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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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二百八十六日目 人は裏切る生き物だ

 とりあえず当面の目的は果たせた(理由はよくわからんけど)から、一先ず命の雫を探してもらっている他の拠点のメイド達に探す必要がなくなったと連絡してもらった。


 この街からだと直接外とは連絡取れないから、エルヴィンに街の外まで出てもらって連絡を頼んだ。


 連絡取れないの面倒臭いな。正直かなり不便だから、この件が済んだらすぐに出たいけどゼインの用事が終わってないんだよね……。


 って言うか今更なんだが、なんで俺はゼインの予定に合わせて動かにゃならんのだ?


 ウィルドーズの外交問題なんて俺関係ないよね?


 愚痴ったところでどうにもならないけど。


 そんなどうでもいい事を考えていると、紅茶を持ってきてくれたメイドの一人が話しかけてきた。


「マスター、魔導師殿(スフィア様)のところに今から向かわれますか?」

「そうだね。命の雫以外の準備を頼む。俺の収納に入れていくから、馬車は要らないよ」

「お供の者はどうされますか?」


 同行者か……正直、俺一人で行きたいんだけど、そんなこと言ったら絶対なんか怒られるから言わない。


 街の中での移動だし、大して危険もないとは思いたいけど、そう言っても引き下がらないしな。


 でも大人数は避けたい。スフィアさんと俺が友人関係だと大々的に知られると厄介なことに繋がりかねない。


 今の俺見て「情報屋だ!」と気付ける人はそんなに居ないと思うけど、念には念を重ねておかないと不安だ。


 もし戦うってなれば魔法ならともかく、近接戦できないし。


「ピネと……ユリアと、ジーナで」

「……メイド長ではなく?」

「うん。キリカは何かあった時のために残っていて欲しいしね。エルヴィンも居ないし、それ以外のメンバーだとこれが最良だろう。流石に常駐のメイドを大きく減らすのは拠点維持の最低人数ギリギリになりかねないから」


 ユリアとジーナはメイドの中では立場があまり高くない。


 と言うのも、二人とも結構脳筋で色々と雑だからだ。掃除とかたまにサボってるし。


 ……俺もサボる気持ちわかるから別に指摘しないけど。いや、そもそも数時間おきに床ピッカピカに磨き上げる必要ないと俺も思ってる。


 俺の家めっちゃ綺麗だからね? 新築かな? って思うくらい。


 なんなら新築より綺麗かもしれんわ。


 話がずれたが、二人はその……ちゃんと丁寧に業務しないってんで、あんまり他のメイドに好かれてない。ただ、近接戦闘のスキルだけは異常に高い。


 ナイフを使った超近距離メインのユリアと馬鹿でかいグレートソードをぶん回す中、近距離メインのジーナ。


 二人でタッグを組んで戦った場合、エルヴィンでも使う武器によっては梃子摺る相手になる。


 エルヴィンは武器の扱いに関して天才的だから同じ懐に入り込む武器を持ってたら確実にエルヴィンが勝てるけど、槍とかだったら彼女らが勝てる。とまではいかないかもしれないが結構いいところまで行けると思う。


 ちなみに魔法なしの条件だったらソウルは瞬殺できると思う。


 ソウル、ゲームのプレイ時間の9割は魔法職の育成に力入れてたからな。魔法の威力は高い代わりに近接戦は足手まといに近い。


 そんな理由で、彼女らはここじゃかなり強い方だ。一般の冒険者なら手も足も出ないんじゃない?


「確かに戦闘力は高いですが、頭が弱いですよ?」


 おお、ズバッと言うね。まぁそれは俺も知ってるけど。


「今回は別に交渉するとかじゃない。ただ友人の家に遊びにいくんだから、別に仰々しくする必要もないでしょ」

「……そうですか」


 理解はしたが納得はしてないかな。正直俺が危険な目にあうより拠点をなくす方が今はまずい状況になる。


 拠点を失う可能性があるのならキリカは連れていけない。確かにここにいるメンバーで一番強いけど、キリカを動かしたらここが手薄になってしまう。


 戦力の分散をしたくないから、ユリアたちもここに残すべきではあるんだけど、それを提案したら却下されるだけで話進まないからこれでいくしかない。


 この拠点使うのが俺だけならキリカ動かして良いんだけど、ここにはレクスとゼインがいる。


 仮契約とはいえ幻霧もいるけれど、幻霧は正直信用して良いのか微妙なラインだ。もし何かあった時、臨機応変に動けるキリカを残す必要がある。


「マスター。メイド長がここに残る事を決定されたのは主人であるマスターなのですから、我々は有無を言わず従います。ですが、その上で言わせていただきます。メイド長は裏切り者です。どんな理由があろうと、裏切ったことに変わりはありません」

「そりゃあ、そうだけどね」


 文句言いたいのは凄いよくわかる、けど。俺は許すって決めた。今更曲げる気はない。


「俺は信じてる。だから残ってもらっている。君達全員だ。俺は人を見る目があるなんて言えんし、人は裏切るよ。それはなんら可笑しい事はない。それでも俺は最初に君達を迎え入れると決めた時から信じると決めている。……ごめんな、意見を聞いてやれなくて」


 人は裏切る。それは当然だ。俺は裏切りが全面的に悪いとは思わない。そりゃやられたら悲しいし、嫌だけど。


 でもお腹が空くのと、喉が乾くのと、楽しいと思うのと、辛いと思うのと。裏切りって、それらと大差ない人の生きる術の一つだと思ってる。


 だから俺は、結構裏切りには寛容だと思う。


 甘いって周りから言われるけど、別にそうじゃない。身内に甘い訳じゃない。


 俺は多分、人が裏切らないということを『信じることができない』んだ。

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