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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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百八十日目 未来技術

 俺が少しあいつらのことを思い出していたら、友里さんが突然手を叩いた。パンッと乾いた音が響く。


「えっ、なに?」

「ツキ。あんた暇でしょ?」

「暇って。まぁ、やることはないけど」

「ちょっと付き合いなさい」

「へ?」


 そのまま手を引っ張られるまま外に出て、車に乗った。友里さんがハンドルの横にあるパネルを操作すると勝手に起動して走行し始める。


「え、あ、すげぇ。自動運転だ。でも広大さん運転してなかったか?」

「あの車は借り物だったから地図が古くて自分で運転するしかなかったのよ。ちゃんと地図が更新されてる車なら基本全部自動運転なの」

「へぇ。やっぱ進歩してんだなぁ」


 自動運転技術って色々と課題があったってテレビで言ってたけど(あんまり覚えてない)ちゃんとそれをクリア出来るようになっていくんだなぁ。とか思う。


 俺の住んでいたところとは違う世界。それでも、未来の日本を覗き見ている気がしてちょっと面白い。


「で、聞いてなかったけど。どこ行くんだこれ」

「ショッピングタウン」

「ショッピングタウンって……まぁ、字面から想像できなくもないけど」

「そ。隣町なんだけど町丸々全部がお店で固められてるの。それも地上にね」


 へー。買い物行ったときにこの世界の店が並ぶ区域に行ったけど、それでも殆どの店が地下に広がっていた。


 なんでかってのは、防災対策とエネルギー資源面の理由があるらしい。


 防災対策の方は、上に作るより下の方が頑丈だったっていうだけのことなんで割愛するが、エネルギーの方は結構興味深かった。


 太陽光などの再生可能エネルギーでの電力発電が今現在では主流らしい。それだけで国の電力を賄えてるんだとか。


 なんでも効率のいい電力変換が可能になったとか。なんとか。


 途中から専門的すぎてなにいってるのかわからなかったけどな。やっぱり友里さん科学者なんだ、って今思い出した。


「そういや、この車ってどうやって動いてんの? ガソリン?」

「そんな古くさい資源使うわけないじゃない。効率悪いし」


 ……俺の感覚で言う石炭なのかな? 俺の時代じゃ石炭なんて主流じゃなくて、歴史の教科書で習う昔の資源って解釈だったし。


「じゃあ何で動いてるんだ?」

「磁力よ。長高圧の電気を磁石に浴びせて……」

「ああ、リニアモーターカーみたいな?」

「知ってるじゃない。それよ。それは大分昔にこの車の先駆けとして出来た乗り物だけどね」


 そんなに技術的には時間の差があるんだな、俺とこの世界の間には。


「あ、それとツキ。コネクタは持ってないわよね?」

「なにそれ?」

「じゃあ……それも買わなきゃね。お金はあるでしょ?」

「何百万かは。足りる?」

「十分すぎるくらいだから安心して」


 車が徐々に増えてきた。住宅街から徐々に栄えているところに近付いているらしい。家全部地下に埋まってるからわからんけどな!


「そういや、この車ってどこにあったんだ?」

「うちのエレベーターって降りるときと乗るときで入り口逆だったでしょ。家の方と車庫は方向逆なのよ」


 ああ、なるほど。やけに敷地がでかいなと思ってたんだよね。家の真横に車庫が埋まってたのか。


 ……別に車庫まで埋める必要なくね? どうでもいいけど。


 車が進行方向を変えて止まる。看板が立っていて、その隣には見飽きるほど見たエレベーターがあった。


「ここが目的地?」

「その前にあんたのコネクタ買いに来たの。入るよ」


 そもそもコネクタってなんぞや。なんも聞いてないんだけど。ってことで友里さんに聞いてみた。


「常識過ぎて説明忘れてた。コネクタは拡張世界にログインするために必要な機械なの。これから行く店は値札とか看板とか全部ARで表示されるから無いと買い物すら難しいのよ」

「AR……拡張現実か」


 仮想空間に現実空間を重ね合わせ、現実に存在しないものをあたかもそこに存在しているように見せる技術。


 感覚を全て仮想空間に飛ばすVRと違い、現実世界そのものにアクセスすることから『あまりにも周りの空間に現実味がありすぎてやけに浮いてしまう』ということから、一気に人気が出たVRとは違い悲しい結果だったとか。


 俺の時代の話なのでなんとも言えないが。それにこことは世界すら違うしな。


「いらっしゃいませ。修理ですか? ご購入ですか?」

「購入でお願いします」

「畏まりました。こちらの用紙に必要事項をご記入ください」


 短い黒髪のお姉さんが柔和な笑みを浮かべて紙を手渡してきた。友里さんがそれを受け取ってサラサラと項目を埋めていく。


「なぁ、友里さん。あれって」

「対応用アンドロイド。人間そっくりでしょ?」

「ああ。俺は五感が鋭いから人間と違うのは直ぐにわかったが……鈍かったら気づけない自信があるな」


 キュルキュルという微弱な機械特有の音と脈動しない心臓。人間とは明らかに違うと俺が見分けられるのは、俺が人間を越えてるからでしかない。


 俺の感覚が常人並みだったらなにも気づかず普通の人として対応していただろう。


「よし、書けた。チョーカーか、イヤリングか、メガネか、ブレスレットだったらどれがいい?」

「え? ……チョーカー?」

「わかった。はい、これお願いします」


 紙を機械のお姉さんに渡すと、十分ほどお待ちくださいと言われて番号札とカタログを渡された。


 友里さんがカタログをパラパラと捲る。


「やっぱ最新モデルは高いなぁ……可愛いけど」

「それがコネクタ?」

「そ。体の一部に装着するだけでいいの。私のはこれね」


 友里さんが自分のイヤリングを指で弾いた。パッと見機械には見えないけど、どうやらこれでちゃんと役目を果たしてくれるらしい。


 脳波に直接作用するんだろうか? いやでもそれならブレスレットだと脳から遠すぎるし、非効率か。


「ツキ。どれがいい?」

「んぇ? ああ、うん……」


 どうでもいいことに考えが向いてしまうのは俺の悪い癖だな。


 カタログを覗きこみ。


「よくわからん」

「でしょうね」


 結局最新のやつにした。7万した。結構値が張る。携帯としての役割もあるみたいだし、それぐらいするか。


 番号が呼ばれたので番号札を返してからカタログに丸をつけて機械のお姉さんに渡すと、直ぐにそれが出てきた。


「装着してみてください」


 意外とズッシリとしたものだった。白くて太めの輪に、赤い光の線が走っているシンプルなデザイン。


 ボタンを押すとパカッと開く。このボタンは何かあったときのための緊急着脱も兼ねているらしい。稀に視界に入ってくる情報に慣れなくてAR酔いする人がいるんだって。


 首に嵌めて、ボタンが首の後ろに来るよう調節する。


「キツくない?」

「ああ。思ったより苦しくもないし、ブカブカでもないな」


 サイズ計ってないのに、と思ったらこの店に入ってきた時点でスキャンされてたらしい。凄いな未来都市!

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