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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 一冊目
3/374

三日目 ワールドマッチ前夜

 quest clear! とかかれた物が目の前を横切る。


「よっし。全員消費したものはないか?」

「大丈夫」

「問題ナーシ」

「オッケー」

「壊れてはないかな」


 ここにいるのは俺のギルドの初期メンバー。元々はたった五人の小さなパーティだった。


 タンカーが俺。要するに壁役だ。敵の攻撃を俺に集めてあとひたすら耐えるみたいな。でも俺は一応どのポジションでも行けるから人がいないタンカーに行ってるだけだけどな。


 盗賊シーフのリノ。最初のワールドマッチの方で偶々観客として見に来ていた人の一人だ。俺のギルドのムードメーカーになっている。武器は短刀だ。


 剣士(グラディエーター)のダイテーク。変な名前だが本名のアナグラムらしい。よく知らん。刀をブンブン振り回すお調子者だ。


 法術師ソーサラーのヒメノ。俺のギルドのサポートをしてくれる人で、氷系統の魔法をよく使う。あと凄い毒舌。それはもう猛毒。


 最後に治癒師ヒーラーのルートベルク。一言で言うと変人。二言で言うとすんごい変人。ただ、治癒系統の魔法は勿論攻撃力をアップさせるだとかの魔法とかも得意なので割りとオールマイティー。変人だけど。


 バランスはとれてるよな。変人揃いだけど。


 クエストを終えて基地として使っている酒場でドロップ品を整理する。


「今日はどれくらい?」

「そうだな。これとこれは武器の強化に使いたいから残すとして、ギルドの金にはいるのは100万ってところかな」

「思ったよりいったわね」

「結構高ランクのやつばっかり倒してるからかな」


 俺がドロップ品を弄っているとヒメノが覗きこんできた。


「え、なに?」

「ギルマスってタンカーやってたわよね」

「さっきもやってたじゃん」

「タンカーの次ってなんだったか覚えてる?」

「え? ………あー、騎士とか? 近接戦闘中心に転職して粗方終わったら魔法系だったかな。それがどうした?」


 ヒメノは訝しげな顔をして俺をじっと見てくる。何かおかしいことでもあったか?


「最初に選んだのは戦闘職よね?」

「何を今さら」

「じゃあなんで生産職も取得してるの?」


 あ。しまった。隠した方が良かったかな。


「内緒」

「ギルマスって秘密多すぎない?」

「ほら、秘密が多い方がかっこいいっていうじゃん」

「全然」

「酷い」


 実はこれはちょっとした俺の自慢だ。とあることをするとどの職業にもつけることができる。


 このゲームは転職を何度もすることができる。ただし、その職をカンストした場合のみだ。


 そして転職をするとレベルは全て1に戻る。だけどその分ステータスに補正がつく。それと獲得したスキルはそのままだから永久に強くなれる。職業を全部やりこめば、の話だけどね。


 騎士から転職すればattackに、盗賊から転職すればspeedにと少しずつではあるが初期ステータスがあがっていく仕組みだ。


 また、生産職と戦闘職は同時取得できない。つまり戦闘職から生産職に転職したいなら全部デリートして最初からやり直すしか手立てがなくなるんだ。


「ま、その内、な」


 俺が今使っているのは附与師の固有スキル、魔石分解。これは魔物モンスターを倒したときにドロップするもので武器につければ武器にプラス補正がつく。


 それをつけること自体は誰でもできるが魔石を自分好みにアレンジすることができるのは附与師だけだ。流石はうちのギルドの頭脳だな。俺みたいな考えなしを纏めるだけの知識量だったりは持っている。


