表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
300/374

三百日目 馬を買いに

 いつもありがとうございます! 龍木です。


 とうとう三百部目で、でも普通に本編です。


 なんかあるかもと期待してた人には申し訳ないです。そして更新遅くてすみません……ポケモ○スナップ楽しくて……。

 歩きでは流石に時間がかかりすぎるが、この体では転移魔法は使えない。空を飛ぶって選択肢もないわけじゃないけど、目立ちたくないし適度に休憩をとるのも難しい。


 ……馬しかないか。


 ここは比較的魔大陸の近くにある町の倉庫だ。厩舎も近くにある。


 けど、そこから馬を連れ出して大騒ぎになったら本気で困る。


 メイドから見れば普通に窃盗だしね。……所有者が持ち出して窃盗ってよくわかんないけど。


 金を持ち出して町で買うしかない。


 だが、金庫は開けられない。なぜなら金庫を開けるには生体認証が必要になるからだ。


 ……体、持ってきてないから……持ってこれるのならこんな格好してないけどさ。


 そういうわけで、金はなんとかして作るしかない。


「仕方ない……売るしかねぇ!」


 とりあえず金になりそうな物を探して袋に詰め込み、こっそり倉庫をでた。


 換金できる場所なら町にたくさんある。ただ、身分が保証されていない状況でも換金してくれる所となると、ぼったくられる可能性が高いんだよな。この世界に来た時の俺みたいに。


 硬貨の価値すらわかってないと見抜かれた俺が迂闊だっただけなんだけど。


 とはいえ状況が状況だ。多少買い叩かれてもいい。とにかく金が要る。


 で、裏路地の質屋……というか金貸しの店に来た。店というか、テントだけどね。そもそも店を建てる許可は出ていないから、こういう形でしか店を開けないんだと思うけど。


 正直、全く信用できん。が、換金してくれそうなのが俺の知る限りここくらいしかなかった。


 扉がわりの薄汚れた布を捲ると、テントの中には数人の男と談笑する女性がいた。女性は三十代半ばくらいか。赤く染めた髪を軽く束ねている。


 突然入ってきた俺に若干驚きつつも、すぐに薄く笑みを浮かべて挨拶してきた。


「やぁ、初めてだね? 金貨し? 換金?」

「……換金で。なるべく早く頼みたい」


 この女性がここの支配人だ。このあたりでは有名な人で『酸漿(カガチ)』という通り名が付いている。


 カガチは「ほおずき」のことだ。元々は娼婦のまとめ役だったんだけど、色々あって客を毒殺しちゃってからは裏の金貸しをやっている。


 かなり有名な娼婦だったという噂は本当らしい。実際、すごい美人だとは思う。なんか危険な匂いがするから、正直お近付きにはなりたくないけど。


「それで、何を出す?」

「朝日石の砂時計」


 持ってきた物をそっとテーブルに置く。朝日石は陽の光を蓄えることができる特殊な石で、魔力がなくても明かりになることから『とてもエコなライト』扱いをされている石だ。


 ただ、この石は産出量がかなり少ないから市場に出回ることは稀だ。これも、偶然手に入った貴重品。


 その石を細かく砕いて装飾を施したガラスに入れたのがこの砂時計だ。おそらく上手く売ればウルク単位は確実に手に入る。


「朝日石……こんな物をどこで?」

「詮索は無し。こんな状況だ、多少安くても構わない」


 酸漿はそれを持ち上げてじっくり見て、大きくため息をついた。


「これは、買えないわ」

「……理由を聞いても?」

「買ったら私の命がないもの」


 命がない? これはそんな大層なもんじゃないぞ。確かに珍しい石を使ってるけど、それくらいだ。


 実を言うと作ったのうちのメイドだし。


 俺は機械系は得意だけど、こういった細工はあまり得意じゃない。ガラスの加工とか、すぐ割るから苦手だ。


「これ、盗品でしょ」

「どうしてそう思う?」

「ここに紋章が入ってるもの。『白黒』のね」


 ……あ。ヤッベェ……気付かんかった。


 そうだ、メイドが作ったんなら絶対紋章入れてるわ。俺が作ったやつは基本面倒だからそんなもん入れないけど、作ったのがメイドなら入れてて当然だ。


「あそこの人間が『白黒』の物をこんなところで売るなんて考えられないわ。こんな物を買い取ったら私が『白黒』の怒りを買って殺される」

「いや、殺さねぇよ……」


 俺をなんだと思ってるんだ。


 ……いや、それが普通の反応なのかもしれないな。俺がおかしいのかもしれん。


 うちのメイド、方々で色々やっちゃっているみたいだし。新興宗教みたいな盛り上がりを見せているのは間違いない。しかも結構過激なやつ。


 そんな噂とか聞いて、ビビらない方がおかしいか。


「……盗品ではなくてな……いや、盗品なのか? でも自分のものなのに……」

「さっさとお帰り。見なかったことにしてあげるから、早めに誠心誠意謝りに行くことをお勧めするよ」

「いや、それはそれで困るんだけど……」


 完全に俺の家に忍び込んだ泥棒だと思われてる。


 まずひとつ言っとくと。泥棒が俺のコレクション部屋漁って逃げられるのなら、その泥棒はやばいよ。


 ちょっと腕が立つとかそんなレベルじゃない気配の消し方してないと、入ることも出ることもできないと思う。


 ……と思ってる事は口に出さないけど。


「これは本人から貰った物というか、売って金にしろって渡されたというか」


 なんて言えばいいんだこういう時。


「……もし、何かあったらあんたを呪い殺すからね」

「それでいい」


 ……怖え、この人。








 交渉の末に2ウルクで売った。日本円だと二百万くらいだが、普通に売ってたらその数倍はしてたから仕方ないと思うしかない。


 測定器を確認すると、関節周りに熱が籠っていることがわかったので一旦休憩し、馬を取り扱う店に行った。


 この世界では馬車が主流だから馬を扱う店も一般的だ。


「……これですか」

「これです」


 と思ったら、馬を売ってる店に馬がいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