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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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二百八十日目 責任を感じて

 幻霧と幻夢で変換ミスしてごっちゃになってました。『幻霧』が正しい方です。

 拠点に帰ると、メイド達が慌ただしく動き回っていた。


 様々な準備や根回しを俺が丸投げしたからだろう。……ごめんね、みんな。


「ブラック、こっちだ」

「ああ。さっきの話、詳しく聞かせてくれ」


 ゼインの部屋に呼ばれたのでズカズカと入ったら壁際のスベンさんに凄く睨まれた。


 ……不躾だって言いたいんだろうな。俺が鑑みないのが悪いんだろうが、俺は気楽な態度で交渉したいからこれを崩したくない。


 この強情な俺のスタンスのせいで色々な場所から良く思われていないのは知っている。……やめるつもりないけどね。


 でも、一つ言わせてくださいスベンさん。確かにここは今ゼインの部屋だ。……だがこの家は俺の家です。俺の家を俺がどうしようが勝手じゃないですかね? と心の中で叫びます。


【へタレね】


 だって面と向かって言えないよ。この人なんか怖いんだよ。


 なんかわからんけど、怖い。


「これはライト君が蚤の市で見つけてきたものなのだが、ブラックには何かわかるか?」

「ええっと……占星術の周期表だな。かなり古いけど、まだ使えそうではある」

「流石だな。いくつかは消えた星の情報も載っているのだが、使えるところは多くある」


 占星術は魔法の一種だ。占いという言葉が入っているのでなんとなく分かるかもしれないが、その日の運勢を占ったりすることもできる。


 それだけだとただの星座占いみたいな物になってしまうんだけど、この世界の占星術ははっきりとした力を持っている。


 星の巡りによって様々、多種多様な魔法を使うことができる。星がどんな位置にあるかで使える魔法が変わってくるので使いどころは難しく、狙って放つものというよりランダム性のある魔法という立ち位置にある。


 ただ、ランダムの要素が強い分威力も強い。少ない魔力量で高い威力の魔法を使えるため、魔力量の少ない人が一応覚えておいて損はない魔法ランキングでは常に上位の魔法だ。


 俺の場合は魔力そこそこあるから使わないけど。不確定要素のあるバトルって苦手なんだよね。


 で、そのランダム性を少しでも無くそうとして作られたのが周期表だ。


 この日のこの時間帯はどんなタイプの魔法が出るのか、周期表を使えばある程度分かる。


 ただ、これが凄く面倒くさい。日付、時間、周囲の環境によって左右されるから、当てはめて見てみる、という時間を使うよりさっさと試した方が圧倒的に楽なんだ。


 周期表の該当部分探すよりとりあえずぶっ放した方が早いから、正直周期表は使えないものとして認識されている。内容全部覚えられる超人がいたら活用できるかもしれないけどね。


「それで、これがどうした?」

「ここを見てみろ」


 ゼインが示すところを見て条件を当てはめてみると、明日の夜に聖属性の力が強まるとの表記があった。しかもかなり星の巡りがいい。


「なるほど……確かに、高位の天使も呼べそうだ」

「その通りだ。そしてこの辺りの森には『幻霧の天使』が極稀に現れるらしい。それがこの星が近い時に多く見られるという」


 幻霧の天使……確か上級上位の天使だ。昔は人と契約していたと聞くが、それもずっと前の話。霧を使った魔法を得意とし、相手を惑わすことに長けた天使。


 俺もそれくらいしか情報を持っていないから、実際はどんな天使なのかもさっぱりわからない。


「それで、聖の適性の高いレクスがその幻霧に頼むのか? ……そもそも来る保証もないのに」

「まぁ、それは『来たら運がいい』程度に考えるべきだろうな。出会えたとして、交渉に持ち込めるかもわからない」


 肝心のレクスは今、エルヴィンと一緒に幻霧の供物を集めている最中だとか。幻霧の供物はそれほど珍しいものでなくてよかったはずだから、供物は確かになんとかなるだろう。


「……ゼイン。お前はいいのか? レクスを一人で向かわせることに対して、何も思わないのか?」

「思わないはずがない。大切な息子だ。本音を言えば危ないことは全て回避してもらいたい。……だが、ブラックを失うことは五大国家、そして魔族領全体の損失だ。個人的にも、数少ない友人であるブラックはなんとしてでも救いたいと考えている」


 ゼインはそこまで言って「まだ恩も残っている」と付け加えた。


 俺の足を見ながら言ってるから、多分ゼインを治すために俺が足一本落としたことに未だに責任感じているんだと思う。


 責任感があるのは大事なことだが、気にしなくてもいいことを悩み続けていたらいつか疲れるだけなのに。


 そう伝えてはいるんだけど、本人からしたらそうは思えないんだろうな。俺だって同じ状況なら自分のせいだと思ってしまいそうだ。自分でやっておいてなんだけど、俺って結構ずるいことしたと思う。


 あの時はめちゃくちゃ焦っていて、とにかく王妃様のお腹の子とゼイン達を守らなきゃって思っていたから、そのための代価なら足の一本や二本惜しくないって考えた。


 実際そうでもしなきゃゼインは死んでた訳で、俺はやったことに関しては後悔はしていない。


 けど、やったことはズルい。ゼインに頼まれたわけでもないのに、自分で自分の足を切り落としてゼインの怪我を治しました、なんて状況は治された側からすればかなり恩着せがましい行為だ。


 そしてゼインはそれに引け目を感じてしまっている。俺の迂闊な行動で、今も悩んでる。


 俺と会う度に足をちらっと見ている事は知っている。それに関しては俺も謝ったけど、でも謝罪は受け入れられていない。ゼインは真面目だからな。


「それに今回の件はレクス本人の希望でもある。婚約者を守れない男は男じゃない、と叫んでいたぞ」

「………そう……」


 レクスの発言に……なんかちょっと気が抜けちゃったのは俺だけか?

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