二十七日目 お金
その後も色々確かめた結果。
・ポイントは魔石を壊すことで手にはいる
・自分で倒した魔物の魔石しかポイントにならない
・全ての魔物が魔石を持っているわけではない
・二人で一緒に戦った場合、とどめを刺した方がポイントに変換可能
ってことがわかったぞ。
「ポイント手にはいる術があって良かったよな」
「ほんとですね。僕なんて今まで貯めてたぶん全部没収されてましたし………」
貯金癖があったヒメノからしたら辛いだろうなぁ……結構貯まってたらしいし。
俺? すっからかんだっていってるだろ? ははは。
因みに女の子三人組は死体の解体をしてくれた。お礼に半分あげたら要らないって言われたけど四分の一押し付けることに成功した。
こんなにあっても邪魔なだけだから食べ物さえもらえれば十分なんだけどな、俺からしたら。
それに金銭がポイントにできないのも結構痛い。
魔石を持っている魔物はそんなに数が多くない。強いやつは持ってることが多いけど簡単にやれる魔物(入り口に一杯いた蝙蝠とか)は持ってないことが多い。
あの時大量に倒したのに入ったポイントが少なかったのは魔石持ちが少なかったからなんだ。
惜しむらくはあの弾丸ウサギ。魔石あったんだろうな。強かったし。まぁ、今はレイジュの腹のなかだけども。
因みに貰えるポイントは強さによって異なっていた。弱いやつほどポイントはもらえない。そりゃそうだ。
「あの、これからどうされるんですか?」
「あー、なんにも決めてないんですよね。ヒメノ、どうする?」
「とりあえずこの山なんとかしません?」
「………そうだな」
山っていうのは大量にとれた魔物の残骸。解体して積み上げたらまるで山になったとさ。俺が急拵えで台車を作ってレイジュにくっつけたけど邪魔で仕方がない。
「あ、じゃあ町で売ったらどうでしょうか? 町の前に売り場がありますよ」
「そうしよ………ん? でも自分達身分証明書とか無いんですけどその辺り大丈夫ですか?」
「ミブンショウメイショ? 何か判りませんけど、誰でもお金に変えてもらえますから大丈夫ですよ」
「おお、割りと適当」
セキュリティガッバガバだな。まぁ、こんなもんなのか?
「じゃあ行きましょうか。案内しますよ」
「ありがとうございます」
相変わらず三人組はレイジュが怖いようなので俺が一人少し後ろから三人組+ヒメノの四人をレイジュの上に乗って追っ掛けながら進むことになった。
……寂しいよぉ。人見知りコミュ障でも寂しいもんは寂しい。
俺だって話すの嫌いじゃないもん。これでもJKだからな。忘れてる人多いと思うけど俺はJKだ!
じょしこーこーせーだ!
うん。一応は。
レイジュを撫でながら適当に手綱を操る。レイジュ頭いいから勝手に移動してくれるんだよね。だから操る必要ほぼない。
「おお、見えたな」
ゴーグルには巨大な城壁が映っている。鑑定をかけてみたら『アロンテッド鉱石が混ぜ合わさっている巨大な石壁』って。
アロンテッド鉱石ってなんだよ。
アロンテッド鉱石にもう一回鑑定をかけてみたら『魔力を分散させる鉱石。魔法の威力を8割減らす』ってでた。
なんかファンタジーな鉱石だな。ってか魔力ってなに。MPの事かな。
「あ。あそこかな」
壁の前に小さな詰め所みたいなところがあって、そこの横に壁の中へ続く扉がある。その横に買い取ってもらえそうなスペース発見。
「ブルル」
「ん、ごめん」
ボーッと撫でてたらレイジュの目のなかに入りそうだった。ごめんよ。
そのまま四人はそこへ行き、なにかを話している。あ、ヒメノのハンドサイン。こっちへ来いってやつだ。
俺達はクエストをこなす為にハンドサインを独自で作り、それをギルド内で使っている。
細かく指定ができるから使いやすいんだ。
「ヒッ⁉」
「クルルル…………」
「ああ、大丈夫、怖くないから。な? ほら、可愛い可愛い」
受け付けにいるおっさんがレイジュを見てビビった。レイジュも流石に落ち込んだので励ます。
「怖くないもんなー?」
「ギルマス。さっさと売るもの出してください」
「わーってるよ」
レイジュにくっつけてある台車を外してそれをそのまま引摺り、受付の奥へ持っていく。
「君、これをいったいどこで………?」
「ここからちょっと離れた森の前で。どれくらいで買ってもらえます?」
「見せてもらうよ」
「どうぞ」
レイジュもいじけてると思うから早くしてほしい。
レイジュ可愛いんだけどな。ちょっとデカイから怖がられるんだよな。
ほら、トイ・プードルは可愛いだろ? あれが数メートルでかくなったらどう思う? って感じ。
レイジュはあれでも一応竜種に入る。全然ドラゴンっぽくないけど。スカイドラゴンの亜種らしい。俺もよく知らん。
「鑑定、終了いたしました。これが鑑定結果です」
はい、読めなーい!
