表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
325/374

三百二十五日目 俺が寝ている間のこと

 肩を数度叩かれて目を覚ます。映像を送る系の機能は完全に停止しているから、復活したのは音と感覚だけだけど。


 パチパチと木が燃える音がしている。暖炉の音だ。


「ブラン、起きろ。帰ってきたぞ。ほら戻れ」


 真横からエルヴィンの声が聞こえる。多分俺の体を持ってるんだろう。言われるまま、精神を移す魔法を解除した。


 何かに引っ張られる感じがして目を開けると、ほぼ大破した機械人形が目の前にあった。それほど長い時間入っていた気はしないが、久々にこの体に帰ってきた気がする。なんだか変な感じだ。


「……エルヴィン、どうなったのか教えてくれ」

「いや、ソウルに謝るのが先だ。本当に心配していたんだぞ」


 ……そうか、そうだよな。


 俺、かなり勝手に突っ走って……本当に自己中心的な行動をした。スフィアさんにも謝らないと。


「わかった……ぁっ、立てない……」


 体の感覚がおかしくなってる。なぜかまともに力が入らない。


「仕方ないな。掴まれ」


 エルヴィンに背負われてソウルの部屋へと運ばれる。なんか……妙に恥ずかしいんだが。


 ソウルの部屋にはスフィアさんとピネ、カーバンクルもいた。そしてソウルの左腕は酷い火傷を負っていた。


 一瞬息が止まる。あんな火傷、俺の電池が切れる前はなかった。俺が寝ている間に、何があったんだ……


「ソウル……ごめん、俺……」

「いえ。僕もブランさんと連絡取れなくなったら同じことすると思うので、別に怒ってないです」


 怒ってないですとか言いながら、なんか圧を感じるのは俺だけだろうか……?


 でも、怒られて当然なことをしてるのは俺だ。色々と言う資格なんて俺にはない。


「体はどうですか? ちゃんと戻れてますか? なんか歩けてないみたいですけど」

「ああ、戻ることは戻れたんだが……体の重さとかに違和感あって。そのうち慣れると思う」

「そうですか。それは良かったです」

「………」

「………」


 無言……。どうしよう、俺は何を言うべきなんだ。腕のこと、聞いてもいいのか。


「ブランさん、謝る人、もう一人いますよ」

「えっ、あ、うん。……スフィアさん、すみませんでした。俺のために、色々動いてくれたのに……俺は、あなたを蔑ろにした」


 スフィアさんは少し驚いた顔をして、笑った。


「ううん。こっちも、結構強引に閉じ込めちゃったから。一緒に探しに行こうって、私から言うべきだったよ。ブランちゃんが一番大事なのは、その人だもんね。そのことを考慮するべきだった」

「いや、俺は」

「もういいの。それと『スー』って呼んで。これは絶対だからね」


 きっと彼女も彼女で色々考えてくれてた。それを俺は無視してしまった。今回一番悪いのはどう考えても俺なのに、みんな気遣ってなかった事にしようとしてくれている。


 それは、とても嬉しいし優しいんだけど……とても、苦しい。俺は多分誰かと一緒にいるべきじゃ、ない。


 何かに巻き込んで、心配させて、負担をかけさせてしまう。ずっと気づいていたけど、わからないふりをしていた。


 俺はこれでも、そこそこ強いから。ある程度できてしまうから。周りに無理させてしまったのかもしれない。


「……うん。ありがとう、スー」


 カーバンクルが突然近付いてきて俺の手を舐めた。まだ怖いのか若干腰が引けてるけど……


 でも、こいつから寄ってきたのは初めてかもしれない。


「ブランさん、多分言い出しにくいと思うので自分から言いますが、この火傷は昨日帰る途中でちょっと色々あって負ったものなのでこの前……ブランさんが寝る前のいざこざは関係ないです。これも魔法で治せるので気にしないでください。あと、ブランさんと戦っていた女性ですが……逃げられました。僕と対峙する前にどこかへ行ってしまいました」


 逃げられた、か……。あの至近距離で爆発が起きたんだから、さすがに無傷ってことはないと思うけど。


 火薬のことといい、聞きたいことはたくさんあった。が、それでソウルが無茶するのなら放置でいい。正直危ないのは変わりないが、各国に注意を促す程度しかできないな。


「あのあと、なんとか魔物を掃討して街を取り戻すことができました。ブランさんの守っていた門周辺は少し壊れてしまっているものの、避難民として他の街へ移住するほどのことでもなかったです。今、魔王様に頼んであの辺りの警戒網を広げてもらってます」


 家は俺が結構壊してしまったから……。責任感じる。


「あ、それとウィルドーズの王様と王子様だけど、キリカさんや私の弟子たちに付き添ってもらって、帰ってもらってるよ。今はここも安全とは言えないしね」


 スフィアさんが気をきかせてゼインたちを先に帰してくれていたらしい。今はレクスに天使が付いているとはいえ、俺もソウルもこんな感じだし。俺がいるから大丈夫、とか言って無理にでてきちゃった二人だったけど。


 キリカが一緒なら大丈夫だろう。


「あと……非常に伝えづらいんですが」

「他になにかあったのか?」

「獣人国からブランさんに刺客が向けられてるらしいんですが……心当たりありますか」


 ………はぁ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