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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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三百十五日目 これは…バレる?

 いつも読んでくださってありがとうございます。龍木です。


 実はリアルの方でだいぶかなり相当忙しくなりそうなのです。一ヶ月くらい。


 楽しみに待ってくださっている方には申し訳ございませんが、更新が沈黙する可能性がございます。おそらく作者は元気ですので、心配してくださらなくて大丈夫です。


 感想やツイッターへのコメントなどは返すくらいの余裕はあると思うので、何かございましたらお気軽にご連絡ください。どうでもいい世間話なども歓迎です! ただ、返信が遅くてもご理解いただけますと幸いです。

 青年の援護射撃のおかげで助かった。


 しかもその後、おっさんも証言してくれた。おっさんのことはメイドが把握していたらしく、軽く会釈をして別れるだけでお咎めなしだった。


「た、助かりました……思っていた以上に怪しまれたので」

「格好が鉱夫らしくないからでは?」

「ああ、服装まで考えていませんでした」


 言われてみりゃ、そりゃそうだ。


 ちなみに牛はうまいことメイドから見て死角に入りこんでくれたから気づかれてすらいない。


 ……こいつ本当に牛? 中に人入ってないか? 俺より頭いいんじゃないのか。


 メイドたちが山に向かってしまったのでとりあえず街中まで送ることにした。


 今引き返しても鉢合わせるだけだしね。


「助けていただいたお礼をさせてください」

「礼、する」


 おっさんと青年にそう言われた。けど……別にお礼が欲しくてやったことではないし、食事とかもできないしなぁ。


 それにこの人達、生活がギリギリになってきたからあんな危ない場所に突っ込んでしまったんだって言ってたし、絶対に余裕ない。


 俺のせいでより彼らが苦しくなるのは本意ではない。助けた意味ないし。


「礼なら、あなた方の生活が楽になってからお願いします。俺は自分に多少余裕があるからあなた方を助けただけです。余裕がない状況の人から何か貰おうなんて、バチが当たりますよ」


 これは俺の本心だ。この人達に見返りを求めて助けたわけじゃない。そんながめつくないよ俺。


 直後、地面が大きく縦揺れした。


「っ、頭を守って伏せて!」


 近くにいた人たちは咄嗟にその場で蹲った。十秒ほど揺れ、収まった頃には露天の商品や窓際に飾ってあったであろう花瓶などが悉く地面に落ちて壊れていた。


 結構強い揺れだった。建物が倒壊していないのが唯一の救いか。


「大丈夫ですか、お二人とも」

「は、はい……なんとか」

「大丈夫」


 二人は無事そうだ。周りを見てみると少し離れたところに、人が倒れている。


 駆け寄ってみると、三十代くらいの女性だ。頭から血を流していて、すぐ近くには上の建物から落ちてきたであろう鉢植えがバラバラになった状態であった。


 抱えられている子どもは無傷だ。子どもを守って脳天に鉢植えを喰らったらしい。声をかけたが無反応。気絶しているな。


 頭から血が滲んでいる。出血量はそれほど多くはないが、結構鉢が大きいので内出血がひどい可能性がある。


 頭の血管からは血が多く出るから内部に溜まったら危険だ。


「お二方、治療ができるところまで彼女を運びたいです。お手伝いいただけますか?」

「もちろん、手伝います」

「手伝う」


 即答してくれた二人に、とりあえず長い棒二本と丈夫な布を探してきてもらうことにした。近くの露天に使っていた日除けを崩して持ってきてくれるらしい。


 その間に、とりあえず傷口を抑えることにした。上着を脱いで裂き、頭を軽く圧迫する形で巻いていく。他に外傷がないか見たが、他はかすり傷くらいだったので、気絶している直接の原因は多分脳震盪だろうな。


 露天商から譲り受けた日よけをバラして即席の担架にする。


 魔法が使えたら担架なんて無しに空中に浮かして運ぶんだけど、今は無理だ。人力で運ぶしかない。


 おっさんと俺で担架を持ち、青年に先行してしもらって診療所まで走る。女性に抱えられて無傷の子どもは大泣きし始めたが、なんとか青年が宥めて背負ってくれた。


 青年が声を出して道を開けてくれるおかげで、スムーズに診療所に到着した。中ではソウルたちが忙しなく動き回っている。


「……っ、誰か、この人を手当できませんか!」


 バレるかもしれないが、もうそんなこと言ってられない。


 入り口で叫ぶとメイドが数人飛んできて、女性の様子を確認する。


「こちらへ! 回復魔法をかけます!」


 おっさんと協力してベッドに女性を運び込む。


「状況を教えていただけますか」

「さっきの揺れで頭に鉢植えが当たったみたいで、後頭部から軽く出血してます。他の外傷はとりあえず見当たらなかったんですが、内出血の可能性があるのでなるべく揺らさないようにして運んできました」

「ありがとうございます。ここからはこちらで」


 包帯がわりの服を取ると、血はある程度止まっているのがわかった。メイドが数人がかりで回復魔法を使うと、傷が塞がっていくのが目に見えてわかった。


 はぁ……なんかホッとした……。


 自分で治療できない状況なんて初めてだったから、こんなに不安になるものなのかと。


 いつもなら自分で回復魔法使ってなんとかするんだけど、今はそれは無理だし。


 でも、なんとかなって良かった……! うちのメイド優秀! わかってたけど。


「お二人も、ありがとうございます。助かりました。これで俺への礼は済んだということで」

「済んだ、と言っていいのですか?」

「知ってる、人、だった?」


 いや、見ず知らずの人だけどね。


「あの状況でサッと動いていただけたから大事にならずに済んだんですよ、きっと。あなた方がいなければ、俺は女性を運ぶのにもう少し手間取ったでしょうし」

「そう、でしょうか」

「そうですよ。俺は助かったんで、これで貸し借りなしってことで」


 青年が背負っていた子どもはメイドに預けた。


 女性の目が覚めたら会わせてやる必要があるし、俺が面倒見るわけにもいかないしね。


 ちなみに子どもはあの女性の甥っ子らしい。なんとか本人の話を聞いて判明した。子どもだからか、話が二転三転してて理解しづらかったけど。


 こう考えると、イベルってやっぱり特殊だったんだなぁ、ってなんとなく思う。まぁ、日本にいた頃合わせたらあいつ俺より長生きしてるけどな。

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