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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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二百五十二日目 今日はどうするか

 ベッドは自分で持ち込んだものを使った。


 ……これじゃないとぐっすり寝られないんだよね、俺。


 というわけでぐっすり寝て翌日。


 キリカが俺の支度をしている(何度言っても俺自身に俺のことやらせてくれない)間にこの国の地図を頭に叩き込んでおく。ある程度覚えてはいるんだけど、何軒か店が潰れたり出店したりしてるからね。


 ちなみにこの地図は社外秘。というか、持ってるの見つかれば下手すりゃ捕まる。


 アニマルゴーレムを駆使しての地図作成は、俺の特技になりつつある。


「マスター。本日のご予定はどうされますか?」

「とりあえず知り合いに連絡とって……まぁ、情報収集かな」

「ハヅキ達は既に?」

「ああ。四番以降はフル稼働だな」


 ちなみに、ハヅキは『小鳥ちゃん二号 ver.3 No.8』の名前だ。


 初代小鳥ちゃん二号は戦争時にぶっ壊れ、その後小鳥ちゃんニ号改を作ったんだけど、それも強度に心配があったから小鳥ちゃん二号改を更に改良した。ただ、改、ってつけちゃったからその後の改造ネームが思いつかなかったのでいっそのことver.3ってことにした。


 小鳥ちゃん二号 ver.3 はかなり汎用性が高い上に戦闘も可能な作りになっている。


 だから数が足りなくなって、プラスで11機作った。


 ハヅキって名前でなんとなくわかる人もいるかもしれないけど、No.1から順に月の異称で適当に名前つけた。


 No.1 睦月、No.2 如月、No.3 弥生、No.4 卯月、No.5 皐月、No.6 水無月、No.7 文月、No.8 葉月、No.9 長月、No.10 神無月、No.11 霜月、No.12 師走 となっている。


 No.1からNo.3が戦闘用であることを除けば他のゴーレム達に性能の差異はそれほど存在しない。


 ただ、No.10に関しては以前警察犬に食われて故障したという事実があるからまだ修理中だ。


 この中でもNo.8 葉月以降は隠密に長けている。神無月は犬に食われたけど。


「何かわかりましたか?」

「いや、あまりいい成果とは言えないな。そもそも街中に人の姿が少ないんだよ。盗み聞きしようにも、喋ってる人が少ない」

「そうですか……。我々総出で聞き込みをいたしますか?」

「別にいいよそんなことしなくても……」


 なんでこの人たち自分から俺の仕事を嬉々として増やして片付けてくの?


 何か問題があって情報を集めているのならともかく、ただの情勢調査にそんな本腰入れなくていいよ。


 っていうか休めよ。


【誰の影響かしらね】


 俺じゃないよ多分。


【貴方以外誰がいるのよ……】







 一通り朝の準備を終えて部屋を出る。食堂では、屋敷にいるほぼ全員が集まっていた。


「おお、ブラック。遅いな」

「俺は食事いらないから。……なにやってんの?」

「ショーギというゲームだ。なかなかに面白い」

「あ、そう……」


 ゼインは覚えたての将棋でソウルと対局していた。


 何やってんだよ本当に。外交に来たんじゃないのか?


 それとも外交ってこんな風に気軽にやるもんなのか? 気を抜きすぎだと思うのは俺だけなのだろうか。


【一応、異常に強いと噂の白黒の屋敷よ? ここに襲撃しかけてくるのは余程のバカか物知らずね】


 つまり俺は用心棒としてタダ働きさせられてるようなものってことか……。


 別にいいけど、なんか釈然としない。


「マスター。我々への本日のご命令はございますか?」

「いや、特にないよ。休憩しててくれ」

「休憩、ですか?」


 何その反応。休みでいいよみんな。


「ああ。休みだ。有給だ。好きに過ごせばいい」

『え、おやすみなの?』

「あ、ピネは俺と一緒に情報収集な」

『えー……』


 召喚されてる精霊が文句言うな。


 これでもピネとライト、レイジュを召喚しっぱなしの状態って結構維持が大変なんだからな。


 少しくらい働け。


「では、私もご一緒します。主」

「ああ、頼むよ」


 ライトも俺についてくる。となると今日一緒に行動するのは後一人か二人でいいか。


 すると、次の手に悩んでいるらしいゼインの反対側から声が聞こえた。


「じゃあ僕もいいですか?」

「いいのか? 休み潰れるぞ」

「別にいいですよ。そんなに疲れてませんし」


 ソウルもか。壁際にいたエルヴィンは肩をすくめて小さく笑う。


「出遅れたな。ではゼイン殿の護衛でもしているか」

「ああ、そうしてくれると助かる」


 ゼインとレクスは王族だ。護衛がついているとはいえ、不慮の事故でもあったら大変だからな。用心しておくに越したことはないだろう。


「む、エルヴィンも会談に来るのか? 良いぞ、共に行こう!」


 ……レクスのその呑気さはちょっと羨ましい。


 ちらっとスベンさんの方を見ると、苦々しい表情ではあったが何も言わなかった。


 諦めているのか、それともちょっとは認めてくれているのか。


 後者だと個人的に嬉しいし助かるんだけどね。


 これで、各々のやるべきことは決まった。


 俺とピネ、ライト、ソウルで情報収集。


 ゼイン、レクス、スベンさん、エルヴィンでこの国のお偉いさんと会談だ。


 まぁ、エルヴィンがいるなら大丈夫だろう。


 念の為メイドも数人つけることにして、とりあえず俺たちは外に出た。ちなみに、将棋はソウルの圧勝だった。ゼインはリベンジに燃えていたし、そのうち勝てるようになるんじゃないのかな。


 あいつ国王だけあって頭回るし。


 日差しを手で遮りながら空を見ると相変わらず荷物が飛び交っている。


「それで、どこに行くんです? そういえば知り合いがいるとかなんとか」

「ああ。まずはその人に会いに行く。この国の内外で有名な攻撃魔法の開発者で『魔導師』の異名を持つ、スフィア・ルルス」


 あんまり、いい思い出ないんだけどね……


「俺の……魔法具を木っ端微塵に粉砕してくれた人だよ」

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