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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 二冊目
33/374

三十三日目 吟遊詩人を舐めるなよ?

 また当然のように入り口で止められた。なんで?


「名を名乗れ」

「セドリックです」

「ふむ、セドリックか。何用でここに来た」

「特に意味はないというか、町があったから来たというか………」


 何用でって言われるとなぁ。べつに用がある訳じゃない。


「………よし、通っていいがその従魔にはこれをつけてもらうぞ」

「これは?」

「………よほどの田舎の出身なのか? これは従魔だと証明する身分証だ。従魔のしたことの責任は全て飼い主が負うことになるが構わんな?」

「ええ。大丈夫です」


 一瞬変なものつけられるのかと。ゴーグルを通してみてみたけど問題ない、ただの腕輪だった。サイズ変更の魔法がかかっているくらいだった。


「レイジュ」

「クルルルル」


 レイジュが右足を出してくれたのでそこに近付けると一気に腕輪が大きくなって足に収まった。おお、ファンタジー。


「頭がいいのだな」

「ええ、言葉も理解していますよ」


 霊獣だしな。


「それでは、入都税を払ってもらうぞ」

「はい。おいくらでしょう?」

「一人3イルクだ」


 一人3イルクってことは三人だから9イルク、9000円くらいか。高いのか安いのか。でも馬車ごと入れてその値段なら安いのかもしれんな。


 言われた通りの金額を払って町の中へ入った。


「おおー、なんか町っぽい!」

「いや、町ですけど」

【町じゃない】

「わかってるけどそういう意味で言ってる訳じゃない」


 なんかこう、中世のヨーロッパ‼ って感じ。中世のヨーロッパ知らんけどね。


 それに中世のヨーロッパは結構汚かったらしいからここまで綺麗じゃないだろうけど。だってパリとか汚物窓から外に捨ててたって社会の先生言ってたし。


 ここは少なくともそれはなさそう。うん。無いと信じたい。


「えっと、まずは身分証か」

「それなら傭兵ギルドか冒険者ギルドがいいと聞きました。でも僕らのように町を転々とする人だったら冒険者ギルドの方があってるらしいですよ」

「じゃあそっちにするか」


 冒険者ギルドへの看板を見付けたのでそれに沿って進む。馬車と従魔を繋ぐスペースがあったからそこにレイジュと亜竜車を繋いだ。


 一瞬レイジュはぐずったけど肉をあげたら大人しくなった。お前いつかそれで釣られて死にそうだな。


「ここは頼んだぞ」

「クルルルル」


 ……大丈夫かなぁ。


 レイジュは一旦放置して中へ入っていく。男臭いかと思ったけど意外にも綺麗で清潔だった。


 酒場とかがくっついてるイメージがあったんだけど、それはなかった。その代わりに武器が売られてるって感じかな。


 受け付けには筋肉ムッキムキの超顔が怖いおっさんと華奢な受付嬢が立っていた。おっさんの方にいった。なんでって? 近かったから。


「あら、可愛いわね、何のようかしら」


 オカマだった。まぁ、正直どうでもいい。おネェだろうがオカマだろうが。


「えっと、登録をしたいんですが」

「登録? あら、坊や。15才以上じゃないと入れないのよ?」

「自分………17です」

「あ、ごめんなさいね~」


 俺そんなにチビかなぁ? はぁ………。


「ここに名前と年齢、下にジョブと教えてもいいスキル。それから従魔とかいたら教えてちょうだい」

「はい」


 字は書けるかって? ふふん、書ける筈がないだろう!


 ゴーグルを装着。予め俺の細かい情報が書いてあるやつがメモしてあるのだ! このゴーグル写真も撮れるんだぜ。凄いだろ?


 因みに代筆はキキちゃん。助かりました。


 ゴーグルの文字を真似して欄を埋めていく。


 名前にセドリック、年齢に17。ジョブに吟遊詩人ミンストレル、スキル欄に近接戦闘、魔法………でいいや。まだまだあるけど書いてたらキリがない。従魔、使い魔、契約精霊有りっと。


「あら、その年でもう使い魔がいるの? 凄いわね」

「あ、そこにいる人ですよ」

「お初にお目にかかります、セドリック様の使い魔、ライトと申します」


 いつ見ても素晴らしい綺麗なお辞儀を披露するライト。絵になるよな。


「人型をとれるなんてかなり高位の悪魔なのね。羨ましいわ」


 口元に手をやってキャハ、みたいなポーズをとる。うん。おっさんがやってもなぁ………。


「うんうん。………? ジョブ間違えてないかしら?」

吟遊詩人ミンストレルではいけませんか」

「駄目ではないけれど、冒険者は辛いお仕事よ? 吟遊詩人ミンストレルが耐えられるかどうか」

「あ、それは問題ないと思いますよ。ギルマ………セドリックさんは人間やめてるレベルで強いので」

「人間やめてるとか言うな…………」


 否定できないのが辛い。


「この後実技試験もあるのだけれど、大丈夫かしら」

「はい」

「使い魔も無しの試験よ?」

「大丈夫です」


 俺はここまで言われたのにヒメノはほぼ素通りだった。羨ましい。ジョブがネックだなぁ、やっぱり。


「それじゃあサクッと試験しちゃいましょうか。どちらからやるの?」

「じゃあ僕から」

「あら、ヒメノ君からね」


 え、あんたがやんの?


 奥の修練所って書いてある場所に移動した。オネェの受け付け員がバトルアックスを一回転させる。こえぇええ………


 一体何人殺ったんですか、みたいな感じ。妙に様になっている。


「判定はこっちがするから遠慮なく掛かってきなさいな」

「は、はい!」


 ヒメノの両手が同時に動く。


 それを見たオネェの受け付け員………もうオネェでいいや。オネェがバトルアックスを盾にしながらヒメノに突っ込む。


 けど、ヒメノは慌てない。俺がああいう戦い方をするのを知っているからだ。ヒメノはルーンを即座に書き終えて火のルーンを放つ。


「甘いわよっ」

「そうですか?」


 だが、それは誘い。火のルーンを破壊したとき、一瞬できる隙を狙っていたヒメノの風のルーンが発動し、不可視の弾丸をオネェに放つ。


 オネェもなんとかバトルアックスで回避したが、ヒメノはさらにその先を読んでいた。


「キャッ⁉」


 ヒメノは火のルーンにこっそり土のルーンを重ねて書いていて、火のルーンが壊れたとき地面に向かって作動するようになっていた。俺は気づいてたけどな。


 下半身を土に埋める状態になったオネェはヒメノに指先を向けられて降参した。


「いやぁ、両手で同時に使える人なんて宮廷魔導師くらいしか見たことがなかったから焦ったわ。素晴らしい腕前ね」

「ありがとうございます」


 で、俺の番。


「どの武器使ってもいいわよ」


 リリスは危なすぎて使えないので刃を潰した片手剣を借りた。


「思ったより軽いな………」


 扱いづらいかもしれん。ま、いいか。


「じゃあお願いします」

「どっからでもかかってきなさい」


 じゃあ遠慮なく。指を四本使って四つのルーンを同時に書いて地面に放ち、足場をつくって超低空飛行するようにジャンプする。そのままもう一度足場をつくり、足に身体強化をかけて走る速度をかえ、喉元に剣を突き立てる。


「いかがでしょう?」

「貴方、何者………?」

吟遊詩人ミンストレルです。で、試験は?」

「ご、合格よ」

「やった♪」


 吟遊詩人ミンストレルのこと、馬鹿にしたら駄目だよ。


 もしかしたらめちゃくちゃ戦いなれてるかもしれないし、ね?

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