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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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二百七十一日目 獣人族に囲まれた

 遅くなりました……。レポートってなんなのでしょう……? 何千字も書ける話題なんて無いんですが……。

 頭を壁に打ち付けた衝撃で目が覚めた。


「あだっ……!」


 地味に痛い。泣きそう。っていうか頭軽く打っただけでこんなに痛いとか不便すぎる……


 暫く悶絶してから顔を上げると、亜竜車の中には誰もいなかった。窓にはカーテンがしてあって、外からの情報は得られない。


 緊急時には上や床下から出られるように一応扉が付いているんだけど、そこもなぜかロックがかかっていた。


 ……嫌な予感がする。


 とりあえずいつもの戦闘服に着替えてからリリスを取り出そうと右手に左手を突っ込んだ。が、


「……え、リリス重すぎ……こんなの振り回せるわけないじゃん」

【後で覚悟しておきなさい】


 ごめん。ちょっと持てないわ。


 自分の筋力の衰えに愕然とする。そうか、みんながリリス持って「なんだこれ⁉︎」って叫んでる気分はこんな感じなのか……


 俺は最初から扱えてたからそこまで重いとは感じなかったんだなぁ。


【現実逃避してないで、どうするの?】


 リリスが使えないのは予想外だったが、いくつか武器くらいは用意がある。それで凌ぐ。


 最悪の場合重火器をポイントで買う。あんまりやりたくないけど。


 とりあえず軽めの短刀を腰に挿しておく。


 ……短刀ですらなんか重心がブレるんだけど。ここまでくるとなんかもう悲しい。


 そこはもう仕方がないので虫型のアニマルゴーレムを数匹放って窓から外を見る。虫が窓から覗いてても気にならないからね、普通。


 それとこの馬車にはこういう時のために虫型ゴーレムならギリギリ通れるレベルの小窓が付いている。大きさ的には小窓というより穴だけど。そこから出て行ったゴーレムの視界を見てみると、亜竜車の周りを結構な人数の人が囲んでいる。


 メイドたちはみんな無事だが、亜竜車を背にして臨戦態勢だ。


 見た感じだと盗賊に襲われたのか? なんて不運。しかもなぜ誰も俺を起こしてくれないんだ。


 状況からするとそれほど長い時間相対しているわけではなさそうだが、いつ急にバトルが始まってもおかしくなさそうな雰囲気。


 この辺りの情報ってあまり入ってこないから、この人たちの情報はゼロだ。なんも知らない。


 見た感じ盗賊っぽいけど、実は全然違うって可能性も十分にある。


 不思議なのは獣人族が多いことか? 獣人族が多く住む大陸にそこそこ近い立地の国とはいえ、半分以上が獣人族とは珍しい。あんまり俺も見たことないからな。


 さて、俺は出ていくべきなんだろうか? ちょっと様子見するのがベスト?


 そんなことを考えていたら、距離を取りつつ獣人族の男性が話しかけてきた。


「オマエラ、ナニモノ!」


 俺はそう言われたのがわかったが、あまりにも癖のある発音だったためにメイドたちは聞き取れなかったらしい。


 全員怪訝そうな表情で獣人族を注意深く観察している。


 わかっていなさそうだから、メイドの一人、シェロにゴーレム経由でこそっと話しかけた。


『シェロ、何者かって聞かれてるぞ』


 するとシェロはぎょっとして小声で、


「ま、マスター! 申し訳ありません、お疲れのところ」


 と言った。この状況云々より俺を起こしたことを詫びるってどうなのさ。先に状況説明してくれ。


『シェロ、俺の名前はとりあえず伏せてココザナに向かっている旅の者と相手に言ってくれ』


 ココザナはここから少し進んだところにある街の名前だ。それほど大きな街ではないが、各国の流通の境にあるので色々と物が集まる。この辺りを旅しているのならそこに向かうと言っても珍しくないだろう。


「こ、ココザナに向かっている旅の者です」


 シェロの回答に獣人族の男性が、


「ショウニン、カ?」


 と聞いてきた。まぁ一応情報屋だし、商人だけども。


 ここは正直に答えていいだろう。後々俺が出ることになったら情報屋だと説明しやすくなる。


『商人かと聞かれている。商人だと答えてくれ』

「商人です」


 獣人族の男性は周りの獣人族とアイコンタクトをとってから軽く頷きあい、


「オマエラ、バシャ、ト、モチモノ、ゼンブ、オイテケ。イノチ、トラナイ」


 わぁ……典型的すぎる盗賊文句。


 持ち物置いてけって言われても、大事なものは俺の収納に基本全部入ってるから置いてくものもないんだけど、亜竜車はないと困る。これ特注品だし、普通に貴族用のやつだから無駄に金かかってる。


 本当は貴族用のやつにするつもりなかったんだけど、貴族用のにすると盗賊被害って一気に減るからわざとこれにしてたんだけどね。今盗賊被害にあってるけど。


 貴族の馬車を襲うと、下手すると国が動いて盗賊を排除する方向になるからね。盗賊もそんな面倒なことを避けたいから、貴族は無視するという暗黙の了解が存在するらしい。


 けど、この人たちは襲ってきた。言葉も何かおかしいし、本当は盗賊じゃなさそう。


 どう見ても戦闘向きじゃない女の子とか混じってるし、絶対寄せ集めメンバーでしょこの人たち。


『シェロ、馬車と持ち物置いてけって言われてるけーーー』

「ふざけないでください、皆殺しになりたいんですか?」


 ………。うん……うちのメイド怖すぎません?


 わかっちゃいたけど、血の気が多い。メイドってこんなもんなの?

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