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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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二百六十五日目 宝物庫!?

 とりあえずカーバンクルの様子を見るために俺の部屋は立ち入り禁止にして、俺はリビングで一晩を過ごすことにした。何かあった時のために虫型のアニマルゴーレムを配置し、カーバンクルを落ち着かせるために接触はしないことにした。


 俺の部屋にベッドがあるから寝られなくなるが、一日くらいなら寝なくても問題ない。


 ……と思ったのだが。


「ね、眠い……めちゃくちゃ眠い……まだ日付変わってそんなに時間経ってないのに……」


 どうせ暇だしと書類仕事を片付けつつカーバンクルをこっそり見守るつもりが、眠すぎて何も手に付かない。


 本当にただの人間の女性並みの身体機能になっているのだろうか。


 頑張って紙の束を机に広げて読んでいたら一瞬寝たらしく、机に額を思いっきりぶつけた。


「あだっ⁉︎」


 結構鈍い音がした。普通に痛いし。泣きそう。


 これたんこぶになってないよね?


『もぉ、ブラン何やってるのよ』

「ピネ……いやもう本当に何やってんだろ俺……」


 派手にぶつかった音を聞いてやって来たピネが額を触って軽く回復魔法をかけてくれる。ちょっと痛みが引いた。


『あの狐はどう?』

「キツネ? ああ、カーバンクルか。薬が効いてるのか、ご飯ちょっと食べてから寝てるよ」


 こっそり状況確認した所によると、俺たちが部屋から出て行って数十分後、のそのそと起き上がってご飯を半分ほど食べてからベッドの隅へ行った。今はそのまま就寝中。


「鎮痛剤の浸けてある包帯って、今どれくらいあるか知ってるか?」

『一番効果高いやつ? 多分あと3本くらいじゃない? あれ普通に薬液が高いし』


 今カーバンクルの足に巻いている包帯は薬に数日浸して作る特別性のものだ。ただ薬を染み込ませるだけではなく色々と必要な工程があるからそこそこ値が張る上に保管も難しく、大量生産も厳しい。


 メイドに数人、元医者や薬剤師がいるから数本常備していられるが、普通だったら余程大きな病院でなければ取り扱っていることもまずないだろう。


 金はそこそこあるから気にしなくていいとしても、問題は時間だな。


「あれ一本作るのに一週間近くかかるんだよな。一回浸したらある程度放っておいても良いとはいえ手間がかかりすぎる」

『ソウルの回復魔法でも治せないの?』

「多分無理だな。骨が変な形であれくっついてしまっている以上、治癒力を上げる魔法はいくら使っても無意味だ。治療系統の魔法でなんとかしようとするなら、可能性があるのは時間逆行の魔法しかないと思うけど」

『ブランできるんじゃないの? 時間戻すの』

「一時間前こうなった、ってんなら全魔力使い切ったらいけるかもしれないけど、流石に時間が経ちすぎてる」


 時間を戻す魔法は、時間が経てば経つほどそれに比例して使用する魔力量が増える。


 なんとかして治してあげたいが、今は痛みを和らげることしかできない。







「……寝てしまった……」


 朝になって結局睡魔に抗えず寝たことを自覚した。


 気づいたら、朝になってた。


『私が見ていてあげたわよ。特に何もなく寝てたわ』

「おお、サンキュ、ピネ。そうかお前あんまり寝なくて良いのか……」


 悪魔は基本寝る必要ないが、精霊は睡眠が必要だ。最悪とらなくても良いけど能力に制限がかかる。


 でも一週間くらいなら特に問題はないはずだ。


『なんでライトを見張りにしなかったの? 悪魔だから寝なくて良いのに』

「ライトは上級の悪魔だから怖がるかもと思った」


 実は結構レアな人型だし、素が出なければただの礼儀正しい従者なんだけど。


 聖属性の動物にはちょっと怖いかな……と思って、思い出す。


「……俺が見てたら結局変わんない?」

『そうね。ブランってびっくりするくらいヤバそうな魔力垂れ流してるし』

「え」


 どうやら俺はヤバそうな奴らしい。そりゃカーバンクルも怖がって近づきませんわな!


 ため息をついていると、ゼインが起きて来た。


「ブラックか。どうした、こんな朝早くに」

「おはよ。俺は昨晩からここにいるぞ」

「そうか。カーバンクルはどうだ」

「寝てる」


 簡単に会話をしていると、家の扉がかなり大きな音でノックされた。


 ガンガンガンガン、と結構響いている。近所迷惑だぞ。っていうかまだ朝日昇ってそんなに経ってない時間帯なんだけど。


「出てまいります」

「えっ? キリカいつから居たの⁉︎」


 仕方ないから出ようかと腰をあげようとした瞬間にいつの間にか部屋に入り込んでいたキリカが玄関に向かって行った。


「……気付いてた?」

「いや、全く。つくづく思うんだが、ブラックの部下(メイド)を何人かウチの諜報員に欲しい」

「だからヤダって。彼女達が良いって言ったらいいよ」

「そう聞いたらブラックがいいと言ったら行くと返されそうなんだが」

「そうなったら諦めろ」


 コーヒーでも淹れるかと立ち上がった瞬間、数人の足音がこっちに向かって来ているのがわかった。


 キリカが扉をノックしてた人を家に通した? え、でもあのキリカが俺に断りなしに通すか?


「お待ちください!」

「ここだな! 開けろ!」


 リビングの扉越しにドタドタという遠慮のない足音が聞こえて来て、その後キリカの珍しく慌てた声に続いて聞こえて来たのは、知らない声だった。


 直後、扉がこっち向きに倒れて来た。


 そこから数人の男がキリカの制止を振り切って入って来て、


「貴様が例の情報屋だな! 窃盗の容疑で捕縛する! 抵抗するな!」

「「………?」」


 ……へ?


 窃盗? ……窃盗ってなんだっけ?


 ああ、泥棒か。……俺が? なんで?


「えっと、状況が掴めないんですけど。俺が何を?」

「しらばっくれるな! 貴様以外いないだろう、昨日の宝物庫荒らしは! 国宝の【天の槍】まで盗みおって!」


 え、何それ……普通に知らんけど。天の槍ってなに? 情報屋だからと言って国宝把握してるわけじゃないよ?


 というかなぜに俺に容疑がかかっとんの?


「えっと、証拠あるんですよね?」

「それはこれから見つける! いいから抵抗するな!」


 す、すごい! 人一人捕らえるとか恐ろしいこと言ってるくせに、びっくりするくらいの雑さだ!


 どうしようかと考えていたら、ゼインが耳打ちしてきた。


「ブラック、ここは抵抗しない方がいい。こちらもこちらで手を回そう。ブラックがやっていないことくらい、皆分かっている」

「ああ、助かるよゼイン。一旦指示に従っとく」


 というわけで、何の冗談か本当にわからんけど、俺は捕まった。

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