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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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三百十八日目 コルナピ教

 なんかわからんが、とりあえず牛に助けてもらったということだけはなんとなく理解した。


 だが、状況が全く読み込めない。


 牛がこの人たちを助けたというのは本当なのだろう。そこに関しては疑ってない。だってこいつ頭いいし。


 さっきの地震で俺がこの場から急に離れて怪我人を連れて行ったとき、こいつなら多分自分の体の大きさなら邪魔になってしまうと判断してこの場に残ると予想できる。何度でもいうが、俺よりこいつ頭良さそうだもん。


 それで周りの人たちを自主的に助けるのも、まぁやるだろうなと思う。


 そこまではわかる。で、周りの人たちがここまで盛り上がってるのがよくわからん。


 だってこいつ牛だよ? いや別に牛を軽視してるわけじゃなくて。


 牛に助けられて「救世主やぁー!」ってなる……? っていう率直な疑問なんだけど。


 これが人だったらわかるけども。牛よ? 偶然(・・)近くにいた牛が助けてくれた! って盛り上がるのは納得できるが、それで「牛様!」ってなる……? え、俺がおかしいのか?


(おい、あんた!)


 目を白黒させていると遠巻きに見ていたらしいお爺さんが俺の肩を軽く叩き、小声で話しかけてきた。


 急になに? っていうか誰ですか。


(少し離れたほうがいい! こっちにきなさい)


 ぐいっと引っ張られて牛から見えない位置へ移動させられる。


 急だし、結構この人怪しいから抵抗しようかとも思ったんだけど、目の前の牛様の人より話せそうだからついて行ってみることにした。


 離れた場所に移動し、お爺さんがため息をつく。


「あんた、あの連中には関わらないほうがいい」

「彼らは一体?」

「最近現れた変な連中さ。おかしな男が先導している怪しい団体でね、あの牛に助けられたことから神の遣いだと騒ぎ立てていて……あのままだと牛が可哀想にすら思えてくるよ」


 おお、このお爺さん牛の表情読めるのか。凄いな。


「牛のこと、よく見ていらっしゃるんですね」

「うちは代々牛車用の牛を育てているからな。牛の考えていることは大体わかるさ」


 牛車かぁ。最近減ってきたけど、まだまだ需要はあるもんな。馬よりも足は遅いけど力は強いし。


「あの牛、俺の……連れ、というかなんというか……俺が飼ってまして。さっきの地震で逸れて、まぁあいつ頭いいからと放置しちゃったんですけど、こんなことになってて。どうしようかと」

「あんた牛を街中に放置したのか……? いろんな意味でまずいな」

「それに関しては完全に俺のせいなんですが、用事もある程度片付きましたし……逃げちゃおうかなと思って」


 責任逃れだ。だって始末書とか書きたくないよ。キリカにこのことバレたら普通に俺の監督不行き届きってことで反省文かかされる。


 いや、ソウルにバレたら始末書というか罰ゲームになるんだろうけど。


「意外と大胆だな……あんた」

「よく言われます……」


 大胆に隠すけどバレる時も結構大胆だからその分叱られるリスク上がるんだけどね。舐めてんのかって余計に怒られる。


「それより、あの牛……どうするんだ? 助けようとしても確実に誰かに邪魔されるぞ」

「そうなんですよね……俺が魔獣契約してたらよかったんですけど、してないんで……しかも今は新規契約もできないし」


 魔法使えたらいくらでもやりようはあるんだけど、魔法が使えないからなぁ。俺基本的に喉乾くの嫌だから魔法は極力使わないようにしてた筈なんだけど、意外と頼ってたんだ。この旅で思い知ったよ……


 どうしようかな……流石にこれ以上牛を放置するわけにはいかない。


 ただ、回収しようにも絶対にあの牛様の人たちに邪魔されるだろうし。俺の牛ですとか言って連れ帰ろうとしたらボコボコにされそうなんだけど。なんか怖いもん。


 この体がそう大して強くないから、取ることが出来る手段がかなり限られてしまう。


「お、パルキュイじゃないか?」

「えっ? ……ユージンさん!」


 真後ろから声をかけられて、ふりむくと角鬼族のユージンさんがいた。頭の角はしっかり隠しているからパッと見はただの人だ。


 色々あって別れたのは大分前な感じがしてるけど、つい最近のことなんだよな。


 パルキュイ、なんてよくわからないあだ名だから一瞬反応が遅れた。まぁ、名乗ってないの俺だけどさ。


「なんだ、こんな近くにいたのか。それで、あの牛はどうしたんだ? なんか人に囲まれてるけど」

「よくわからなくて……ちょっと色々あって一時的に逸れてたんですけど、帰ってきたらこんなことになってて」

「……ああ、あいつらコルナピ教の信者か。あの感じは司教派だな」


 コルナピ教?


 ……全然知らん。


「あの、コルナピ教って?」

「ん? なんというか……一部集落で特に信仰される宗教だ。近頃急速に勢力を伸ばしてる。いくつか派閥があって、その中でも司教派は少数だが、たちの悪い連中がいることで有名だ。ちなみに、パルキュイって名前、コルナピ教の女神だぜ」

「? ってことは、ユージンさんも?」

「そう、コルナピ教だ。でも派閥が違うからあいつらはほとんど別の人種って感じがするけどな」


 ああ、俺のパルキュイって確か、牛に乗った女神の名前だったっけ……


 ってことは。


「もしかして牛が面倒なくらい絡まれてる原因は、パルキュイのせい……?」

「せい、というか……コルナピ教からは神の生き物という認識が強いな」


 あー……なんか余計に助け出すの大変になってる理由を聞いたかもしれない。

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