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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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二百九十七日目 永久の牢獄

モンハンが楽しくて夜更かししてしまいます……

ーーー《ブランサイド》ーーー


 目を覚ますと、目の前にカーバンクルがいた。


 いるというより、俺の顔面に乗っている。


 身動ぎするとカーバンクルが顔の上から飛び降りた。着地の際に少しだけふらついたけど、体調は良さそうだ。


 ……あれ、ここどこだ?


 カーバンクルに気を取られて全く周り見てなかったけど、これ俺のベッドじゃない。ベッドどころか、部屋すら見覚えがない。家具が並んでいるが、どれもなぜか蔦に覆い尽くされている。生活感はまるでない上に、ほとんど見た目は屋外だ。


「薬草っぽい匂いがする……」


 ぼんやりと周りを見渡していると、ガチャリと音がした。音の方に目をやると、スフィアさんがいた。


「起きたんだね、よかった」

「えっと、すみません。俺なんでここに……?」

「その前に聞かせて。どこまで覚えてる?」


 どこまで……って言われても。確か、国崩しの報告を各国にして、それから……


「今日って、国崩ししてから何日経ってます?」

「十日だよ」

「は?」


 十日? なんでそんなに経ってんの?


「国崩しの後の二日くらいしか覚えてない……」

「やっぱりそうなんだ」

「やっぱりって?」


 スフィアさんは目の前まで近付いてきて、仁王立ちした。


 その位置はちょうど俺と扉の中間地点。


「落ち着いて聞いてね。ブランちゃんはお家で倒れたの。ちょうど一週間前、つまり国が倒れてから三日後に。魔大陸に行っていたライトさんが送還されて、その代償もあったみたい」

「そう、かん……?」


 何も、覚えてない。ライトが、送還された?


「ソウルは? ……ソウルは、無事ですよね?」

「それが、わからないの。通信機がなぜか通じなくて、定期連絡すら来ないみたい」


 何が、どうなってる。俺がいない場所で、いつも何か悪いことが起こる。


「エルヴィンさんが緊急事態ということで指揮をとって、魔大陸に行ったの。まだ、連絡は来てない」


 エルヴィンが、魔大陸に行った? そもそも通信機が使えないってどういうことだ。


 確認しないと。俺が、いかなきゃ。


「どういう、つもりですか」

「だめだよ。これが私の仕事なの」


 立ち上がろうとした俺の目の前にスフィアさんが立ちふさがった。扉に向かう一直線上に立っていたのは、俺を動かさないためか。


「俺の邪魔をしますか……? スー……」


 この十日の間に俺の体は元に戻ったらしい。まだ本調子とは到底言えないが、ここを強行突破して魔大陸に行くくらいの力ならある。


「ごめんね。気持ちは、痛いほどわかるよ。でもね、これがエルヴィンさんとの約束なの。また倒れちゃうかもしれないブランちゃんは行かせない。行っちゃダメ」


 カーバンクルが足に噛み付いてきた。ほとんど痛みはない。なんか噛まれてんな、とはわかるがなんの痛痒も感じない。


「スーには、感謝しています。友人としても、とても良い関係であると思っています。……ですが、今回の件は譲れません。何が何でも、俺は」

「そう、言うとは思ってたよ。エルヴィンさんもブランちゃんはそう言うだろうって言ってた」


 どこか諦めに似た声を出したスフィアさんはゆっくりと俺の前から動いた。


「ブランちゃんは止まらない。それは分かってるつもり」


 そしてカーバンクルを抱えて扉にゆっくりと近付き、開けた。蝶番が軋む音がする。


「だから、止める方法はこれくらいしか思いつかなかったの。……本当に、ごめんね」


 嫌な予感がする。急いで扉に向かって走ったが、足がもつれて転んだ。足首に蔦が巻きついている。この壁中の蔦、動かせんのかよ!


 一瞬蔦に気を取られた隙に扉は閉められ、鍵をかけたであろう音がした。


 直後、ドアノブが消える。


「まさかッ!」


 すぐに扉付近を探すが、ドアノブがない。それどころか、扉すら消えている。完全に出入り口を消された。


 いや、正確には出入り口はある。だが、どこにあるかは全くわからない。


 これは『永久の牢獄』だ。


 古い魔法の一つで俺が以前使った、足を犠牲にして魔力に変える魔法と似た経緯で禁術指定された魔法だ。


 旅人を迷わせる妖精の悪戯で使われる魔法を模倣し、それを更に凶悪にした魔法。俺も資料でちらっと見聞きした程度で、まだ現存してたことが驚きなくらいの骨董品。


 と言うのも、魔法とは言いつつこれには特殊な道具が必要になる。その媒体がそもそももう存在しない物質だと聞いていた。だから発動は物理的に不可能だったはずなのに。


 名前の通り、人を永遠に閉じ込めることのできる魔法だ。とはいえ鍵はある。この部屋のどこかにある「何か」で「何か」をしなければならない。


 この魔法で厄介なのは「何か」がなんなのかも「何を」するのかもわからない点だ。一応の救済措置的な感覚で鍵は用意されているが、達成はほぼ不可能というのがこの魔法が禁術指定された理由だ。


 誰かが閉じ込められた際、本当の解き方を知っている人がそれを教えてくれない限り、誰も出ることができないからだ。それは外にいる人も同じだ。


 外からもこれは開けられない。中からしか開けることはできず、ある一定の行動を取らなければならない。


 誰かが捕まって、それを助けに行くために敵を皆殺しにしたら開け方を知っている人まで殺しちゃって、結局捕まった人は永遠に出られなくて餓死した、なんて話もある。媒体を使うという魔法の性質上、術者がたとえ死んでも牢獄自体は残り続ける。


 これほど便利な人攫い道具はない。なにせ攫ってきたところで、相手はさらったやつの一派を殺せない。助けようとして下手に敵を殺してしまえば救えないというパターンがあるからだ。


 今一番の問題は、俺がそれに囚われているというところだが……


 とりあえず殴ってみたが。さすがは古代の魔法。正規の方法以外のやり方はビクともしない。


 できるなら壁ぶち抜いていこうと思ったんだが、無理っぽい。


「何とかして、出ないと……!」


 不安が膨らむばかりだ。

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