは若干嫌だが、事実だ。


 遠山さん自身も見えないものが見えるんだから、若干こっちよりだろ!


「……じゃあ、私はミズキで」

「了解。他の従業員にも伝えておくよ。スケジュール空いてる日は連絡入れてくれればバイト入れるから。どうせバイトはミズキさんだけだ。たくさん入りたいならそう言ってくれればいいし、暫く休みたいとかなら休めばいいから」


 今までいなかったんだから、いてもいなくても大差ない。


 ただ、いてくれると助かるなぁってだけで。








 ミズキさんが入ってから一週間、彼女はほぼ毎日きてくれる。


 大学の帰りで一緒に店に来て、そのまま二時間か三時間くらい働いて帰っていく感じだ。聞くと、金がないらしい。どうやら見える体質が自分の中で辛く、お祓いグッズとか、よくわからないものを沢山買ってしまっているらしく。


 この店で扱ってるものも、それに似た商品だから何もいえないけど。


「えっと……ミズキさん、ロッカーに置いてあるこの石は?」

「魔除けの石!」

「……ああ、うん。正直、特になにも感じないけど……何に効くの?」

「不幸避け」


 ……不幸を退けるって、どうやるんだろう……? 俺もわからないんだけど。


 日本でのこういうグッズの効果って、魔法がないからあんまり無いと思ってる……、俺だけかな?


 俺の作ってる厄除け(瘴気避け)のアクセサリーとかは魔力を編み込んで作ってるから効果は確かのはず。ちなみにこのアクセサリーはミズキさんにも渡してある。


 瘴気避けに最適なのはこの前渡したペンライトなんだけど、あれはすぐに電池(俺の魔力)が切れるから使い勝手が悪いんだよね。


 あれよりも効果は落ちるが数ヶ月もつアクセサリーだ。一般人に効果が高すぎるものはあまりよく無いから、売り物にしてるやつは効力を下げてるんだけど、それよりずっと効力は高い。


 それを使っても避けられない不幸があるのか……?


 彼女についてる瘴気はある程度消したんだけど、まだ残ってんのかな。家とか?


 ミズキさんの仕事内容は主に掃除とレジだ。


 俺が客と話をして、ミズキさんがお金を受け取る係。正直だいぶ楽になった気がする。


 もちろんメイド達もしっかり働いてくれるんだけど、世界がかけ離れてるから常識がずれてるしなぁ。


 ちなみに普段から客はそこそこ来る。


 恋愛の悩みやお金の悩みを抱えて、いかにも怪しい『不思議な雑貨屋さん』なんていう謎な店に来てしまう。


 この店の販売しているものは殆どが瘴気避けだ。日本はやたら瘴気に溢れているから、軽めにかけた瘴気避けでもしっかり効果は出る。


 いいことがあると、人間大体は「全部がうまくいく!」と勘違いしがちだ。そんなこと思ってないって言われることもあるが、俺はそうだと思ってる。むしろそれで今までやらなかったことに躊躇しなくなって状況がよくなるなら良いじゃないか。


 たまに「この店に行ったら告白成功しました!」みたいなよくわからんレビューが届くんだが、正直それは自分で勝手に『運がいい今の自分なら告白してもいける』って思い込んだからじゃね? と思わないわけでは無い。


 告白が成功するだけの理由が本人にあっただけじゃないのかね。まぁ、喜んでんのならそれでいいか。


 そういった口コミが広がって、実はこの店は結構繁盛してる。


 表の店は。

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