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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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二百四十五日目 急ぎ過ぎず、最速で

 それから数十分後。散々話し合ったらしいスベンさんとゼイン、レクスが部屋から出てきた。


 あ、俺達は別室待機だよ。口出ししないって言ったし、何より俺が横にいたら話しにくいこともあるだろうしね。


「お。どうなった? いく? 戻る?」

「行くぞ!」


 レクスが飛びつきながらそう言ってきた。


 スベンさんが苦々しい顔をしているのを見ると、どうやらちゃんと解決したらしい。納得はしてないかもしれないけど、反論しないということは反対意見をゼインが捩じ伏せたんだろうな。


 実は今回の話し合い、ゼインが圧倒的に有利なんだ。


 そもそも最終決定権はゼインにあるわけだし、何よりゼインは人心掌握に非常に長けている。


 他の国の王もカリスマ性っていうのかな、人を惹きつける力は勿論あるんだけど。ゼインは特にそれが強い。


 他の王に比べてかなり若いのに五大国家の一つとしての地位を守り続けている。ゼインは周りの人間をやる気にさせるのが上手いんだよなぁ。


 五大国家の中では人口が少ないウィルドーズがしっかり機能しているのはスベンさん達上位貴族たちがちゃんと働くところにある。


「……情報屋。大変遺憾ではあるが、予定の変更はなしで公国へ向かえ」


 遺憾って……。決めたのゼインだろうに。







 というわけで村を早々に出た。


 ただ、俺が戦力外になる可能性があるので俺とキリカ、ライトのポジションを入れ替えた。


 キリカが先頭、俺がゼイン達の乗ってる馬車の一個前、ゼイン達の乗ってる真ん中の馬車にライトだ。


 襲われた時になんとしてでも守らないといけないのは、真ん中のゼイン達の馬車だ。引いているのは馬じゃなくてレイジュだから亜竜車と言ったほうが正しいのかもしれないけど。


「それじゃあ、ちょっと強行突破して今日中に着くのを目標で」

「今日中は無理ではないか? ここからなら距離的に二日ほどかかりそうだぞ」


 ゼインは地図を見ながら冷静に指摘してくる。


「普通の馬車ならそうだな。だが俺たちの馬車はちょっと特殊でね。本当は見せたくなかったんだけど、この際だからお披露目しようかな」


 三回手を叩くと、それぞれの馬車に待機していたメイド達が一斉に動き始めた。


 車輪や馬そのものにいくつかの道具を取り付けていく。


「あれはなんだ?」

「俺特製魔法具だ。車輪に伝わる振動を重力を軽くして減らし、常時回復系魔法を込めた魔法具で疲れ知らずの馬になる。他にも色々機能はあるが、それは見てからのお楽しみということで」


 レクスが目を輝かせて様々な魔法具を観察している。


 ゼインが感心したのか何度か深く頷きながら顎に手をやった。


「すごいな。あれ一式売ってもらえないか?」

「悪いがそいつは無理。あれメンテナンスが異常に難しい上に維持のための魔力が半端じゃないんだ。材料も結構希少なのとか取ってくるのが大変なのが多いし。値が張るわりに使いづらいよ」

「ふむ……それだけじゃないだろう?」


 まぁ、ぶっちゃけもう一個作るのが面倒ってのもあるけど。


「理論がオリジナルなんだ。分解されて調べられでもすれば、バレちゃうからね」


 俺の魔法の作り方はゲームの知識をそのまま応用している。


 この世界はゲームの世界そのままではなく、システム上同じなだけの別世界だ。


 俺の作り方はこの世界の人からすれば想像つかないやり方らしい。それは確認済みだし、簡単には理解できないらしいというのもわかってる。


 ただ、問題なのはもし理解できてしまった場合だ。


 俺がオリジナル魔法を作れるということから分かる通り、ゲーム……クリスタッロ・ディ・ネーヴェの世界では様々なルーンを組み合わせて魔法を放つのが一般的だ。


 詠唱や無詠唱はちょっとややこしくなってくるから一旦置いておいて、ゲームの仕様上存在しない魔法を作ることが可能であったりする。要はルーンの組み合わせなんだが、それにもルールがあってかなり難しい。


 だが一回わかってしまえば、あとはかなり勘でなんとかなる。


 個人的な意見としては、新しい魔法作るより既存の魔法を組み合わせて戦った方が消費魔力も少なく済むし、応用効くんだけどね。


 現実であるこちらの世界は、魔法はゲームよりもずっと重い存在だ。抜き身のナイフと変わらない。


 だから、使うには細心の注意を払わなければならない。


 そんなものを簡単にポンポン作れる俺の理論が広まったら、混乱が起きることは間違いない。


 魔法を作るのは俺以外のプレイヤーも結構やっている基本行為だ。確かソウルも二個ほどオリジナル持ってたと思う。


 自由度が半端じゃないゲームだったなと今になって実感する。


「オリジナルか……公表はしないのか? かなりの収入になるだろうが」

「しないよ。お金はこれ以上稼いでも無駄だしね」


 公表という行為は、いわゆる特許申請みたいなものだ。この世界にもそういう考え方はあるみたいだ。


「さ、行こうか!」


 乗り込むと、昨日よりもかなり早い速度で景色が過ぎていく。この調子なら今日の夜には着けそうだ。


 ただ、一つ心配なのはゼイン達だな。この馬車、重力魔法で軽くしてるんだけど、そのせいで浮遊感がすごい。


 そのためかなり酔いやすい。三人にそう言うの忘れてた。

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