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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
326/374

三百二十六日目 とりあえず、状況把握

 刺客に狙われてる? 俺が?


「……心当たり多すぎてわからない」

「ですよね……」


 獣人国から刺客が送られてきていると言われても、正直わからない。


 というのも俺は獣人と人族の戦争を無理矢理に止めた経緯がある。この件があったから人族側の王族との接点が出来たから、後悔はしてないけど。


 俺が介入したことによって獣人族にはそこそこ被害を与えてしまったから恨まれてると言われても何ら不思議ではない。それだけじゃなく、人族と魔人を結びつけてしまったせいで獣人が結構肩身の狭い思いをしているとも聞く。


 これまで相手にしていたのが1対1対1だったのに今じゃ下手したら2対1になる。均衡が崩れると危険なことになるかもしれないとは俺も思っていたんだけど、やってみないと分からないし、なんか成り行きでやっちゃったし……


 獣人からしたら迷惑な話だよな。それは俺もわかる。


 けど、このまま犠牲者が出ている現状を放って置けなかった。ついでに言えば、人族でも力のある五大国の王族が「もう暫く戦争はいいや」という結論を出してくれたお陰でもある。


 争い事は、正直いい面もないわけじゃない。


 戦争も勝てば莫大な資産が動くし、裕福になることも貧しくなることもある。争うことによって得るものもあるから戦争は無くならない。争いをやめたら停滞が待っている。緩やかに落ちていくだけかもしれない。だから一か八かを狙って仕掛けるしかない、と追い詰められた国もある。


 その一か八かの可能性を、俺は潰した。よく思わない王もいただろう。ただ、あの場では五大国が首を縦に振ったから誰も反論できなかった。あの戦争を和平の方向へと進めることができたのはゼインたちのお陰なんだ。それと、同意してくれた魔王様だな。


 そんなことをした結果、各国を転々とする必要が出たんだけどね。留まってたらどっから狙われるか分かったものじゃない。大抵の敵はどうにでもなるけど、数が増えれば面倒だから。


 だから刺客が来たと言われても「ああ、またか」って感じなんだよね。今回の場合は珍しく獣人側からみたいだけど。


「俺を殺したい理由なんて、数え切れないくらいあるだろ?」

「ブランちゃん……大変なんだね」

「ま、まぁ……そうですね」


 スフィアさんは心配してくれてるみたいだが大半はメイド達が何とかしてくれるから、俺が動くまでもない。正直相手しきれないから全部人任せにしてる。


「今はメイド達が話を聞いてるので、理由もわかると思います」

「……誰?」

「……カーラです」

「カーラか……やり過ぎてないといいけど」


 カーラはうちのメイドの中でも非常におっとりした優しい子だ。少々せっかちなメイド達の中ではルーズな方なので急かされている場面をよく見かける。特に料理運ぶのがちょっと遅い。亀の歩みって感じ。亀も足早いやついるけどさ。


 「あらあら、まあまあ」って言葉がすごい似合う子なんだけど、一度スイッチが切り替わると物凄いことになる。


 おっとりした雰囲気は変わらずに、すごいサディストっぽくなるというか……うん。ドSになる。


 一回、どっかの山賊を潰した時に人質をどこにやったのか聞き出してて、そこを見ちゃったんだけど。柔らかい笑みで小指から順番に指を折ってくの。で、指が終わったらナイフを取り出して「言わなければ5秒ごとにあなたの耳を削っていきますね」とか言っててマジで怖かった。


 あまりの恐怖に山賊気絶してた。俺も震えた。俺よりやばいと思うあの子。だってそんなことしながらもメッチャ楽しそうなんだもん。何ならあの顔は興奮してた気がする。


 俺も似た感じで拷問することはないわけじゃないけど、少なくとも楽しくはない。楽しそうに見せた方が相手が自白しやすいから演技はするけど。


 天性の拷問官だよあの子。……あ、一応褒めてるからね。


「それで、これからどうするんですか? 今回の件で取り逃がした人は、かなり危険だと思いますよ」

「分かってる。俺も各国へ伝えなきゃいけないことがあるから、すぐに準備する」

「待ってブランちゃん。すぐにって、まだそんなに動き回っちゃダメだよ」


 スフィアさんが説明してくれた。


 ここにいるのは俺とソウル、エルヴィン、それと一部のメイド達だけで他の皆は瘴気を抑えるために各国へ走ってくれていること。異常な変化が起こっていた俺の体はほぼ完璧に治っている、がまだ馴染んでいないので戦うどころか一週間ほどは外に出られないこと。各国の王達もそれぞれで動いているが、被害状況の把握も進んでいないこと。


 つまり、今動いても国同士の話し合いではそもそもデータが十分にないから、データを集めるのが先。ついでに俺も動かない方がいい。


 俺が動けなくなっていた間に魔大陸だけではなく、他国でも瘴気による被害が拡大している。メイド達や俺の情報網に加わっている人たちが何とかしようと動いてくれている。


「瘴気の被害はどんな感じに?」

「今のところ、瘴気だまりが元々ある国が結構大変みたい。それを見越してブランちゃんはメイドさん達を派遣していたんだけど思うんだけど、手が足りていなくて冒険者ギルドにも手伝ってもらってるみたいね」


 瘴気は、この世界で使われたエネルギーの成れの果てだ。魔力やらを使うと、この世界のどこかに瘴気がたまり、それが固まって魔物になる。その魔物が多く発生するところを瘴気だまりと呼んでいて、それがある国にはあらかじめ多めにメイドを置いているんだけど。


 それでも足りないとなると、今回はとんでもない瘴気が発生しているらしい。原因は多分公国がエンセルーラ湾で使っていた機械だ。周辺のありとあらゆるものから魔力を吸い上げてしまう、使ったら国際問題になるレベルの装置。他にも色々あるかもしれないけど急に増えたということから推測すると、これくらいしか今は情報がない。


 公国周辺の魔力を根こそぎ吸い上げて大量消費していたのなら、それだけの瘴気が発生したと言われてもおかしくはない。


「こんなことになるなんて……公国にも早めに手を出しておくべきだった」

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