二百十一日目 突撃
あけましておめでとうございます!
ちょっと短いです!
どこかからか爆発音が聞こえた。
「え……?」
驚いて顔をあげると、キリカさんが辺りを見回す。
「見て参ります。ここでお待ちください」
「あ、ボクも―――」
「いえ、ここでお待ちください」
「……はい」
立ち上がろうとしたら、キリカさんに止められた。何かあるのかもしれない。
そしてそれがなんなのかは教えてもらえそうにない。少なくとも今は。
「キリカさんは、なにが起こっているのかわかるんですか?」
「……わかりません」
嘘だ。
ボクは嘘を見抜くのが多分物凄く上手い。見たくなくても見えてしまう。
嘘をついたときの声の高さや目線で、なんとなくわかってしまう。多分、これはボクが昔から持っている力、というか、技術。
「そう、ですか」
もうこれ以上は追求しない。教えてもらえないことに時間を使う必要もないだろう。
キリカさんは一礼して部屋の外へと出ていった。ボクは今日の仕事を終わらせるべく地図に向かいあう。
「……こんなこと、やりたくないのにな……」
地図に書き込みをしながらそんなことを言ったところで、どの口が言っているんだ、って感じだけど。
すると、扉がまた開いた。
「フィル。来い」
「……はい」
兄上は部屋に入ってくるなり、そう言ってボクの腕を引っ張った。
ぐいぐい長い廊下を引っ張られる。
「あ、兄上……い、痛い、です」
「黙れ」
「………はい」
機嫌が悪いのか、ボクが反抗したから怒ったのか。どっちもなのかもしれないけど。
「先程の爆発音、聞こえたか」
「はい」
「あれは侵入者だ」
「侵入者、ですか」
「そうだ」
何をしに侵入してきたんだろう……
「狙いはお前だ」
「……え?」
それってどういうこと?
「ボク、ですか?」
「ああ。だから……」
手を翳された瞬間に、視界が大きく歪む。
「お前には、人質になってもらう」
横にいるはずなのに、声が、遠ざかっていく。
ーーーーー≪ソウルサイド≫
「っ、アイシクルランス!」
魔法を飛ばすと、パキン、と甲高い音をたてながら魔法が消される。
「なんて防御が固い……!」
「私にお任せを!」
僕らはブランさんが連れてこられた場所に辿り着いたものの、そこの門番にすら手間取っていた。
あまりにも強い。強すぎる。
ブランさんがいない僕たちでは、持ちこたえるので精一杯だ。
なんとかライトさんが魔法で対抗しているけど、いつその拮抗が崩れてしまうか……
「右です!」
どこからか声が聞こえて、その言葉通りに右に向かって魔法を打つと、炎魔法がそっちから飛んできて氷と炎が相殺し合い大量の白い霧が辺りに立ち込める。
「なにをやっているんだ、ソウル⁉」
「いや、僕も右にって言われたから打っただけで……!」
霧の中から出てきたのは、
「キリカ……」
「お静かにお願い致します。マスターの元へお連れいたします」
……はい?
「……まだ、信じてもらえるとでも?」
「はい。マスターのことなら、あなた方は必ず動くと信じています」
裏切った張本人が、いったいなにを。
当然というべきか、全員キリカに向かって戦闘体勢をとっている。
「マスターは現在、何も覚えてはおりません。あなた方のことも知らない」
「……知らない?」
「はい。それこそ、この組織の根幹にある能力です。他人の記憶を消去し、捏造する」
記憶を、消去?
「そんなの不可能です。数分なら可能ですが、年単位で消すことはブランさんでも」
「はい。ですが、それができるから危険なのです」
キリカは僕たちに頭を下げ、声を絞り出す。
「お願い致します。マスターを、助けてください」




