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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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百七十日目 スナイパー?

「そんなこと言われたら、なにも言えなくなるじゃない……バカ」

「聞いてきたのは友里さんじゃないか」

「そうだけどさ……」


 朝っぱらからする話でもなかったかな。気分が落ち込んでる日ほどなにもしたくなくなるだろうし。


「んじゃ俺はちょっと出掛けてくるかな。多分今日中に帰ってこれると思うけど、何があるかわからないからキリカとなるべく一緒に行動してくれ」

「どこに行くの?」

「どこだろうね?」


 説明しろと騒ぐ友里さんを置いてとりあえず地下から外に出た。朝日が目に染みる。


 鞄から充電済みの飛行型アニマルゴーレムを飛ばし、周囲を探りながら駅に向かって歩き始める。


「銀雪、いるか?」

「どうかしたか?」

「防護系の魔法掛けとけ。それから念のために隠蔽も。お前得意だろ?」

「わかった、が。何故だ?」

「念のためだよ」


 銀雪は隠蔽、隠密に特化している。


 恐ろしいことに、気を抜いていたら俺も見抜けない。集中すれば「あ、なんかいるかも。うん、その辺に?」みたいな曖昧な感じで把握することができるが。


 ライトが戦闘特化だからなんか新鮮だ。


 というか今までの使い魔って隠密系居なかったな。


 最初に契約した下級のデビルとかは強い魔物に一発KOされるレベルで弱かったし、なれてきた頃に呼びだしたインキュバスは性癖がちょっとあれだったし、その他のやつはあんまり契約が長続きしなかったし。


 まぁ、インキュバスの方はイケメンの情報提供という謎な依頼さえこなしていれば対価以上の働きをしてくれたしな。


 インキュバスとしては相当強い方だったもんあいつ。夢魔のくせに女に全く興味なくて術すらかけるのも渋るのはちょっとイラッとしたときもあったが。


 因みに、悪魔は階級ごとに強さやこっちが差し出す対価が違う。上にいけばいくほど必然的に対価の負担も増える。稀に対価ほぼ関係なしで従ってくれるやつとかもいるけど。


 一番下が【最下級】これは正直全然使い物にならない。ちょっと魔法の補助をしてくれるレベル。


 その上に【下級】【中級】【上級】とあってその中でもさらに【下位】【中位】【上位】に分けられている。


 その上に【最上級】ってのもあるらしいんだけど、正直それを召喚したりしたって話聞いたことないから伝説の存在として扱われている。


 だから【上級上位】が基本的に最上級と呼ばれる。


 ライトは【上級上位】インキュバスのジンは【中級上位】にあたる。銀雪は種族がわからんからなんとも言えないけど多分【上級中位】あたりかな? と思う。


 階級で強さを言うなら、


【最下級】はっきり言って雑魚

【下級下位】盾くらいにはなるかも

【下級中位】戦うときの補助にはいいかも

【下級上位】戦闘に参加してくる

【中級下位】新人プレーヤーよりは強い

【中級中位】魔法だけじゃなく接近戦も始める

【中級上位】固有能力を使ってくる

【上級下位】結構強い。ベテランでも負けることがある

【上級中位】なにかしら特殊能力を使ってくる

【上級上位】戦闘のプロ

【最上級】……そもそも存在するの?


 こんな感じだ。俺の主観だからなんとも言えんが、中級から下級との差が大分広がってると思う。


 下級上位から中級下位の間は相当大きな壁がある。戦えるか戦えないかはそこで決まると言っても過言ではない。


 で、結局こいつは何級なんだ? 聞けばいいか。


「銀雪って階級どこ? っていうか何種?」

「それも知らずに呼び出していたのか……」


 軽くショックを受けている様子です。ごめん、正直雇う気なかったから会話とかも結構聞き流していた。


 今も別に雇ってないけど。


 今の銀雪のポジションは仮契約でも本契約でもない。正確に言うと仮契約なんだけど本契約に近い感じだ。


 仮契約はそこら辺の人を捕まえて仕事を頼むみたいなもんだってこの前に(っていうか昨日?)説明したけど、銀雪は今アルバイト的な位置にいる。


 正社員ではない。非正規雇用で雇ってる。


 名前をつけろという要求は言外に「もう一度呼び出してくれ」と言う要求だ。名前というものが存在する意味は誰かに自分の存在を知らせる為にある。


 銀雪という名前の悪魔を召喚したという事実をこの世に残す行為だ。名前を要求されなかったら俺はもうこいつには会わないだろうから。


 名前を知ってる相手と話すのと、ただ通りすがりの人と話すのとじゃ記憶の優先順位が違うだろ? みたいなこと。


 ……長々と説明しといてなんだが、まぁ要するにこいつをアルバイトで雇ってます。って言いたいだけです。


「種族は………? おい、主人」

「え、そこで止めるの?」

「話を聞け。危険な臭いのするやつがいるぞ」

「ああ、うん。知ってる」

「そうなのか」

「これでも修羅場は潜ってきてる方だからね。感覚で何となくわかる」


 銀雪に一旦隠れるように命じて辺りの空気を探る。


 家が地下に埋もれているこの世界だが、その代わりに上には広々とした道路とかがある。街路樹とか結構綺麗に植わってる。


 風車とかソーラーパネルとかもあちこちにある。こんなに土地があったら何でもできるわな。


 この時間帯、朝の通勤ラッシュとかあっても十分おかしくないのに人っ子一人いない。車も飛行機も見当たらない。人間がわざとここに近付かないでいるかと思うくらいに。


「人払いを済ませてくれたことは感謝する。で? あんた何がしたいの?」

「……思ったより血の気のない相手で助かった、ね?」


 少し離れた街路樹の脇から顔を出したのは女の子だった。


 ………女の子? え、この子誰⁉


 外見年齢はうちのショタ王子と同じくらいかもっと下だぞ。


「お話するつもり、ある?」

「その前に……君、なに?」


 我ながら意味不明の質問だ。もし俺がこう聞かれたら「なんて答えたらいいかわかんねーよ」って相手に突っ込む質問だ。


「昨日あった、でしょ?」

「どこで」

「撃とうとしたら、撃ってきた。ね?」


 俺のセンサーが反応している。この子、昨日対峙した戦闘狂っぽいあのスナイパーに雰囲気が酷似している。


 殺気で誰なのか解る悲しい特技を持っている俺がここまで単純な気配比べを間違えるとも思えない。


「でも大人だったよね、君」

「大きく見せた、みたいな?」

「ああ、うん……」


 よくわからんがこの子がそう言うならそうなんだろう。正直、嘘の気配は感じない。


「君の種族は半獣人、それもラクーン……狸で間違いないか?」

「うん。そう、かも?」

「……理解した」


 これはちょっと厄介な展開になってきたかもしれないな……。


 俺のことをどこまで話すべきだろう? 鬼族って存在するのかな?


 獣人に下手に介入すると面倒なことが多いんだよなぁ……基本的に閉鎖的だし、鬼族を徹底的に嫌ってるし。


 鬼を嫌ってるのは数百年前だか数千年前だかどっちか忘れたが、鬼が獣人の領地を合法的に横取りしたからなんだけど。合法的に、ではあるけど結果として恨まれてるから俺としてはなんとも言えん。


 この世界ではどうなのかわかんないけど、とりあえず話し合いで事が解決するのならそっちの方がいい。こんな小さな子相手にするつもりもないし。

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