「ふーん………それ新しく買ったやつよね?」

「そうそう」


 服の内側に魔石を入れると服に補正がついた。魔石で補正できる数って限りがあるんだけど、この新しく買った防具は100。俺が見たなかでも最高性能のものだ。


「ってそれ神速の魔石じゃない⁉」

「元々は高速の魔石だったんだけど、色々弄ってね」

「ギルマスってこのゲームの製作者じゃないでしょうね」

「違うけど」


 たまに聞かれるけど。俺は作った人なんじゃなくて色々試した結果裏技を大量習得しただけだよ。


「そういえば運営の方からこれ来てるわよ」

「ワールドマッチか」

「そう。明日でしょ? 頑張ってね」

「おう」


 小包を開くとブローチが出てきた。これが参加に必要でこれを奪い合うのがワールドマッチ。


 奪い合うって言ってもちゃんと戦わないと、とったことは認められない。隙をついて奪うとかなしな訳。


 普通に公式戦で勝ち上がるトーナメントみたいなもんだ。まぁ、俺の場合勝ち上がる必要ないんだけどね。勝ち上がってきた挑戦者5人に連続で勝てば俺のチャンピオン防衛が成功となる。


「それ明日持ってくんでしょ?」

「そのために今強化してんの。中々いい装備だろ?」

「よく見たらそれシリーズものじゃない」

「勿論」


 シリーズものっていうのは全部揃ってはじめて本当に防具としての力を発揮するものだ。だから中々揃わないし無駄なまでに高値がつく。


 その代わりに防具や武器としての威力は段違いだけどな。


「なんて名前?」

「んー? なんだったかな………ああ、星操りシリーズだ」

「聞いたこと無いんだけど」

「俺も今知ったくらいだよ」


 だってこれなかなか揃わなくて何軒も店回って見つけてきたものだし。


「そのゴーグルはいつまでつけてるの?」

「外さねーよ。俺のアイデンティティーだからな!」

「はいはい」


 このゴーグルは俺がこのゲームを始めてすぐに懸賞で当たったものだ。防塵や望遠機能は勿論、照準を合わせたり水中でも使えるかなりの優れもの。


 これ当たったときは飛び上がって喜んだな。丁度ワールドマッチに出る少し前だっけ。


「武器は何で行くの?」

「そうだな………まだ決めてないけど扱いやすい『デッド・エンド』にするか、それとも火力の高い『業火』にするか………」

「また凄い武器持ち出すのね………って、今何の職だっけ?」

「今? 今は……聖騎士パラディンだな。竜騎兵ドラグーンと迷ったけど」


 両方とも幾つかの職業をクリアしないとなれない上位職だ。俺ぐらいなんでもやってると大抵の条件はいつのまにかクリアしてるんだよね。


聖騎士パラディンでタンカーしてたの⁉」

「おう」

聖騎士パラディンって防御低くなかったっけ」

「他に比べたら低いけど、あれぐらいだったら盾なしでもそれなりになんとかなるんだよ」


 攻撃特化の職だからな。防御はその分薄くなるけど氷の城くらいのレベルのクエストだったら防具なしでもダメージはそこまで通らない。


「さてと、俺そろそろ落ちるわ」

「そう。見てるから頑張ってね」

「おう!」


 片手を上げて家に帰り、防具を脱いでからゴーグルをとる。


「明日も宜しくな、相棒」


 いつもの場所に置いてからゲームをセーブしてログアウトする。一瞬意識が飛んでまた浮上し、目を開けるとなにもない俺の部屋が電気スタンドの明かりで浮かび上がる。


 いつものところにゲーム機をしまってから明日のためにイメージトレーニングを繰り返す。


「大丈夫、大丈夫。俺は負けない。いける、いける」


 ヒヤッとする戦いも無いわけではない。だから慎重に慎重を重ねるくらいが丁度いい。


 明日の公式戦では相手のHPを0にした方の勝ちになるから高火力の技で一気に仕留めればいい。


 なんども転職を繰り返してるからきっとそんじょそこらのプレーヤーよりも基礎的な攻撃力だったりはかなり高いはず。


 油断はしない。できるほど俺も強くない。


 どうせ俺は不良品。いつか自分でも勝てないような相手が出てくる筈。それまでこの地位を守り抜こう。そう最初に決めたから。


 バトルの型を思いだしながら何度も何度も同じ動きを繰り返す。どの体勢でこられても瞬時に判断できるように、何パターンも先を読んで、一番自分がされたくないことをする。


 ルーンを書く手を使わせないようにしたり、召喚獣だって妨害してやる。


 相手が気づいた頃には、


「もう、俺のフィールドだ」

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