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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界?探索記録 四冊目
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三百三十四日目 家に帰れません...

 俺の顔写真付きの大学名は知っている。だが、当然ながらこの大学を受けた記憶はない。


 というか、俺があっちに行ったのは高二の頃だ。受験どうしようかなぁくらいには考えていたけど、大学すら決めていなかった。……俺の学校、あんまり偏差値高くないとこだったから、皆それほど早い段階から勉強とかしてなかったんだよね。頭いいところだと高二の夏から勉強するんだろうけど、俺の周りはまだ決めてない人が大半だった。


 音楽科だったのもあるけど。付属の音大もあったし。


 ただ、俺の学生証の大学は付属の音大じゃない。なんなら音大じゃない。


「なんで俺大学で言語勉強してんの……? トップレベルで苦手だったと思うんだが……」

「ブランさん、これ」


 外国語学科を専攻していたことに若干の戸惑い。そんな目の前ではソウルが自分のスマホをいじっていたらしく画面を見せてきた。ついでに言えば俺は自分のスマホ、新しい機種になってて画面ロックのパスワードわからない。どうやら前に使ってたのとは違うらしい。どうすりゃいいんだ。


 ソウルのスマホには写真が大量に入っていた。……俺で埋め尽くされている。


「なにこれ、こわっ……」

「何気に酷くないですか? あと撮ったのは僕じゃないんで引かないでください」


 ソウルのスマホを奪い取って全部削除してやりたいところだが、とりあえずいい。問題はその写真だ。


「これ、海だな……こっちは動物園か?」

「僕たち色んなところ行ってたみたいですね」

「正確に俺たちと言っていいのかは微妙なラインだけど」


 話しているうち、周りの視線が突き刺さる。完全に目立ってる。主にこのおかしな格好が。


「ソウル、一旦出ようか」

「……そうですね。特にブランさんは着替えた方がいいです」

「………」


 そうですね。俺は今、全身真っ白の厨二スタイルだよ。途中でどっか訳のわからないところに飛ばされたら困るからって理由でフル装備してるからな。……そう思うと恥ずかしくなってきた。


 急いで店を出てユニ◯ロに向かい普通の服を買った。金は俺の財布から拝借した。


 道中、思い当たるパスワードを全部試してみたが未だスマホはロックされたままだ。しかも間違えまくってるせいで暫く操作を受け付けてくれない。


 その間にソウルのスマホで情報を集める。ソウルのスマホにはびっしりと予定が書き込まれていて、大半俺に関するメモだった。


 なにが好きだとか何処へ行ったとか行きたいとか。それはもう、びっしり。


 うわぁ、って思ったらソウルが「いいなぁ……楽しそう」とか呟いてるのが聞こえてちょっと引いた。


 お前もやりたいのか、それ。ちょっと気持ち悪い部類に入るレベルだぞ。それ見ただけじゃストーカーっぽいよ。


 ただ、おかげで『俺に関する』情報は有り余るほど発見できた。


 どうやら俺は親と半絶縁状態になって大学の学費や生きていくお金は自分でなんとかしているらしい。まぁ、ゲームで得た金もあるしな。だから音大行ってないのか。音大ってやたら金が掛かるから。


 半絶縁状態になった理由はわからないそうだ。俺がソウルに教えてないらしい。あんな状況だったら、いつそうなってもおかしくない感じだったけど。


 で、ソウルとの関係だが。……面白いくらいに、それほど進展してない。


 というか、俺が淡白すぎてソウルが苦しんでる感がメモからありありと読み取れる。


 多分ソウルは手を出したいけど出せないという葛藤の中で日々を送ってるんだなぁ、って感じの内容。俺はなんも考えてなさそうな感じ。


 すごい……なんというか、凄い俺っぽいわ、この対応。こっちのソウルはエルヴィンやライトと話すことができないから、俺のことに関して一人で誰にも話せずにいるらしい。


 職場に俺のこと知ってるメンバーが居るはいるけど、正直相談しにくいだろう。


 そのせいだろうか、俺の記述が日を重ねるごとに増えていっている。反動だろうか……


「なんか、凄いな、これ……」

「もう一回言いますけど、書いたの僕じゃないですからね?」

「でも同じ状況ならこうなりそうじゃないか?」

「……否定はしません」


 しないのかよ。


 俺の今の家の住所、連絡先、その他諸々がソウルのスマホから発掘された。もしソウルのスマホが盗まれたら俺の個人情報ダダ漏れだな。


「とりあえず俺の家? っぽいとこ行ってみるか」


 ソウルのスマホに入っていた地図アプリに住所を入力するとそこそこ高そうなマンションが映っている。


「え、これ? 高そう……」

「絶対高いですよこれ。だって入り口にコンシェルジュいますもん」


 マンション名で検索かけるとかなりのお値段だった。俺こんなとこ借りてんの!? 大学の学費も自分で出してるのに!?


 不思議で仕方ないが、ここからそう遠くないのでとりあえず向かう。


 入り口のパネルに数字を打ち込むと正面のガラス戸が開く仕組みらしい。


 ……ヤベェ、わからん……


「ブランさん、もしかして」

「ああ、こっちも開かないわ……」


 俺、帰れない。

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