何語ですか。異世界の定番、なぜか言葉と文字は通じる、じゃなかった。言葉は通じても文字は意味不明。
なにこれ、アラビア語? 読めん。っていうかただのゲーム中毒JKがそんな多数の国の言葉解してたら怖いわ。
いや、待てよ?
ゴーグルをはめてみると、文字の上から日本語の内容が。よっしゃぁ!
・ブラックタイガーの牙
・レッドシャークの鱗
・フォレストボアの毛皮
エトセトラエトセトラ…………
うん。読めてもわからん。見たことない魔物ばっかりだ。色の名前つけときゃいいだろみたいな感じはするのって俺だけ?
「状態も非常にいいので192アルクと599イルクでいかがでしょう?」
なんだそりゃ。アルク、イルクってきたら次はウルク、エルクってか? 多分金額の話だろうね。でもこれがどれだけの値段なのか俺にはわかんないかな。
「え?」
「かしこまりました。少々お待ちください」
いや俺なんも言ってない。あ、因みに女の子三人組の分はもう別で渡してあるからこれは全部俺とヒメノの共有財産だ。
「お確かめください」
袋に入れられた金貨と銀貨と銅貨、それと……石貨って言えばいいのか? とりあえず石でできた硬貨、それが入ってる。
お確かめくださいって言われても、どれがアルクでどれがイルクなのかわからんから確かめようがない。
そう思いながら覗いた瞬間、ゴーグルに192アルクと598イルクと表示された。あ、これお金数えることもできるんだ⁉
ん? 1イルク足りない。
「あの、足りないと思うんですけど」
「そんなはずはありません。お確かめください」
? なーんか怪しい………。
「いや、別にいいんですよ? 自分があることないこと噂にしちゃえば仕返しできますし?」
ちょっと脅してみた。
「も、申し訳ございません‼ 1ウルクつけますので、どうかご勘弁を………!」
「はい、なにもしませんよ。多分」
なんか増えた。ま、いいや。1ウルクっていうのは白金貨だった。プラチナだよプラチナ。
色々手続きを終えて外に出るとレイジュと女の子三人組が戯れていた。そしてなぜそこにヒメノ。お前が混じっている。
レイジュも満更では無さそうな表情だ。酷い。俺と居るときよりいい表情してやがる。
キャッキャキャッキャ言いながらレイジュの羽毛に顔を埋める子達見てたらなんか一気に俺って寂しいんだなって思っちゃった。
精霊か使い魔呼ぼうかな………あいつらなら俺を無視しないと思うし。特にあの悪魔は。
いや、精霊の方はどうだろうな……あいつツンデレだもんな。寧ろこういう時、俺が置いていかれる気がする。
なんか激しい疎外感。良いもん。俺は一人でいいんだもん………なんか自分で言うと余計に悲しくなってきた。
「ヒメノ。とりあえず換金してきた」
「あ、ギルマス。いくらでした?」
「192アルクと598イルク、それと1ウルク」
「それって多いんですか」
「わからん」
貨幣価値なんぞ知るか。お嬢さん達に聞いてみた。
「凄いですね‼ 1ウルクあるなんて」
「あの、これってどのくらいの価値ですかね?」
「「「えっ………」」」
日本円とユーロとドルくらいだぞ俺が理解してる貨幣価値は。
「えっと、1アルクは石貨、10アルクで銅貨、1イルクで銀貨、10イルクで金貨、1ウルクで白金貨」
その後も説明受けた。で、わかったのは。
1アルクは10円くらい。石貨10枚で銅貨に、銅貨100枚で銀貨に、銀貨10枚で金貨に、金貨100枚で白金貨になる。
つまり、石貨は1円、銅貨は10円、銀貨は1000円、金貨は10000円、白金貨は1000000円くらい。
じゃあなんでアルクとかイルクとかって言葉分けるんだって思ったけど。アメリカでもセントとドルとかそういう言い方するからそういうもんなんだよな。
で、話を聞いたところによると。
10ウルクで光金貨、その次に1エルクってのがあるらしくてそれはミスリル硬貨になるらしい。
出ました、ファンタジー鉱石! ま、俺も作れるけど。
で、今の俺達の所持金。2+190+8000+590000+1000000=1598192円!
多すぎて意味わかんねぇ。一日で100万よ? バブルですか? いや、俺バブル崩壊後に生まれたからバブルとか知らんけど。
お嬢さん達はこれが適正価格だと言っていた。
なぁ、じゃあ俺達100万円安く買い取られそうになってたのか? ぼったくりにも程があるだろ⁉
もう二度とあそこは使わん‼




