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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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二百二十九日目 三つ子

「度々思うんだけど……俺のことなんだと思ってるわけ?」


 最初はスカートとか面倒だし、化粧とか正直嫌だったし。適当に楽な格好したら顔の造形諸々の関係で男と間違われるようになって。


 情報屋として働き始めたら方々から喧嘩売られて、毎日変装を余儀無くされ。


 気づいたらもう『白黒のブラン・ブラック』なんて呼ばれるようになってて。


 最早ゼクスに適当に名前くっつけてつけられたブラックってあだ名が本名と間違われるようになって。


 結果、何だかんだあって何故か今男になってしまっているわけだが。


 一応俺はこれでも元女子高校生だぞ? 面影一切ないかも知れないけど。


「いや……ブラックはブラックだろう」

「どういう意味だよ」


 答えになってないぞ。


「……ブラックで間違いないんだな?」

「そこに関しては多分間違いない」

「ではそれでいい」

「いいのかよ……」


 なんだろう、このなにもかも諦められてる感。


 呆れられてるって言ってもいいか。


「で、レクスは?」

「今は剣術の稽古に行かせている。後一時間ほどで帰ってくるだろう」

「へぇ。頑張ってんな」


 最近背が伸びてきてて抜かれそうで怖いと思ってたら、まさかの俺が二十センチ以上伸びるっていう。


 あれだけチビが嫌で仕方なかったのにいざ急に伸びてみると別に嬉しくもなんともないのが不思議だよな。


 理由も不明だし。


 そんなどうでもいいことを考えていると、背後で何かが落下した。


 ビクッとして振り返るとベビーベッドから玩具が落下している。


「あ、ああ……ちょっとビビった……」


 まだドキドキしてる。


【あれくらいで心音を乱すなんてまだまだね】


 今耐性落ちてんの! 下手に毒物でも浴びれば死にかねないんだから、警戒して損はないだろ。


 ともあれ落下した玩具を拾いに行く。チラッとベッドのなかを見ると、黄金色の目と目があった。


 なんかめっちゃ見られてるんですけど……


 ? あれ、そういえば初対面だこの子達?


「可愛いだろう?」


 ゼインが締まりのない顔で一人を抱き上げた。


 ……お前、その顔を他の貴族とか平民に見られんなよ……なんか凄い残念な表情だ。顔がいいから余計にそう思える。


「ああ、そうだな……」


 確かに可愛いけど。


 男の子二人、女の子一人。見たところ健康状態も良さそうだ。


 っていうか、普通に考えて子供生まれたばっかりのタイミングで俺ってここに入ってきて良かったのだろうか?


 だって俺平民だし。


 ……今更か。それによく考えたらレクスと婚約してるから身内だった。


「この子達は、ブラックが居なければ死んでいた。妻も、私もそうだったかもしれない。本当に……本当に感謝しても足りない」

「……別に。俺は数少ない友人を守っただけだ。それ以上もそれ以下もないし、礼や感謝は少しでいい」

「そこでタダではないのは僕ちょっとビックリです」


 何を言うか。無償労働は嫌だぞ流石に。


「俺たちは商売仲間でもあるからな。なにかしらの利益があるからこその関係でもある」

「ではもう少しくらい安く取り引きしてくれ」

「いやぁ、それはちょっと。俺だって価値のあるものに命かけたいしね」


 価格を下げるのは、価値を下げるのとは違う。価値が下がってしまって価格を下げるしかなくなることもあるにはあるけど。


 それでも適正価格ってもんがあって、その中で値段交渉して落とし処を見つけるのが手腕の魅せどころだ。


「こう言っちゃなんだけど、俺の情報を他の情報屋から買おうと思ったら下手したら倍近く掛かるぞ」

「わかっているからお前から買っている。全く……がめついな」

「一言多いぞ」


 俺は情報提供をする際、目が飛び出るほどの金額でやり取りすることが多々あるが、リスクや手間を考えた上でのギリギリの値段だったりする。


 金貨数十枚……日本円で数十万円の情報とかだと、馬車の破損や護衛を雇ったりすることを考えた場合本来ならもっとかかる。


 俺の場合、各国に拠点や手先が入り込んでいるからその辺りの移動の費用とかはなくなるけど、そのぶん給料を支払わなければならない。


 結果、実は結構実入りは少ない。入ってくるお金は多いが、出ていくのも結構早い。


 金を回すのも情報屋の仕事だと思ってるから別にいいんだけどさ。


 男の子の頬を軽くつつくと、指を握ってきた。


 柔らかいな……


「抱いてみるか?」

「いや止めとくよ。骨脆そうだし」


 ちょっと力入ってポキッとか洒落にならない。


「この子の名前は?」

「ああ、まだ決めていない」

「え? 名前決まってないとかあるの? この辺はそういう風習だっけ?」


 南にあるキーゼ共和国だと、成人の儀とやらを終えた人しか名前がないって聞くけど。


 確か特別な獲物を仕留めるとか、そういうワイルドなしきたりだった気がする。


 名前を得るまでは家名と生まれた順番で区別するんだとか。


 その国あまりにも辺境すぎて行ったことないから詳細はわかんないけど。


「いや、お前を待っていた」

「え?」

「息子二人と娘の名を一緒に決めてくれないか?」

「……人選ミスってない? 大丈夫?」


 俺も案出すの? 俺のネーミングセンス酷いよ?


 ……ピネほどじゃないけど。

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